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偽乙女遊戯転生処罰記  作者: 織宮綾
最初のページ
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プロローグ

長編チャレンジです。気長に付き合ってくださると幸いです。


 乙女ゲーム転生なるものをご存知だろうか。

 死ぬ前までハマって遊んでいた者、少しだけやっていた者、名前だけしか聞いたことがない者、転生してくる者たちが各々の記憶を持ってその乙女ゲームの世界に転生してくる物語。もしもの願いは日に日に増し、そして形となり、その世界は構築され違わぬ姿で世界は生きている。


 だが、それが植え付けられた記憶だとしたら? 同じ世界だとしても、今を生きている者たちに記憶の中の姿を押し付ければ? 答えは簡単だ。――()()()()()が訪れる。



 ◆



 月明かりのない夜、路地裏で走っていた。息を切らせながら懸命に走り、時には物陰に身を潜め息を殺してやり過ごす。

 どうしてこんなことになったんだっけ。お母さんの薬代を稼ごうとして、割りの良いお仕事を紹介されて、蓋を開けてみれば、それが体を売る仕事で。

 じわりと涙が出てくる。泣いちゃいけない、どうにかして家まで帰らないと。ひっそり息を整えていると、足音がし始める。


「どこ行ったんだ〜? かくれんぼか? 早く出てこないと、お前の母親を売っちゃおうかな〜」

「家、把握してたよな。ちょっくら言って引き摺り出してくっか!」

「ぎゃははは! サイコーじゃねえの!」


 ひゅっと、息が止まる。お母さんは、病気で家から出られない。どうしよう、でもあんな人たちにいいようにされたくない。どうしよう、でもお母さんが、どうしよう、どうしよう、どうしよう!!


 たすけて、神様!!


 ぎゅっと強く目を瞑った瞬間、どさりと何かが落ちる音がした。それと同時に悲鳴が聞こえる。いくら夜目に慣れたとしても何が起こっているか分からない。


「おれの、おれの手がっ」

「なんだお前は! ぎゃあっ」


 どさどさと続けて音がして、耳を塞いで縮こまる。どうかこのまま私に気が付かないでどこかに行ってくれますようにと願う。

 そうして、耳を塞がなくても静かになって、恐る恐る目を開けて見れば少女が目の前に立っていた。


「……計測完了。侵食率5パーセント、対処不必要。エネルギーパターン、光属性一致。保護します。もう大丈夫ですよ。」


 信じられなくてぐっと体を硬くすれば、ぽんと頭に何かを乗せられる。怖い人ではないかもしれない、そう思って目を開ければ思っていたのとは違う人が屈んでこちらを見ていた。


「リン・ブラウンですね。私はネム、貴女の運命を守りに来たものです。」


 見たことのない灰色の髪に、灰色の目。顔立ちは普通で、すぐに忘れて風に溶けてしまいそうな雰囲気。それだと言うのに、目には強い意志が宿っていた。


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