表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/33

パート5: 舞闘の片鱗

「囲め!」


 リーダー格の男が叫ぶ。残った四人の男たちは、即座に散開し、俺を取り囲むようにじりじりと距離を詰めてきた。連携は取れているようだ。ただの山賊ではないのかもしれない。


 (…傭兵崩れか、あるいはどこかの私兵か。まあ、どっちでもいい)


 俺は周囲の状況を冷静に把握する。四方を囲まれているが、それぞれが武器を持っているため、互いが邪魔になって同時に攻撃は仕掛けにくい。個々を素早く潰せば、勝機はある。


 最初に動いたのは、右手の剣を持った男だった。


「死ねぇ!」


 叫びと共に、突きを繰り出してくる。これもまた、単純な動きだ。


 俺は左足で小さくステップを踏み、身体を右に流しながら、男の剣線を外側から手首で弾く。最小限の動きで攻撃を逸らし、同時に相手の体勢を崩す。

 がら空きになった顔面に、素早く右の掌底を打ち込む。


 バチン! という乾いた音。


「ぐっ…!」


 男は鼻血を噴き出し、よろめいた。


 その隙を逃さず、背後から別の男が斧を振りかぶるのが気配で分かった。

 俺はよろめいた男の身体を盾にするように引き寄せ、振り下ろされる斧を受け止めさせる。


「がはっ!?」

「なっ!? しまった!」


 味方を斬ってしまった男が動揺する。その一瞬の隙。

 俺は盾にした男を蹴り飛ばし、動揺している斧使いの懐へ一気に踏み込む。相手が反応するより早く、右のローキックを相手の軸足である左膝の内側に叩き込んだ。


 メキッ、と嫌な音が響く。


「ぎゃあああ!?」


 男は悲鳴を上げ、膝から崩れ落ちた。戦闘不能。


「こ、このガキ…!」


 残るはリーダー格の男と、もう一人。二人は明らかに動揺し、後退りしている。


 俺は静かに呼吸を整える。この身体は、やはりスタミナがない。短期決戦が必須だ。

 だが、動き自体は悪くない。むしろ、前世にはなかった軽やかさと柔軟性がある。これを活かせば、もっと効率的に戦えるはずだ。


 (カウンター主体で、相手の力を利用する。それがベストか…)


 チラリと、後方の金髪の少女を見る。まだ地面に座り込んだまま、信じられないものを見るような目でこちらを見ている。


 (…早く終わらせて、ここを離れないとな)


 俺は再び構えを取り直し、残る二人を睨みつけた。


「…まだやるか?」


 その問いは、挑発というより、事実確認に近かった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ