パート3: 闘技場のポスター
その羊皮紙には、力強い筆致で何かの絵と文字が描かれていた。文字は読めないが、描かれている絵は、剣を構えた屈強な戦士や、牙を剥く獰猛なモンスター、そして熱狂する観衆のようなものだった。中央には、大きな杯――トロフィーのようなものも描かれている。
「…なんだ、あれは?」
俺は思わず呟く。
「ああ、あれですか?」
俺の声に気づいたセレスが、ポスターを見上げて言った。
「レンブラントで近々開催される、闘技大会の告知ポスターですよ。『剣闘祭』と呼ばれていて、この都市の一大イベントなんです」
「闘技大会…剣闘祭…」
俺はその言葉を反芻する。闘技…つまり、戦って強さを競うということか。前世で俺が身を置いていた世界と、少し似ているかもしれない。
ちょうどその時、近くにいた冒険者たちが、ポスターを見ながら大きな声で話しているのが聞こえてきた。
「おい、見たかよ、今年の剣闘祭のポスター!」
「ああ、見たぜ! なんでも、優勝賞金が去年より更に跳ね上がったらしいじゃねえか!」
「マジかよ! こりゃあ、一攫千金のチャンスだな!」
「だが、その分、腕利きの連中も集まるだろうぜ。特に、去年のチャンピオン、『赤髪の狂戦士』も出場するって噂だ…」
「うへぇ、マジかよ…勝てる気がしねえ…」
(賞金…腕利きの連中…チャンピオン…)
俺の耳に、興味深い単語が飛び込んでくる。
金が稼げる。そして、強い奴らが集まる。
俺は、無意識のうちに拳を握りしめていた。
リルカ村での騎士団との戦いは、俺に自分の力がこの世界でも通用するという確信を与えた。だが、同時に、体力的な限界や、魔法という未知の力への対処など、課題も見えた。
もっと強くならなければならない。この世界で生き抜き、あるいは元の世界へ帰る方法を探すためにも。
そのためには、実戦経験を積むのが一番だ。
そして、強い相手と戦うこと。
この闘技大会とやらは、その絶好の機会ではないだろうか?
「セレス」
俺は隣に立つ魔法使いに声をかけた。
「その剣闘祭、誰でも参加できるのか?」
セレスは、俺の目の色が少し変わったことに気づいたのか、興味深そうな表情で答えた。
「ええ、基本的には。いくつかの部門があるはずですが、冒険者や腕に覚えのある者なら、予選を勝ち抜けば本戦に出場できると聞いています。実力さえあれば、身分は問われないはずですよ」
「…そうか」
俺は短く頷き、再びポスターを見据えた。
そこには、まだ見ぬ強敵たちと、勝利の栄光が描かれているように見えた。
決めた。
俺も、この剣闘祭に出てみる。
自分の力がどこまで通用するのか、この異世界の強者たち相手に試してやる。
そして、このフローネという名を、この都市に刻み込んでやる。




