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【TS転生異世界格闘バトル小説】転生美少女(元♂格闘家)はその拳で無双する ~魔法? スキル? 知るか! 鋼鉄の肉体とMMA技術で、理不尽も陰謀も全部ブッ飛ばす!~  作者: 霧崎薫
第3章:都市の洗礼と魔法の壁

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パート10: 疾風兎と模擬戦

 翌朝、俺たちはレンブラント近郊の森へと足を踏み入れた。

 依頼対象である疾風兎は、比較的街に近い森にも生息しているらしい。


「疾風兎は、その名の通り、非常に素早い動きで獲物を翻弄します。危険を感じると、目にも留まらぬ速さで茂みに隠れてしまうので、仕留めるのは意外と難しいんですよ」


 セレスが道々、疾風兎についての知識を教えてくれる。


「攻撃力自体は低いですが、鋭い爪や歯には注意が必要です。あと、集団で行動することもあります」


 (素早くてトリッキー、か。なるほどな)


 油断すれば、確かに苦戦しそうだ。


 リリアーナは、緊張した面持ちで周囲を見回している。手には、村で借りてきた小さなナイフを握りしめているが、それで戦力になるとは思えない。まあ、護身用と、いざという時の覚悟の表れだろう。


 しばらく森を進むと、セレスが「いました!」と小声で言った。

 彼女が指さす方向を見ると、少し開けた場所で、数匹の兎のような生き物が草を食んでいた。大きさは普通の兎より一回り大きく、灰色の毛皮をしている。あれが疾風兎か。


 俺はリリアーナとセレスに「ここで待っていろ」と目配せし、音を立てずに疾風兎たちに近づいていく。気配を殺し、足音を消す。格闘家としての基本的な技術だ。


 距離を詰め、攻撃範囲に入った瞬間、俺は地面を蹴った。

 狙いは、一番近くにいた一匹。


 俺の接近に気づいた疾風兎たちは、一斉に弾かれたように動き出した。速い! まさに疾風の名に違わぬ速度だ。ジグザグに、予測不能な動きで逃げ惑う。


 (…!)


 だが、俺の敏捷性も伊達ではない。ターゲットの一匹の動きを正確に捉え、その進行方向を予測して回り込む。

 逃げ道を塞がれた疾風兎は、一瞬動きを止めた。


 その隙を見逃さず、俺は素早く距離を詰め、手刀で首筋を打った。

 ピクッ、と痙攣した疾風兎は、そのまま地面に倒れて動かなくなった。気絶させただけだ。素材にするなら、生かしておいた方がいいだろう。


 残りの疾風兎たちは、仲間がやられたのを見て、一目散に茂みの奥へと消えていった。あっという間の出来事だった。


 俺は倒した疾風兎を回収し、リリアーナとセレスの元へ戻った。


「…終わったぞ」


「す、すごい…本当に速かったですのに…」


 リリアーナが感嘆の声を上げる。


「フローネ様の動きの方が、疾風兎よりも速かったように見えました…」


 セレスも、驚きを隠せない様子だ。


 (まあ、AGI35だからな。伊達じゃないということか)


 俺は自分のステータスに、少しだけ納得した。


「さて、依頼は達成だが…」


 俺はふと思いつき、リリアーナに向き直った。


「リリアーナ、お前、『自分の身は自分で守れるようになりたい』と言ったな?」


「は、はい!」


 リリアーナは背筋を伸ばして答える。


「なら、少し試してみるか? この兎で」


 俺は気絶している疾風兎を示す。


「こいつが目を覚ましたら、お前が相手をしてみろ。もちろん、俺もセレスも傍にいる。危険はない」


「えっ!? わ、私がですか!?」


 リリアーナは狼狽えた。


「で、でも、私にはフローネ様のような力は…」


「力じゃない。技術だ」


 俺は言い切った。


「お前にもできることがあるはずだ。まずは、やってみろ。話はそれからだ」


 俺はリリアーナに、簡単な護身術――相手の攻撃の受け流し方、急所への打撃(目潰しや金的など)、そして何より、恐怖に打ち勝つための心構えを、ごく簡単に教えた。


 やがて、疾風兎が意識を取り戻し、むくりと起き上がった。


 状況を理解したのか、再び逃げようとする。


「行け、リリアーナ!」


 俺が檄を飛ばす。


 リリアーナは、震える足で、それでも一歩前に出た。

 小さなナイフを構え、疾風兎と対峙する。


 これから始まるのは、貴族令嬢の、初めての「戦い」だった。


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