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【TS転生異世界格闘バトル小説】転生美少女(元♂格闘家)はその拳で無双する ~魔法? スキル? 知るか! 鋼鉄の肉体とMMA技術で、理不尽も陰謀も全部ブッ飛ばす!~  作者: 霧崎薫
第3章:都市の洗礼と魔法の壁

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パート5: 街道にて - 魔法の片鱗

 リルカ村を出て、街道を歩き始めて半日が過ぎた。


 森の中とは違い、道は整備されており、格段に歩きやすい。時折、荷馬車を引いた商人や、他の旅人らしき姿ともすれ違う。ようやく、文明世界に足を踏み入れた、という実感があった。


 俺は周囲を警戒しながらも、この世界の様子を観察していた。すれ違う人々の服装、持ち物、話している言葉の断片。全てが情報源だ。


 リリアーナは、最初は緊張していたようだが、次第に落ち着きを取り戻し、今は俺の少し後ろを黙ってついてきている。時折、俺の背中をじっと見つめている視線を感じるが、気づかないふりをした。


 しばらく歩いていると、前方に小さな争いのようなものが起きているのが見えた。

 数人の男たちが、一人の老人を取り囲んでいる。どうやら、老人の荷物を奪おうとしている、チンピラか追い剥ぎの類らしい。リルカ村を出て早々、これか。


 (…面倒だが、見過ごすわけにもいかんな)


 俺が介入しようと一歩踏み出した、その時だった。


「――やめなさい!」


 凛とした声と共に、追い剥ぎの一人が、まるで糸が切れた人形のように吹き飛ばされた。

 何事か、と俺が目を凝らすと、追い剥ぎと老人の間に、ローブをまとった若い女性が立っていた。手には、杖のようなものを持っている。


「ま、魔法使いか!?」


 残りの追い剥ぎたちが怯んだ声を上げる。


 ローブの女性は、杖を構え、短い呪文のようなものを唱えた。


「《ウィンド・カッター》!」


 すると、杖の先から不可視の刃のようなものが放たれ、別の追い剥ぎの足元を切り裂いた。追い剥ぎは悲鳴を上げて転倒する。


 (…あれが、魔法か…!)


 俺は初めて見る魔法の行使に、思わず足を止めて見入ってしまった。詠唱が必要で、杖のような触媒を使う。そして、明らかに物理法則を超えた現象を引き起こしている。風の刃…?


 残りの追い剥ぎたちは、完全に戦意を喪失し、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 ローブの女性は、ふぅ、と息をつくと、杖を下ろし、老人に優しく声をかけた。


「お爺さん、大丈夫でしたか?」

「お、おお…ありがとうよ、お嬢さん。助かったわい…」


 (…なるほどな。ああいう風に使うのか)


 魔法の威力は、確かに驚異的だ。遠距離から、不可視の攻撃を繰り出す。俺の格闘技とは、全く異なる体系の力だ。


 ローブの女性は、老人を介抱した後、ふとこちらに気づいたようだった。俺とリリアーナの姿を認めると、少し警戒したように杖を握り直した。


「あなたたちは…?」


 穏やかだが、芯のある声で尋ねてくる。


 俺は前に進み出た。


「フローネだ。旅の者だ。あんたの魔法、見事だったな」


 正直な感想を述べる。敵意はないことを示すためだ。


 俺の言葉に、ローブの女性は少し意外そうな顔をした。


「…ありがとうございます。私はセレスと申します。見ての通り、駆け出しの魔法使いです」


 セレスと名乗った女性は、警戒を少し解いたように微笑んだ。年は、俺(の見た目)より少し上、二十歳前後だろうか。落ち着いた雰囲気の、知的な美人だ。


「フローネ様、リリアーナ様も、この街道を?」

「ああ。レンブラントに向かっている」

「まあ、奇遇ですわね。私もレンブラントへ向かっているのです。もしよろしければ、途中までご一緒しませんか? この辺りも、物騒ですから」


 セレスは親しげに提案してきた。


 俺は少し考えた。魔法使いと同行する…メリットもデメリットもありそうだ。だが、情報源としては貴重かもしれない。それに、敵意は感じられない。


「…そうだな。世話になる」


 リリアーナも、俺の判断に黙って頷いた。

 こうして、俺たちの二人旅に、魔法使いセレスが加わることになった。


 魔法という、未知の力。それを使う者との出会い。

 レンブラントへの道は、ますます退屈しそうにない。俺は、新たな同行者の横顔を盗み見た。


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