パート8: 騎士団との衝突
「うおおおお!」
先陣を切って、三人の騎士が同時に襲いかかってきた。それぞれが剣を構え、連携を取りながら俺を包囲しようとする。森で戦った傭兵崩れとは、練度が違う。
(…速い! 重い!)
繰り出される剣撃は鋭く、重い。鎧を身に着けているため、動きは若干鈍いが、それを補うだけのパワーと技術がある。
俺はステップワークを駆使し、紙一重で剣線を躱し続ける。防御に徹し、相手の動きと癖を観察する。
「チィッ! 素早いガキだ!」
騎士の一人が舌打ちする。
ただ避けるだけではジリ貧だ。相手の攻撃のリズム、連携の隙間を見極め、カウンターを叩き込む必要がある。
一人の騎士が、大きく踏み込んで胴を薙いできた。その動きに合わせて、別の騎士が背後から突きを繰り出す。見事な連携だ。
(…ここだ!)
俺は薙ぎ払いを潜り抜けるように低く沈み込み、背後からの突きを、身体を捻って半身で受け流す。
そのまま、突きを繰り出した騎士の腕を掴み、軸足を払う。
「なっ!?」
騎士はバランスを崩して体勢を乱す。そこへ、すかさず掌底を顎に打ち込み、脳を揺らす。騎士はぐらりとよろめいた。
その隙に、もう一人の騎士が横から斬りかかってくる。
俺は体勢を崩した騎士の身体を盾にするように使い、剣撃を受け止める。
(…森での戦いの再現だな。芸がない)
だが、相手は騎士だ。それで怯むようなヤワではない。
盾にした騎士を突き飛ばし、斬りかかってきた騎士に肉薄する。相手は咄嗟に防御しようとするが、遅い。
俺は相手の剣を持つ腕を取り、肘関節へ下からアッパーのように肘を叩き込んだ。
「ぐああああっ!!」
騎士は悲鳴を上げ、剣を取り落とした。肘が、ありえない方向に曲がっている。完全に折れている。
三人目の騎士が、仲間の惨状を見て一瞬怯む。
俺はその隙を見逃さず、一気に距離を詰め、がら空きになったボディへ強烈な掌底を叩き込んだ。鎧の上からだが、内臓に響く一撃だ。
「ぐ…ふっ…!」
騎士は呻き声を上げ、その場に崩れ落ちた。
わずか数十秒の攻防。しかし、その間に三人の騎士を戦闘不能にした俺の戦いぶりに、残りの騎士たちも、そしてゲルハルト隊長も、驚愕の色を隠せないでいた。
「ば、馬鹿な…魔法も使わずに、素手で騎士を…!?」
ゲルハルトが信じられないものを見る目で呟く。
「…次」
俺は短く告げ、再び構えを取る。息は上がっている。体力は確実に削られている。
だが、闘志は衰えていない。
村人たちは、ただ呆然と俺の戦いを見守っている。恐怖と、そしてわずかな期待が入り混じったような目で。リリアーナも、唇を噛み締め、祈るように俺を見つめていた。
(…まだだ。まだ終われない)
俺は残りの騎士たちを睨みつけた。
この理不尽な要求を、力で捩じ伏せるまで。




