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次元層の追跡者

作者: レインロック

2・6に更新される前に書いたものです。独自考察をもとに書いています。

 ここはある星の都市にあるホテル。そのホテルの部屋にあるイスに監督は座っていた。監督は1枚の光円錐を手に持ち、頭を抱えてそれを困った顔で見つめていた。


「ケロケロ」


机の上にいる機械のカエルが鳴くと、監督は顔を上げてカエルを見た。


「すまない。どうやら君に心配をかけさせてしまったようだ」


「ケロ」


「フッ。自分はアシスタントだから心配するのは同然とでも言いたそうだな。Mr.フロッグくん、君には感謝しかない」


「ケロ」


カエルが鳴くと、監督は微笑んだ。そして、光円錐も持ち上げると、それを数秒ほど見つめてから机に置いた。


「Mr.フロッグくん。見たまえ」


監督が言うと、カエルは光円錐をのぞき込んだ。光円錐には、コックピット内の席で写真を見て微笑む黒髪の青年が映っていた。そして、監督は目を閉じて首を振り、目を開けると、少し困った顔でカエルに説明をした。


「Mr.フロッグくん、聞いてくれ。この光円錐の記憶を読み取ると、彼は写真に写っているパートナーの少年を探しているようだ。しかし、どうやらかなり精神的に疲労しているようで、笑顔と言葉に、それが表れている」


「ケロ」


カエルが監督を見て鳴くと、監督は微笑み、光円錐を持つと、困った笑顔でこう言った。


「フッ。非常に厄介なものを拾ってしまったな」


「ケロ、ケロケロ」


「そう、後悔する権利は誰にもないのだ。知ってしまった以上、私には彼を知る必要がある」


目を細めて監督はそう言うと、目を閉じた。




 それから、数日が過ぎると、監督はカフェに来ていた。監督が飲み物が入ったカップを微笑んで受け取ると、若い店員は恥ずかしそうに目をそらした。


 そして、テーブル席に着くと、カップをテーブルに置き、内側から携帯端末を取り出した。それを1度見てからテーブルに置くと、肩に乗っているカエルはテーブルに飛び降り、監督はイスに座った。


「では、Mr.フロッグくん、彼についての情報をまとめてみようではないか」


「ケロ」


監督が言うと、カエルは鳴いて返事をした。


「彼は2琥珀紀前に亡くなっており、いわゆる何でも屋を営んでいた。ある日、彼らは戦火に巻き込まれ、戦闘中にパートナーである少年が特殊な兵器の爆発によって生じた次元の裂け目に飲み込まれ、そのまま消息をたった」


そう言うと監督は少し顔をしかめて目を閉じた。


「ケロケロ」


「Mr.フロッグくん。心配は不要だ」


「ケロ」


「フッ。彼の、いや、彼らの人物像だが、黒髪の彼は、気が強く人情味に溢れており、パートナーの少年は明るく活発で、短気でもあった」


監督はそう言うと、携帯端末に映る青年をチラッと見た。


「少年は彼にとって弟のような存在であり、家族そのものであった」


そう言うと、監督は目を閉じた。


「ケロ」


「フッ。少し過去と、つまらない人間を思い出しただけだ。案ずるな」


鼻で笑い、目を開けてそう言うと、監督は続きを話した。


「だから彼は、パートナーを見つけるために銀河中を旅した。だが、その結果は悲惨な末路であった。彼の望みは叶うことはなく、訪れていた宇宙ステーションが反物質レギオンに襲撃され、死亡した」


そう言うと監督は手で顔を覆い、目を閉じた。


「人生というのは、実に悲劇だ。彼の努力は報われることなく生命が終わり、彼の存在も、人々からすっかり忘れさられた」


そして、目を開けると、携帯端末に映る青年を見ながらはなした。


「そして、ウェブ上に断片的な記録しか残っておらず、彼らの名前も、パートナーの少年は光円錐から、彼にいたっては、誰かが追悼の動画をあげていたから判明しただけだ」


「ケロケロケロケロ」


カエルが鳴くと、監督は手を下ろし、微笑みながらカエルの肩をさすった。


「フッ、悲観することはないか。Mr.フロッグくん、我々で彼の人生を再構築しようではないか」


「ケロ」


カエルが返事をして跳ねると、監督は目を閉じて鼻で笑った。




 ある日のこと、ホテルの一室にある机のイスに座り、監督はカエルに声をかけた。


「Mr.フロッグくん、私の考えを聞いてくれるかな?」


「ケロ」


カエルが返事をすると、監督は鼻で笑い、話を始めた。


「今回の話だが、彼が星々を渡り、最終的にパートナーを見つけ出す話にしようと思う」


「ケロケロ」


「フッ。冒頭で彼とパートナーの話をし、その後は彼がパートナーを探すため、人生をかけ、長い年月の末に彼を見つけ出す。そう考えてはいる」


「ケロ」


監督が言うと、カエルは鳴いた。すると、監督は困った顔をし、ため息をついてから答えた。


「ああ、長い年月については、少し迷っている」


「ケロ」


「年老いて再開をすると方が感動的だが、それでは彼が不憫だ。私としては、そこが問題だと思っている」


「ケロ」


カエルが跳ねて返事をすると、監督は鼻でため息をついた。


「難しい話だ。Mr.フロッグくん、君ならどうする?」


「ケロケロケロケロ」


カエルが鳴くと、監督は苦笑いをし、鼻で笑った。


「フッ。自分で考えろか。あたりまえだな、君はあくまでアシスタントなのだからな」


監督が言うと、カエルは監督を見て頷いた。


「まあいいか、この件に関して保留としよう。それより、Mr.フロッグくん、今回は人型メカにより戦闘シーンを入れたい」


「ケロ」


「彼らはパイロットだからな、そのシーンがあるのは当然のことだ。それに、私個人としてもメカ同士の戦闘を撮りたい」


「ケロ」


監督が微笑んで言うと、カエルは返事をした。


「ああ、こういったシーンを撮ることはそうそうないからな。どうしても撮りたい」


「ケロケロ」


カエルは鳴くと2回跳ね、監督は目を閉じて鼻で笑った。そして、目を開くと笑顔でこう言った。


「メカと言えば昔、ヒーロー番組のメカをマネて、あいつを泣かしたな。それで親に……」


そう言うと監督は目を広げ、片手で顔を押さえた。そして、1度、目を閉じてから、深呼吸をした。


「ケロケロケロケロケロ」


カエルが跳ねながら鳴くと、監督を手を動かし、手の甲で口を塞いだ。そして、呼吸を整えると、困った顔で目をそらし、声を出した。


「過去とは厄介なものだ。現在という肉体を縛る鎖であり、足枷でしかない」


そう言うと監督は息を大きく吸い、鼻でため息をついた。


「どうして…自分の過去は変えられないのだ」


目をそらしたまま監督はそう言い、カエルは無言で跳ね出した。


 そして、ある日の早朝前の深夜帯、監督はノートPCで筆記をしていた。すると、机の上にいるカエルが鳴き出した。


「ケーロ、ケロケロ、ケーロ、ケロケロ」


それを聞くと、監督は顔をしかめた。


「Mr.フロッグくん、メールは無視して構わない。本当に大事連絡であれば、後で催促が来るからな」


「ケロ」


カエルが鳴くと、監督はタイピングを始めた。すると、目を大きく広げ、そのままの状態でカエルを見た。


「Mr.フロッグくん!今すぐカンパニーに返事を出す!返事のついでに!」


そう言うと監督は立ち上がった。


「人型メカと!宇宙船の手配をさせよう!!」


監督は顔と両手を上げ、嬉しそうに大声を出した。


「ケロケロ」


そして、カエルは鳴いて返事をした。




 どこかのビルにある一室で、オーディションが開かれていた。監督はイスに座って、タブレットで切り取った台本の1ページを見ており、カエルはそれを見ていた。


 それから、オーディションが始まった。部屋の中央には、資料を両手で持った青年の男性がおり、目を泳がせながら息をのんだ。


「不合格」


監督が目を閉じてそう言うと、男性は少し目を丸くした。


「彼は追跡者であってナナシビトではない。演技も大袈裟で、役を理解していない。それと、これは舞台ではなく、映画である、そのことを理解していただきたい」


「はい…ありがとうございます……」


監督が真剣な表情で言うと、彼はそう言い、部屋から出ていった。


 それから別の役者が中央にある黒いテープの上に立つと、資料を見てから演技を始めた。


「お前はいつもそうだよな」


役者は腰に手を当て、少し平坦に呆れた声と顔で台詞を言うと、次の演技をした。


「はっ。これで終わるわけないだろ」


役者はかがみ込むと、少し目を細め、しかめた顔でそう言った。役者は次の演技をした。


「あんたはいつもそうだ。俺に諦めろ諦めろと言って邪魔ばかりする。俺は必ずあいつを見つけ出す。だから俺の邪魔をするな。俺を目の前から消えろ」


拳を握り、顔をしかめて台詞を言い終えると、役者は真剣な表情で監督を見た。監督は少し目を細め、手を口に当てた。それを見て役者は息をのんだ。そして、監督は彼を見るとこう言った。


「不合格」


それを聞くと役者は肩を少し上げた。


「演技が平坦で、最後の台詞の合間が短い。最後の台詞は、主人公であるチェイスが怒りを抑えながら婦人に怒るシーンだ。君の演技はそのまま怒りを露わにしているだけ、非常に浅い」


監督が言うと、役者は少しうつむきながら部屋から出ていった。それを見てから、監督はカエルに声をかけた。


「いつものことであるが…役選びは難航するものだな。Mr.フロッグくん」


「ケロ」


カエルが鳴いて返事をすると、監督は腕を組んでそっぽを向いた。


「ふん、ハードルは下げない。この程度のハードルを越えられない役者の方に問題がある。私としては、チェイスの役者には、彼を理解して再現できることを求める。これだけは外せない、絶対的な条件だ」


監督がムスッとしながら不満そう言うと、カエルは跳ねた。


 それからしばらくたった頃。部屋の扉が開くと、キリッとした表情の役者が入り、監督は少し目を広げた。そして、彼は中央にある黒いテープの上に立つと、演技を始めた。


「お前はいつもそうだよな」


彼は腕を組み、呆れた笑顔で少し嬉しそうに言うと、役者は次の演技をした。


「フッ、ハッ…!これで終わるわけないだろ」


かがみ込み拳を強く握ると、役者は鼻で笑い、強気な笑顔でそう言った。そして、役者は最後の演技をした。


「あんたはいつもそうだ。そうやって、俺に諦めろ諦めろと言って、邪魔ばかりする。俺は、必ずあいつを見つけ出す…!だから、俺の邪魔をするな」


役者は拳を握りしめ、うつむきながら言うと黙り、数秒たつと、こう言った。


「俺の目の前から消えろ」


役者は演技を終えると、顔を上げて監督を見た。監督はうつむいた状態で口角を上げており、堪えながら笑っていた。すると、監督は目を広げた笑顔で勢いよく立ち上がり、大声を出した。


「君はチェイスだ!!」


「おっ…!」


役者が驚くと、カエルは跳ね、監督は両手を広げた。


「君は演技は実にすばらしい!私の考えていた彼を越えている!まさに、チェイスそのものだ!」


「ありがとうございます」


役者が少し困った顔で礼を言うと、監督は背を向け、目を閉じて片手で額を抑えた。


「台詞のタイミングもよく台詞と台詞の合間に溜めがある」


そして、振り返ると、監督は手を裏返して彼を指さした。


「そして演技中の表情!動き!彼の心情と性格を理解している、何よりの証だ!」


「ケロ」


監督が笑顔で目を広げ、大声で少し早口に言うと、カエルは鳴いて跳ねた。そのため、役者は目を左右に動かした。


「あの、その…恐縮ですが…それは合格と受け取って、構いませんか…?」


困りきった顔で役者が尋ねると、監督は不満そうに答えた。


「何を言う。君はチェイスだ!」


「あ、はい、わかりました。監督、ありがとうございます」


役者は困った顔のままそう言うと、部屋から出ていった。そして、監督は一回転をし、テーブルに片手を置くと、かがんでカエルに声をかけた。


「Mr.フロッグくん。フッ。今回のオーディションは最高だったな。君はどうかな?」


「ケロケロケロケロ」


「そうか。君も同じか!」


カエルが鳴くと、監督は笑顔でそう言った。そして、イスに座ると、腕を組んで目を閉じ、口角を上げてこう言った。


「フッ。彼を超えるチェイスは存在しないだろうな」


「ケロ」


カエルが鳴くと、監督は満面の笑みでタブレット内の台本を見た。




  撮影日、ある宇宙ステーションの入港口で監督は周囲を見ており、周囲には大きなコンテナや宇宙船があった。そうしていると、青年が監督に近づき、不安そうに声をかけた。


「あの、レック監督。この度は指名をしていただき、ありがとうございます」


「こちらこそ、引き受けてもらい、感謝する」


青年が言うと、監督は微笑んでそう言うとお辞儀をし、背中に両手を回した。それを見ると青年は目を左右に動かし、少し困った顔で申し訳なさそうにこう言った。


「あの、レック監督。僕のような、経験が少ない若手なんかが…あなたのような、有名監督の映画に出てもいいんでしょうか……」


それを聞くと監督は鼻で笑い、微笑んで話した。


「フッ。ライブくん、私は君を指名したのだ。そのことを忘れないでほしい。君の演技は、ロビンのMV内で学生役の演技を拝見したが、実によかった」


「ありがとうございます」


青年が笑顔で嬉しそうに言うと、監督は微笑んで続きを話した。


「もちろん、改善点はあるが、それも伸びしろだ。君のような将来性のある役者を、私としては、先に押さえておきたくてね」


「あ、ありがとうございます……」


目を丸くした困り顔で青年が言うと、監督は鼻で笑い、微笑んでこう言った。


「フッ。出番は少ないが、重要な役だ。ライブくん、君には期待をしている。存分に力を発揮するといい。だが、力入れすぎるな、下手な演技は見たくない。それに、テイクの回数が増える」


「は、はい」


「それでは、ライブくん。チェイス…チェイス役のグアルビルくんと仲良くしたまえ。彼は非常に優秀な役者だ。君のためにもなるだろう」


「はい」


監督が微笑んで言うと、青年は息をのんでから頷いた。




 そして、撮影が始まった。チェイスはコンテナを浮いている台車に置くと、深呼吸をして肩を上げた。そして、チェイスは周囲を見渡すと、床に座っているホープを見つけた。そのため、チェイスは呆れた顔をし、ホープに近づくとしゃがみ込んだ。




 イスに座っている監督はモニターの画面から顔を上げた。


「カット!」


監督が言うと、役者は動きを止めた。そして、数秒すると、監督はカチンコの音を鳴らした。


「よくやった。次のシーンに移る!」


監督が言うと、自動型カメラユニットと自動型録音ユニットが移動した。そして、カメラユニットの上のカエルはユニットに付いているカチンコを下してカメラのレンズを塞ぐと、監督は声を出した。


「シーン2。アクション」


監督が腕を上げ、下ろして言うと、カエルは前足でカチンコを鳴らし、それを引き上げて少少し奥に引っ張った。




 かがみ込んでいるチェイスはホープを呆れた顔で見た。


「まったく、お前は何やってんだ」


チェイスは呆れた声でそう言った。




 監督は画面から顔を上げた。


「カット!」


監督が言うと、数秒後にカチンコの音を鳴らした。


「次のシーン!」


監督が言うと、カメラと録音のユニットは移動した。そして、カエルがカチンコでレンズを塞ぐ。


「シーン3。アクション」


監督が言うと、カエルはカチンコを鳴らし、それを引き上げて奥に引っ張った。




 ホープは目を開いた。




 監督は画面から顔を上げた。


「カット!やり直し!」


監督が言うと、役者と青年は監督を見た。そして、青年は返事をした。


「あ、はい……」


「ライブくん。もっと眠そうにしてもらいたい。先程の演技では目を開くのが早い、それでは疲れているようには見えない」


「はい……」


監督の言葉に青年は頷いて答えた。


 それから、しばらくすると、監督は声を出した。


「シーン3。テイク10、アクション」


監督が言うと、カエルはカチンコを鳴らし、それれを引き上げて引っ張った。




 ホープは目を薄っすら開けると、ゆっくりと顔を上げてチェイスを見た。


「だって…疲れたんだもん……」


ホープは小さい声でそう言った。




 監督は画面から顔を上げた。


「カット!」


監督は言うと、数秒後にカチンコを鳴らし、青年を見た。


「ライブくん!よくやった!」


監督が微笑んで言うと、青年は監督を見て疲れた顔で返事をした。


「ありがとうございます」


「本当に疲れてないか?」


役者が困った顔で青年に言うと、青年は疲れた顔で返事をした。


「はい…ありがとうございます」


「おーい」


「あ、大丈夫です」


「次のシーン!」


青年が返事をすると、監督は微笑んで軽く手を上げてそう言った。




 撮影が始まり、とある星の専用の駐車スペースにて、そこで止まっている宇宙船の扉が開くと、大きなコンテナを持った赤色の汎用人型メカが現れた。


「チェイスー!こっちだこっちー!」


ホープの明るい声がすると、赤色のメカはしゃがみ込んでホープを見た。


『うるさいな…!危ないから離れてろ!』


チェイスが不満そう言うと、ホープは腕を振った。


「なんでだよ!」


『危ないからだ!』


チェイスの怒鳴り声を聞くと、ホープは腰に手を当ててそっぽを向いた。




 監督は画面から顔を上げた。


「カット!」


監督はそう言うと、数秒たってからカチンコを鳴らした。


「シーン終了!2人とも下りてくるんだ」


トランシーバーを持って監督が言うと、カエルが跳ねながら監督に近づいた。そのため、監督はイスから立ち上がり、カエルの前で跪くと、手を向けた。そこにカエルが乗ると監督は立ち上がり、イスに座った。


「Mr.フロッグくん。これで休憩だ。君はどうしたい?」


「ケロ」


「そうか、拭いてほしいのか」


微笑んで監督が言うと、青年が監督に近づき、少し目を丸くした状態で声をかけた。


「あの、レック監督」


「ライブくん。何か用かね?」


監督が顔を上げて微笑んで尋ねると、少し鼻息を荒くして青年は答えた。


「あの人型メカって、2…2琥珀紀前の物ですよね…!?」


監督はカエルを肩に移動させると、腕を組み、少しにやけた顔で返事をした。


「惜しいな、デザインはそうであるが、中身は違う。博識学会に指示を出し、彼が使用していた機体を割り出させ、デザインが同じものを作らせた」


「は、博識学会?博識学会って、あのレイシオ博士がいる…!あの博識学会ですか!?どうやって!?」


青年が声を弾ませて興奮気味に言うと、監督は少し顔をしかめた。そして、すぐに鼻で笑い、微笑んで答えた。


「フッ。それが誰かは知らないが、博識学会という名の組織は1つしかない。私にはコネクションがあってね。そのコネクションを、最大限に使ったまでだ」


「レック監督って…そんなコネがあるんですね」


目を丸くして青年はそう言った。


「ああ、少々、副業でね」


監督は微笑んでそう言うと、目を強く閉じた。


「ケロ」


「心配は不要だ」


カエルが鳴くと、監督は小声でそう言った。




 それから、撮影が始まった。電灯にしがみついているチェイスは手を伸ばした。


「ホープ!!」


目を大きく広げてホープの名前を叫ぶと、チェイスは電灯から手を離し、飛び込むと、必死な顔で手を伸ばした。




 そして、監督は画面から顔を上げると声を出した。


「カット!」


監督は言うと、数秒たってからカチンコを鳴らした。


「グアルビルくん、よくやった!」


「ありがとうございます」


撮影スタジオ内で監督が誉めると、マットの上から役者は降りると礼を言った。そして、監督は立ち上がり青年に近づいた。


「ライブくん、君の出番は今日の撮影が終わると、しばらくはない」


「はい」


青年が返事をすると、監督は腕を組み、目を閉じた。そして、目を開けると、困った顔で話した。


「最終シーンは少々未定でね。だが、君の出番があることは確定している」


「はい、ありがとうございます」


青年が微笑んで言うと、監督も微笑んだ。


「それでは、次の撮影でお会いしよう」


監督はそう言うとお辞儀をし、青年から離れていった。


「ケロ」


肩のカエルが鳴くと、監督は困った顔をし、片手で顔を覆い、目を閉じた。


「わかっている。だが、Mr.フロッグくん。これは難題なのだ。どうすれば両立できるか、それは大きな問題だ」


「ケロ」


カエルが鳴くと、監督は鼻でため息をついた。


「Mr.フロッグくん。急かさないでいただきたい」


「ケロ」


もう1度カエルが鳴くと、監督は困った顔で首を振った。




 それから、撮影が進み、あるシーンの撮影になった。ある建物の廊下で、長髪の婦人と箱を持ったチェイスが歩きながら話をしていた。


「チェイスさん。あなたは旅をなさっているのですね」


「ああ、だが、ナナシビトってわけじゃない。俺は俺の、運命ってのを歩んでいるのさ」


にやけた顔でチェイスが言うと、婦人はクスッと笑った。


「あら、面白いことを言いますね」


「ああ、かもな」


強気な笑顔でチェイスが言うと、彼女は彼を見て質問した。


「チェイスさん。この後、どうなされますか?」


「荷物を届けてから、別の仕事と、個人的なこと」


「個人的なこと?」


婦人が不思議そうに聞くと、チェイスは真剣な表情で答えた。


「オレは何年と、行方不明の相棒を探している。そいつを見つけるのが、オレの旅の目的だ」


「そうでしたか」


婦人が言うと、チェイスはうつむき、その場で立ち止まり、婦人は振り向いて彼を見た。


 チェイスは息をのむと、鼻で息を吸い、顔を上げた。そして、少し不安にこう言った。


「あんた、金持ちなんだろ。金は出す。オレの頼みを聞いてくれないか」


 それを聞くと婦人は微笑み、笑顔でチェイスを見つめた。


「わかりました」


婦人は笑顔のままそう言った。


 それを聞くと、チェイスは目を丸くし、彼女に聞き返した。


「本当か…?」


「はい、私はそのような嘘をつきませんから」


 彼女は笑顔でそう言った。


 チェイスは頭を下げると、顔を上げてお礼を言った。


「ありがとうございます…!」


 それを聞くと彼女はクスクスと笑った。




 宇宙船の操縦室にて、チェイスはイスに座って寝ており、携帯端末から音が鳴り、目を広げて驚いて起きあがった。


 そして、肘掛の横のケースに入っている携帯端末を慌てながら取り出した。


 チェイスは携帯端末を触ると、1度手から落とし、目を広げて驚きながらすぐに掴み、画面を見た。


 画面には婦人からの報告が書いてあった。


【今月もホープさんの情報はありません】


 それを見ると、チェイスは目を細めた。


 チェイスはイスにもたれかかると、片手で顔を覆い、深くため息をついた。




 ある星の荒れ地にて、赤色の人型メカが輸送船をワイヤーで引っ張っていた。


 赤色の人型メカのコックピット、チェイスはそこで写真を見ていた。


 チェイスは微笑みながら写真を見つめている。


 写真には肩を組んでポーズをとっているチェイスとホープが笑顔で映っていた。


 そして、チェイスは少し目を細めた。


「なぁ、ホープ。お前はどこにいるんだよ。いや、どこだっていいか、必ず、見つけるんだからな」


優しく疲れた声でそう言うと、チェイスは目を閉じた。


 チェイスは写真を胸に当てると、ゆっくりと深い呼吸をした。




 ある宇宙ステーション内の人がまばらにいるカフェスペース。


 そこで婦人はカップを持ち、コーヒーを飲んだ。


 すると、そこにチェイスが現れ、イスを引くとそこに座った。


「それで?いったい何の用だよ?」


チェイスが言う。


 婦人は真剣な表情をし、チェイスを見る。


 チェイスはそれを見て不思議そうに困った顔をした。


「はあ?なんだよ?」


チェイスは言うと、息をのんだ。


 そして、婦人は真剣な顔でこう言った。


「チェイスさん、もう、ホープさんのことは諦めませんか?」


 それを聞くとチェイスは歯を食いしばり、うつむいたまま立ち上がった。


「お待ちください」


それを聞くと、チェイスは顔を上げる。


「なんだよ」


 婦人はチェイスを見ると、困った顔をした。


「もう、何年とたちましたが、ホープさんの行方は一向にわかりません」


「そうだな」


チェイスが平坦な声で言った。


 そのため、婦人は息をのんだ。


「もう、諦めませんか。もう、何度言ったかわかりませんが、ホープさんを諦めませんか?彼が見つかることは無いと思います……」


婦人は悲しそうにそう言った。


 それを聞くと、チェイスは歯を食いしばり、数秒震えると、両手でテーブルを叩いた。


「グダグダと、うるさい…!」


そう言うとチェイスは顔を上げた。


「あんたは、いつもそうだ。俺に諦めろ諦めろと、そう言って邪魔ばかりする。俺は、俺はあいつを必ず見つけ出す…!だから、俺の邪魔をするな」


チェイスは婦人をにらみながらそう言った。


 婦人はうつむき、チェイスから目をそらした。


 チェイスは婦人をにらみつけ、数秒すると、こう言った。


「俺の目の前から消えろ」


そう言うとチェイスはその場から離れた。


 チェイスが少し歩くと、婦人は彼を呼び止めた。


「待ってください!」


それを聞いてチェイスは驚いた。


 そして、チェイスは振り向いて婦人を見た。


 婦人は立ち上がると、チェイスの方に歩いた。


 そして、婦人は悲しそうに彼を見つめた。


「少し、急ぎの仕事があります。いつものように、頼まれてくれませんか……」


婦人は目をそらしながらそう言った。


 それを見て、チェイスは頭をかいた。


「わかった。やってやるよ」


困った顔でチェイスは言うと、鼻でため息をついた。




 そして、監督は画面から顔を上げると、声を出した。


「カット!」


監督は言うと、数秒後にカチンコを鳴らした。そして、役者の2人に近づいた。


「2人とも、実にすばらしい演技だった」


監督は微笑んで言うと、お辞儀をした。


「ありがとうございます」


役者が笑顔で言うと、監督はこう言った。


「今日の撮影はここで終了だ」


「わかりました」


女性の役者が返事をすると、監督は目を閉じて鼻で笑った。


「フッ。それでは明日の撮影に備えて、十分に休息をとってくれ」


監督はそう言うと、2人に背を向けて歩きだした。そして、カメラの上にいるカエルに近づき、かがみ込んでカエルを見た。


「Mr.フロッグくん。今日の撮影は終了だ」


監督が微笑んで言うと、カエルは鳴いて返事をした。


「ケロ、ケロケロ」


それを聞くと監督は鼻で笑った。


「フッ。問題ない、フィナーレは決まっている。それが、理想的かどうかは、わからないがな」


「ケロ」


カエルが鳴くと、監督は目を閉じて鼻で笑った。




 赤色の人型メカが、壊滅した宇宙ステーションを背景に反物質レギオンと戦闘している。


 赤色の人型メカは腕から金属の矢を放ち、軍勢の1体に突き刺さり、その1体は活動を停止した。


 すると、光が見え、チェイスはその光を見つめた。その光は巨大化していき、宇宙ステーションの残骸を飲み込んだが、さらに巨大化していった。


 そして、光が消えると、その一辺が灰色になるのをチェイスは目を広げて見つめた。すると、赤色の人型メカはその一辺に吸い寄せられ、周囲で戦闘していた他のメカや反物質レギオンも同じ様に吸い寄せられていった。


 チェイスは驚きながら左右の画面を見ると、口角を上げ、鼻で笑った。


「待ってろよ…!ホープ!!今迎えに行くからなっ!!」


強気な笑顔でチェイスは嬉しそうに声を出すと、赤色の人型メカは灰色の空間を目指して高速で進んでいった。


 そして、その中に入ると、地面が見え、赤色の人型メカは地面に倒れ込み、チェイスは目を閉じて顔をしかめた。そこから何秒とたつと、声が聞こえてきた。


「チェイス!!」


手を振りながら明るい声を誰かが発すると、チェイスは目を広げて驚き、顔を近づけて画面を見た。そして、画面を数秒見つめると、チェイスは目を広げたまま口角を上げ、目を閉じると、体を少し震えさせた。


 すると、チェイスの頬から水滴が流れ落ちた。




 映画館にて、監督は通路から出てくる泣いている観客を見た。それを見ると鼻で笑い、映画館から出ていった。


 そして、映画館の外に出ると、監督は空を見つめた。そして、カエルが1度鳴くと、目を閉じて鼻で笑うと、その場から離れていった。

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