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2 時は遡り

時は遡り令和12(2030)年。皇室の安定的な維持の為、国会である法案が可決された。皇室典範特例改正法案だ。これにより旧宮家の男性を皇室に養子として迎え入れることとなった。三笠宮家と高円宮家に1人ずつ計2人だ。1人は学習院初等科から高等科まで通い、有名私大を卒業。国内有数の製鉄会社で働いた経験を持つ。もう1人も同じように初等科から高等科までを学習院ですごし、同じく有名私大に進学。その後国際的にも名をとどろかせる国内メーカーに勤務した経験を持つ。

2人は兄弟だが、社交的で大勢の人と関わるのが好きな兄と理系で研究家気質の弟と性格は全く違った。

事が動いたのは令和14(2032)年だ。次男と陽子内親王殿下の婚約が決まったのだ。1年後2人は結婚。国内外から盛大に祝われるロイヤルウエディングとなった。

しかし、このことをよく思っていない人物がいた。秋篠宮皇嗣妃月子その人である。

まるで、今後の日本を背負うのは愛子様だとばかりに沸き立つ国民、政治家、メディア、果ては宮内庁職員に至るまで。全てが気に食わなかった。

「将来の天皇は直仁だというのに」

悔しさのあまりギリっと歯を食いしばる。

というのも、ここ数年の悠仁の国内での評判はあまりよろしくないものばかりだったのだ。

現在イギリスに留学中の直仁は留学中にもかかわらず遊び呆けていることが度々メディアで報じられていた。そのせいで、国内では留学は無駄なのではないか。公務に専念すべきではといった声が高まっていたのだ。

陽子が結婚後も皇室に残ることが正式に決まり国中がお祝いムードのおかげか最近は直仁への批判は下火になりつつある。それもこれも陽子に国内外の関心が高まり直仁への関心が薄まっているからだ。

このままではいけない。月子は腹心の宮内庁職員を呼びつけた。

「直仁の結婚は万全の体制で望まねばなりません。そのためには相手選びが肝心。やる事は分かりますね?」

「はい、家柄の良い娘を選んで殿下とのお見合いを」

「生ぬるい!」

「ははぁ!」

紀子はピシャリと職員の発言を跳ね除けた。

「娘たちを集めて育て競わせるのです。温故知新。日本にも海外にも女の園はあったではですか。それを現代に蘇らせるのです」

「しかし、現在側室の制度は廃止されておりますが…」

「1番強く美しい娘を正室に。後は子を産む為の道具にでもすればいい。情報操作なんてあなた達の十八番でしょう?」

月子はニヤリと笑った。

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