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幸福の花は静かに笑う  作者: 武尾 さぬき
第2章 利害関係者(ステークホルダー)
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◆◆第6話 十色の力(後)-1

 記憶はここで途切れていた。




 今、包帯を巻かれた姿でいるということは彼らから解放されたのだろう。散々な目にあったがどうやら死なずに済んだらしい。




 見知らぬ部屋の中だった。ただ、窓から見える景色からここが街の大通りに面したどこかとだけはわかった。外の路面には水たまりができている。そういえば、あの日は雨が降っていたな。




 両手が自由に動かせるのがとても嬉しかった。どうやら暴行を受けた後、気を失ってどこかに閉じ込められたわけでもないらしい。誰かに助けられて治療を受けられたようだ。





 とりあえずここを出て誰かと話をしたい。すると、部屋にノックの音が響き、返事をする前に扉が開いた。


 そこには見知らぬ白衣をまとった女性が立っていた。歳は私より上に見える。20代の後半くらいか……。長い金髪をバンダナで上げていた。眠そうというか、気だるそうにした目つきが印象的な顔をしていた。




「あー……、目ぇ覚めたんですね。よかったよかった」




 彼女は私に近づいて顔を覗き込んできた。服の上からでも主張している大きな胸が当たりそうだった。後ずさった私の顔の正面に彼女は掌を出して、まるでさよならをするように手を振って見せた。




「意識もちゃんとしてますね。けど、まだ傷ちゃんと治ってないんであんまり動かないでくださいね?」




「あっ……その、ここはどこでしょうか? あなたは一体?」




「あー……私、リンカっていいまーす。ここはブイレヴ・ピラー本部の医務室でーす」




 独特の話し方が気になったが、それよりも「ブレイヴ・ピラー」の名前に意識がいった。その医務室にいるということは、気を失った後カレンさんに助けられたのか……。




 残念ながらまったく記憶にない。




「私はギルド専属の医者みたいなもんです。治療をしたり回復魔法とか使ってます」




 RPGの僧侶みたいな人だろうか。そういえば回復魔法の話はあまり聞いたことがない。傷を治したり、まさか蘇生ができたりするのだろうか……。


 私はひょっとして自分が一度死んで蘇生されたのではないか、とまで考えてしまった。




 さすがにそれはないか。




「えーっと、スガワラさん? 変わった名前ね……。運ばれてきたときには気を失ってまして体中傷だらけだったので、私が治療と回復しときましたよ?」




「そうだったんですか……。ありがとうございます。おかげで助かりました」




「気にしないでいいですよ? 血をちょっともらいましたし――」




 なにを言ってるのか。今「血」と聞こえたような気がする。私の聞き違いだろうか。




「ちっ…血ですか?」




「はい。私、人の血が大好物なんです。この職選んだのも有名剣士ギルドなら怪我人いっぱい来るでしょ? 怪我人の血をもらえるんですよ」




 この人は吸血鬼かなにかか。私の血を飲んだのか? 急に不気味な人に見えてきた。そして口の中が酸っぱくなるような感じがする。




「血って体の状態がはっきり出るんですよ? 味見したらその人の健康状態は大体わかっちゃうんですよね。スガワラさんの血はとてもおいしかったですよ」




 血がおいしい、と言われてなんと返したらいいのか反応に困る。おもわず苦笑いをしてしまった。




「身体が健康だと自然治癒力も高いんで回復魔法もよく効きました。まだちょっと痛むと思うけどすぐに治りますよ」




 健康状態と回復魔法の繋がりがよくわからない。疑問をそのまま伝えると簡単に説明してくれた。




「回復魔法ってその人のもってる自然治癒力を増幅させるものなんです。傷の治りとかは早くなるけど、とれちゃった腕をくっつけたりはできませんよ?」




 なるほど、私が思っているゲーム世界の魔法ほど都合のいいものではないようだ。




「まだ治りきってはいないと思うんで安静にしててくださいね? 私はカレンたちに目ぇ覚ましたこと伝えてきますから」




 そう言って彼女は部屋を出ていった。やはりカレンさんに助けられたようだ。




 どこまで事情を知っているのだろうか。




 ユージンたちはどうなったのだろうか……。




 そして、ブリジットのことは――。




 記憶がないところを早く埋めたかった。私は部屋のベッドに腰かけてやってくるであろうカレンさんを待った。

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