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幸福の花は静かに笑う  作者: 武尾 さぬき
第2章 利害関係者(ステークホルダー)
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第5話 悪意の火種(前)-7

 ブレイヴ・ピラーが請け負う仕事の中で、魔鉱石運搬の護衛は少なくない。魔鉱石は街のエネルギーを担う大事なものだ。そのため運搬中に盗賊に襲われるときもある。横流しするとそれなりに高額になるという噂だ。




 また、一部のまものは魔鉱石に引き付けられると聞いたこともあった。街の中にまでまものがやってくることはほとんどないが、輸送中に襲われた話は何度か耳にしている。





 そして今日――、私たちのギルドが護衛を付けていた魔鉱石の輸送隊が襲撃されたと報告が入った。早朝、ギルドの本部へ出向いた私にサージェから知らせが入ったのだ。




「カレン様、おはようございます。早速ですが、お耳に入れておきたいことがありまして……」




「あぁ、おはよう。なんだい、朝から慌ただしいねぇ?」




「申し訳ございません。昨日、魔鉱石の輸送隊を護衛にいっていた部隊の件なのですが――」




「サージェが謝ることじゃないよ……。それで魔鉱石絡みか、まものに襲われでもしたかい?」




「襲撃されました。ですが……、相手はまものではなく人間です」




「ほほう……、私らブレイヴ・ピラーが護衛についてる輸送隊を襲うなんて、ずいぶんと度胸があるか、単なるバカなのかどっちだろうねぇ?」




「魔法使いが襲撃したと報告を受けております」




「魔法使いねぇ、どこかの雇われかなにかか……。なんだか穏やかじゃない話だねぇ」




「はい。ですが、その魔法使いはすでに取り押さえているようです。こちらに連行していると聞いております」




「事情は聞き出せそうなのかい?」




「それが……、狼狽がひどく、まともに話ができないようで今は監視の元、個室で落ち着くのを待っている状態です」




「――名前と所属くらいは聞けているのかい?」




「報告によると、名前は『パララ・サルーン』、所属は魔法ギルド『やどりき』とのことです」




 私は目を見開いてサージェの顔を見た。




「いかがされました、カレン様?」




「たしかに『パララ・サルーン』って名乗ったんだね?」


「報告によれば、ですが」




「私が面会する。他の奴は入れるな」




「カレン様? まさかお知り合いですか?」




「『パララ・サルーン』は知り合いだよ……。ただ、そんな物騒なことをしでかす子じゃないけどね」




 私が知っているパララちゃんなら、魔鉱石の輸送隊を襲うなんて大それたことするはずがない。ただ、捕まって狼狽している姿は不思議と容易に想像ができた。




 やれやれ、なにか厄介ごとに巻き込まれてしまったのかねぇ……。






 ブレイヴ・ピラー本部の一室に例の魔法使いは幽閉されていた。部屋の扉には組織の剣士が2名体制で見張りをしている。私が顔を見せると、2人とも揃って一礼をした。




「ごくろう、今中には誰かいるのかい?」




 どちらともなく尋ねると、今は魔法使い1人だけと答えが返ってきた。




「それならちょっと邪魔するよ? サージェは私以外立ち入らないように見張ってて」




「御意、お任せください」




 私は見張りの1人から鍵を奪って扉を開けた。




「マスターからもグロイツェル様からも面会の許可が降りてませんが、よろしいのですか?」




 扉を半分開いたところで後ろからそう聞こえた。




「私が自分に許可を出した。それ以上なにか必要かい?」




 返事を待たずに部屋へ入り、後ろ手に扉を閉める。目の前には、拘束具で両手の自由を奪われた見知った少女の姿があった。




「やあパララちゃん、会いに来たよ……」




 彼女は私を視界に入れると、涙ぐんでなにか言おうとした。私はその第一声を聞く前に彼女を抱きしめて優しく頭を撫でた。




「怖かっただろう、ここはおっかないのが多いからねぇ……。お姉さんが来たからもう安心していいよ?」




 ゆっくりと、言い聞かせるように話しながら頭をゆっくりと撫で続けた。パララちゃんが泣いているのはわかった。しばらくこのままの姿勢で彼女が落ち着くのを待つのがよさそうだ。


 徐々に呼吸が整っていくのを感じる。彼女を離して今度は目をしっかり見つめた。潤んだ瞳は水疱のように頼りなく、その周りは赤くなっていた。




「なにがあったか私に話せるかい?」




 声は出ていなかったが、小さく彼女は頷いたのでもう一度手を伸ばして頭を撫でた。

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