↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸福の花は静かに笑う  作者: 武尾 さぬき
第1章 異世界営業
PR
51/214

◆◆第4話 花の闇(後)-1

 ――翌朝。




 やはり寝付きが悪かった。冷水で顔を洗い眠気を追い払ったが、ラナさんに顔を合わせると、「お疲れのようですが、昨日のお仕事は大変だったのですか?」と聞かれた。




「ご心配おかけして申し訳ないです。昨夜はどうにも寝付きが悪くて――」




 彼女が顔を真っすぐに見つめてくるので思わず下を向いてしまった。




「そうですか……。お昼の時間はそれほど忙しくなりませんから、もう少しお休みになられてはいかがです?」




「お気遣いありがとうございます。大丈夫です。眠気は少しありますが、時間が経てばどこかへいくと思いますから」




 居候の身で、お店の手伝いをせずに寝ているなどさすがにできない。実際に体調が悪いわけではなく、ただ睡眠が不足しているだけなのだ。




 そう言っていつも通り仕事にかかろうとしたが……、ラナさんが立ちはだかった。そして私に顔を近づけてまじまじと見つめてくる。鼻と鼻がぶつかりそうな距離で見つめられ、逆に私が後ずさりしてしまった。彼女の吐息の熱が顔の皮膚で感じられる。




「いけません! スガさんのこんな顔初めて見ますよ! お店はいいですからもう少し寝てきてください!」




 彼女は私の目の下に人指し指を当ててそう言った。鏡を見ていなかったが、くまでもできているのだろうか。こうも強く言われると、甘えた方がいいのか、と思ってしまう。本当に優しい人だ、と改めて思った。




「……わかりました。もう少しだけ睡眠をとってきます。お店を開ける時間には必ず戻ります」




「そうしてください。その方がボクも遠慮せず仕事を頼めますからね?」




 こうして結局はラナさんの好意に甘えてしまった。もうひと眠りしたら頭もすっきりするだろうか。


 寝床で目をつむるがやはり眠気は襲ってこない。代わりに様々な考えが頭に過ってきた。




 カレンさんは切り裂き魔について私には話せないなにか有力な情報を持っている気がする。犯人は魔法使い、と話をしていた。魔法使いの知り合いはパララさんくらいしかいない。風の魔法がどうのとか聞いたので、彼女に聞いてみたらなにかわかるだろうか?




 魔法の知識に関しては乏しすぎてわからないことばかりだ。とりあえず、今考えていることをすっきりさせるためにも、カレンさんときちんと話さなければならない。





 その時、離れの扉からノックの音が響いた。考えに夢中になっていて驚いてしまう。最近こういうのが多い気がする。返事をして扉を開けるとラナさんが立っていた。




「リラックス効果のあるハーブティーを淹れましたよ。お休み前に飲んでみてください」




 ラナさんのかいがいしい姿に一瞬抱きしめたくなる衝動に駆られた。




「気を使わせて本当にすみません。どうにも寝付けそうにないのでやっぱりこのまま働きます。ハーブティーはありがたく頂戴します」




 ひとりでいるとずっと考え事をしてしまう。なので、今はいっそ考える暇がないくらいに仕事に没頭したい気分だった。




「……そうですか。もししんどくなったら遠慮なく言ってくださいね?」




 私はラナさんからハーブティーを受け取った。その香りを嗅ぎながら少しずつ啜って飲んだ。鼻孔の奥に清涼感が広がる。一息つくと先ほどまでよりは元気が出た気がしたので、離れを出て仕事を手伝いにいった。





 特別忙しい日ではなかったが、ラナさんとブルードさんにあれやこれやと聞いてまわった。なにかをしている時間は思考を止められる。そうこうしている間に夜になり、酒場が一番賑わう時間帯になっていた。




「スガさん今日はいつにも増して働くじゃないか、どうかしたのか!?」




 手が空くたびに、手伝うことをはありませんか? と聞いていたらブルードさんにそう言われた。




「いいえ、今日はいつも以上に働きたい気分なだけです!」




 睡眠時間が少なかったので、この時間になるとさすがに疲労が出てきた。だが、ここからが本当に忙しくなるので気合を入れるために両頬をパチンと叩く。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。