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幸福の花は静かに笑う  作者: 武尾 さぬき
第1章 異世界営業
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第3話 魔法使いの挑戦(後)-6

 翌日、面接試験の2日前である。




 この日は面接の練習に助っ人を呼んでいた。昨日、料理人のブルードさんに頼み込んでいつもより早く酒場に来てもらったのだ。ラナさんも一緒に頼んでくれたおかげか、ブルードさんは快くと了承してくれた。私は予めブルードさんに話をしてほしい内容のメモを渡して、その中身の説明をした。




「まぁやってみるけど……、ホントに大丈夫なのか、これ?」




 ブルードさんはメモの内容と私の説明を聞きながら首を捻っている。




「注文が多くて申し訳ないですが、今説明したような感じでぜひお願いします」




「スガさんに考えがあるんだな? わかったよ。言われたようにやってみるか」




「よろしくお願いします」




 私とブルードさんが打ち合わせをしているとパララさんが酒場へやってきた。昨日は練習をかなり繰り返したので、嫌になっていないかと心配していたが、彼女の表情は明るかった。


 彼女なりにこの練習を楽しんでいるのかもしれない。なんであれ、前向きに取り組んでくれるとこちらもやる気になってくる。




「きっ…今日もよろしくお願いします!」




「こちらこそよろしくお願いします。今日はブルードさんに面接の練習を手伝ってもらいます」




「よろしくな、パララちゃん!」




 筋骨隆々で巨体のブルードさんの威圧感は中々のものだが、パララさんに話かける声は優しかった。




「よっ…ょろしくおねがしいたします!」




「今日はブルードさんに面接官をしてもらいます。昨日同様に質問内容は私が考えたものになっています」




「わっ、わかりました! がんばります!」




 ラナさんはちらりと顔を出して、がんばってくださいね、と一言言って依頼書の整理をはじめた。


 昨日と同じようにパララさんと面接官役のブルードさんに向かい合って座ってもらう。彼女はブルードさんの極太の首あたりをじっと見つめていた。少し極端なところはあるが、昨日話した内容を早速活かしてくれているようだ。




「よし、それじゃ面接をはじめます。まずは簡単に自己紹介をお願いします」




 私が書いたメモを見ながらブルードさんはやや棒読みで練習を開始した。




「ぱっ…パララ・サルーンです! セントラル魔法科学研究院を今年卒業しました。研究院では炎属性の魔法と弱体系の魔法の適性を見出されまして、それらを中心に学んでいました!」




 ブルードさんは慣れていないので、パララさんが話終わった後、私に「先に進んでいいのか?」とボソボソと聞いてくる。私は頷いて先を促す。




「はい……。では、セントラル卒業から今日までそれなりの期間が空いているようですが、この間にはなにをなされていたのか教えてもらえますか?」




「あっ…えっと、それは――」




 パララさんが返答に困っているのがわかった。この期間はギルドの仕事依頼を見て回ったりしていたのだ。


 しかし、仕事がうまくいかなかったり、面談で拒否されてしまったりとあまり尋ねられたくない期間の話だろう。




 だが、履歴書や職務経歴書と同じようなものがあるのなら、空白の期間になにをしていたのかは間違いなく尋ねられる。ここに対して、なるべく悪い印象をもたれないように話すのは非常に重要だ。




「しっ…仕事の依頼などを探して……、ギルドを巡ったりしていました……。なかなか仕事をもらえず所属が無いまま時間が過ぎてしまった期間です」




「セントラルを優秀な成績で卒業されているようですので、魔法ギルドからの推薦もあったと思うのですが、どうですか?」




「はっはぃ…。推薦を頂きましたが…あの、その面談で…ギルドから、実際に所属して働くのは難しいと言われました……」




 パララさんは絞り出すような声で話している。声にするとともにその時の記憶を呼び起こすのが辛いのかもしれない。見ているこちらも正直辛いものがあった。それはブルードさんも同じのようで私の顔を見て、続けていいのか? と表情で訴えてくる。




 しかし、私は続けてもらうように頷いてみせた。




「えーと……では、推薦のあったギルドには入れなかったのに、我々のギルドならあなたの力が活かせると考えられた訳ですか?」




 ブルードさんもかなり聞きづらそうに話をしている。そしてパララさんも俯いたりしながらもごもごとなにを口に出すべきか迷っているようだ。





 ブルードさんには申し訳ないが、今日の練習では圧迫面接のようにするための質問を考え、読んでもらっている。私やラナさんとは別の人から圧迫気味の質問を受けることによって、実際に圧迫面接に遭遇した場合でも対処できるようにしておきたかったのだ。




 これはパララさんには辛くきついだろう。面接官役のブルードさんもきついし、見ている私もすぐにやめさせたい衝動に駆られた。




 だが、当日いきなりこういった事態に遭遇する方がさらに辛いことになるのだ。彼女には今これに耐えてもらいたかった。パララさんがこの答えづらい質問にどう返すのか、中断したい気持ちをぐっとこらえて私は待ち続けた。ブルードさんも時折私に目をやりながら黙っている。




 そしてパララさんはこの沈黙を破った。

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