第3話 魔法使いの挑戦(後)-4
書類が通ってから面接までの日程は早かった。3日後にその日は決められている。
ギルドの規模や応募の人数を考えるとまずは集団面接があるのだろうか。実際の能力は別として、今のパララさんの調子では面接はまず通らない。限られた時間で、より実践的な練習をすることにした。
「パララさんはとにかく自分に自信をもつことです。書類選考が受かっただけでも、そこに至らなかった多くの魔法使いより優れているのだと思って下さい」
「……そんな、私が他の方より優れているところなんてそんなに――」
「謙虚な姿勢は良いと思います。ですが、行き過ぎた謙虚さは人を傷つける場合もあります。今のパララさんは自身への過小評価が過ぎるでしょう」
「そっ…そうでしょうか……?」
「そうです。そして私にローゼンバーグ卿という魔法使いを教えてくれたように、好きなものを伝える気持ちで話してみてください」
「はっはい……。なんとかやってみます」
あまり自信は無さそうだ。頭で理解しても話し方などは早々に変えられるものではない。繰り返し練習をして徐々に身に付けていくしかない。それには残された時間が短すぎる……が、それでもやれるだけやるしかないのだ。
「では、面接の練習をしましょう。質問は私がいくつか考えました。面接官はラナさんにやってもらいます。その方がパララさんも話しやすいでしょう」
お客様用のテーブルにパララさんが座り、向かい側の席にラナさんが座る。ラナさんはいつも通りの笑みを浮かべていた。
「それでは、パララさん。よろしくお願いしますね」
「はいい! よろしくおねげいします!」
いきなり嚙んでしまっていた。ラナさんはくすりと声を出して笑い、パララさんは茹で上がったように赤くなっている。ラナさんはひとつ咳払いをして、面接官役を始めた。
「こほん、ではまず魔法ギルド『知恵の結晶』を志望された理由をお聞かせください」
どこの会社の採用面接でもありそうな質問だ。広い意味で採用面接なら私のいた世界とそう内容にも大差はないだろう。まったく的外れだったら謝るしかないのだが……。
「はっはい! えと……、その……」
俯いて沈黙してしまった。ラナさんは笑顔のまま回答を待っている。
「ロっ、ローゼンバーグ卿のような魔法使いになりたくて……、魔法使いとしての能力により磨きをかけることができると思い、めっ名門であるそちらに入りたいとおももいましたっ!」
気になるところは多々あるが、回答としては悪くないだろう。
下手に模範解答のような内容を言うより、素直に思っていることを口にしてもらった方がパララさんにはいいはずだ。そして、その素直に口に出す、が彼女の課題の1つなのだ。
しかし、この「ローゼンバーグ卿」という人の固有名詞はどこでも通じるものなのか気になる。
「わかりました。では、次の質問です。あなたの長所と短所をそれぞれ教えて下さい」
「はっ、はひ! ちょっ長所はです…ね!えと――」
毎回違う噛み方をしている。私はわずかに顔が笑いで歪みかけたが、彼女は真剣なのを忘れてはいけないと思い、なんとかこらえた。
「ちっ…長所は! 長所は…! 長所……、たっ短所は……、人とお話しするのが苦手なところです」
少しの沈黙が流れた。長所はこのまま出てこないのだろうか?
「では、質問を変えますね。あなたが『知恵の結晶』に入った後にしたいことはありますか?」
「はい! 魔法の力で人助けをしたいです!」
ラナさんの表情が優しく緩んだのが見えた。今までの質問よりはっきりと答えが返ってきた。これが彼女の魔法使いとしての本心なのだろう。それにしてもラナさんは面接官役をすんなりとこなしている。わりと楽しんでいるようにさえ見えた。
「では次の質問です。今、目の前でボクが巨大なまものに襲われようとしています。その現場に居合わせたあなたはどうしますか?」




