第3話 魔法使いの挑戦(前)-5
「突然すみません。我々はこのあたりを警備している衛兵団の者ですが、少しお時間よろしいでしょうか?」
衛兵の男は、小柄な年配の男と私と同じくらいの背丈の細身の若い男との2人だ。若い衛兵は「ザック」と名乗り、私に問いかけてきた。やましいことはなにもないので素直に答える。
「はい、どういったことでしょうか?」
「今ここでなにをされているのでしょうか?」
ただ休憩しているだけだったので、そのまま答える。
「買い出しの帰りに休憩をしていたところです。近くの酒場で働いております」
ここまで言うと、年配の衛兵が「あぁ……、ラナさんとこのか」と言った。私の記憶には残っていないが、お客として店に来たことがあるのかもしれない。
「そうですか。ご存知かもしれませんがここ数日このあたりで通り魔の被害が出ておりまして……」
若い衛兵が話し出した。最近この話題を耳にすることが多い。私が思っているよりもずっと近いところで被害は出ているようだ。
「我々衛兵団も通常より警戒を強めておりまして、こうして街行く人に目撃情報を聞いてまわっているところです」
私はここではじめて通り魔、街の噂ではどちらかというと「切り裂き魔」と呼ばれている事件の具体的な内容を知った。カレンさんに以前簡単に聞いたことはあったが、事件の場所や時間といった細かい情報までは知らなかった。
今回それを知って驚いた。
ここ数件の被害はどれも持ち物や衣服への切り傷で怪我人自体は出ていないらしい。しかし、その現場がこの街に集中しているのだ。時間帯はいずれも深夜で、さすがに酒場も閉まっている頃だ。
この時間帯ではまともなも目撃情報は出てこないだろう。こちらの世界では、大通りに魔鉱石を利用した街灯が出ているくらいで、夜になると街そのものが眠ったようになる。
私は衛兵2人に、特に目撃情報とかもなく残念ながら力になれそうにない、と話した。ザックと名乗った衛兵は手帳にメモをとっている。
「ご協力ありがとうございました。もしなにか気付いたこと、思い出したことがあればご一報もらえると助かります」
そう言って彼らは私の前から立ち去った。日差しは雲に隠れ、吹き抜ける風がいつもより冷たく感じる。それほど時間が経ったわけではないが、そろそろ酒場に戻ろうと思いベンチから立ち上がって歩き始めた。
酒場の扉は、私が出た時のまま「close」の札がかかっていた。念のため、中の様子を伺ったが、さきほどの恰幅のいい男の姿は見当たらない。奥の席でラナさんとパララさんが向かい合って座っているのが確認できた。表情など細かい様子まではわからないが、ここまで来てしまったので扉を開けて中へ入った。
「ただいま戻りました」
中へ入るとラナさんがすぐにこちらへやってきた。パララさんはそのまま席に座っている。頼まれた品一式の入った紙袋をラナさんに差し出す。
「おかえりなさい、ありがとうございました」
いつもの笑顔で迎えてくれた後、パララさんのほうに目をやり、再び私に顔を向けた。
「実はパララさんのことでスガさんに相談したいことがあるですが……、よろしいですか?」




