表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸福の花は静かに笑う  作者: 武尾 さぬき
第3章 友達
119/214

第8話 会話の産物(後)-4

「『精霊使い』、ですか?」





 魔法でさえよくわかっていないのにさらに理解の及ばないような話になってきた。





「ええ、『精霊使い』についての仮説はある意味、魔法学の根本を揺るがす内容でした。ゆえに私も世に出すかは慎重にすべきだと思っていました。ですが、どう間違えたのか、世に知れ渡ることになってしまった」




 シャネイラさんの表情がわずかに曇ったように見えた。今話してくれた内容に悔いがあるように感じられる。




「論文の内容が立証できるかは別として、もしも正しかったのなら……、その魔法使い……、いや精霊使いひとりの力によって、国や組織のパラーバランスが崩れるほどの可能性があったのです」




 急に話が飛躍したように思えた。「精霊使い」とは核兵器かなにかなのか?




「私の論文が世に出たことによってラナンキュラスを取り巻く環境は一変してしまいました。彼女を我がものにするために、大小さまざまなギルドや王国騎士団、魔法学校すらが囲い込もうとし始めました」





 私は驚きを隠せなかった。精霊使いがどうとかは仮説として……、ラナさんの周りでそんなことが起こっていたのか。今の生活からは想像ができない。




「結局、ラナンキュラスは周囲の人間への対応に疲れ、『魔法使いとして生きることをやめる』と宣言して、引き籠ってしまいました。彼女が表に姿を見せないまま長い期間を経てこの騒動は収まりました。が……」




「――が?」




「今でも水面下でラナンキュラスの力を欲している者たちは動いています。そして……、彼女の両親が殺害されたのはこの延長にあった可能性があります」




「ほっ……、本当ですか、それは!?」




 私の声がよほど響いたのか、紅茶を運んできてくれた老人がちらりと私たちの様子を見に来た。





「あくまで可能性の話です。あの事件はまだ解明されておりませんから。ですが……、ラナンキュラス自身はきっとそう思っているでしょう。ゆえに彼女はすべての元凶になった私を強く憎んでいます」




 これにはどう答えていいのかわからなかった。




 今の話がすべて真実だとするなら、シャネイラさんに非があるのだろうか?




 ラナさんの立場なら恨みたくなる気持ちはわからないでもないが……。 




「ラナンキュラスが私を嫌う理由はここにあります。今、彼女にもっとも近いところにいるあなたにはこれを知っておいてほしいのです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ