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引導②

 少しずつ、キリカナンの身体が肥大化していきました。初めに血管が裂け、皮膚が破り捨てられ、顔だけを残して、脚の筋肉が腕の筋肉が膨らんでいき、そして――音を立てて爆散しました。


 血肉があちこちに飛び散ります。壁に、床に。そして、()と横たわったままのお嬢様の方にも。次の瞬間、飛び散った肉片と血肉の全てが、先程までキリカナンが立っていた一か所に凝縮されていき、やがて人の形を取り戻していきました。再生されたキリカナンの身体は、禍々しい褐色の肌に、頭に角が生え、まるで魔族にでもなったかのような容姿でした。


 それもそうでしょう。彼が飲んだ錠剤は、前世の俺も知っているものであり、ストーリーに深く関わる闇の組織の手によって開発された人を魔人化させる強壮剤なのですから。つまり、今の彼は既に人間ではないのです。人間を捨ててまで、私に仕返しがしたかったのでしょうか。一体、何が彼をそれ程まで執着させているのか。屈辱と怒りだけで、そこまでに至るとは思えませんが……


「フハハハハハッ!! みなぎる、力が漲ってくるぞ!! これが魔人の力か! これが、俺の力だ! お前を打ち倒す力だ! 」


  お決まりの力が漲るアピールを披露するキリカナン。しかし、その力量の変化は確かに眼を見張るものではありました。威圧感と言いますか、存在の格が何段か上がった様に感じます。


 はああああっっ! と雄叫びを上げながら、彼は地を踏みました。次の瞬間、()は驚愕に眼を見張ります。先までの亀のような脆い動きは何処へ行ったか。彼は、眼にも留まらない速さで、肉薄してきたのです。そして、勢いのままに巨大に見える腕を振るいました。


 ボゴッ、と鈍い音と共に、()は吹き飛ばされます。後方の壁を突き破った先で、私は受け身を取って着地しました。しかし、立て続けにキリカナンの攻撃が降り注ぎます。今度は上からの振り下ろし。

 それを、両腕で受け止めるも、衝撃で地面にクレーターが出来ます。キリカナンは連続で拳を叩きつけ、着々とダメージを与えて来ます。そして、彼は大きく後ろに腕を振り被り、巨大な一撃を繰り出しました。

 それを食らってしまえば、流石に”痛い”ので後ろに跳躍して、間一髪と回避します。 

 

 これまた嫌なタイプの相手でした。こっちは火力不足で、手数を用いて突破口を探さなくてはならないのに対し、相手はスピード勝負の一撃必殺。メドゥーサちゃんじみた理不尽を感じます。圧倒的な暴力。それが、今のキリカナンを象徴する言葉でした。ですが、


「それだけだ」


 所詮は力任せに上級魔法を撃っているのと変わりません。メドゥーサちゃん相手に攻撃が通じなかったあの頃の私と同じです。小手数を増やそうが、幾ら俊敏になろうが、力があろうが。破れない壁というものはあるのです。



 ――それを、お前にも教えてやろう。

 

 瞬間、キリカナンの指による圧倒的な速さの突きが、俺の身体に直撃した。


  

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