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突入

 目的地の洞窟へと全力疾走をして一時間程。漸く辿り着いたそこは、ゲームにも出て来た見覚えのある場所でした。


『古龍の苗床』


 名前の通り、太古の昔にとあるドラゴンが苗床としていた場所です。確か、長い年月が経過した今も龍気と呼ばれる”マナ”の流れが奔流しており、魔物が寄り付きやすいのだとか。ダンジョンと比べれば小さい洞窟ですが、魔物が出てくるのですから、最早ダンジョンと言っても相違ないでしょう。


「ここに……お嬢様が?」


 とりあえず、生体感知の魔法を使って索敵をしました。引っ掛かったのは、ダンジョン内に潜む大量の魔物達と、その奥の一室に二人の反応。一人は、背丈の高い男。恐らく、キリカナンでしょう。もう一人は女性で、横たわっていたようでした。この魔力、見間違いようがありません。お嬢様のものです。


 一先ず、お嬢様が無事である事と、約束通りお嬢様をここに置いたままである事に安堵の息を吐きます。

 引き返す必要が無くなったので、そのまま洞窟へと足を踏み入れます。踏み入れた瞬間、私は僅かな違和感に駆られました。


「魔力濃度が薄い?」


 魔法を使うには、魔力と呼ばれる大気中のエネルギーが必要です。その魔力が空気中に含まれる割合を表したもの。それが、魔力濃度と呼ばれる指標でした。それが、この洞窟内では極端に少ないのです。平たく言うと、魔力素が少ない訳ですね。


 しかし、それくらいで立ち止まる訳には行きません。魔力が無くても立ち回れるように修行していますから。スカート裏に隠しているナイフを二本取り出し、両手に構えます。そのまま、突き抜ける様に進んでいきました。


 途中、行く手を阻む魔物を一薙ぎに切り払っていきます。龍気の影響か、纏う瘴気が普通の魔物より多いので、その分ここの魔物達は強力でした。しかし、ステータスだけで大抵の魔物を打ち倒せる私は、難なくキリカナンの待つ部屋へと辿り着きます。明りが灯されているのか、部屋に踏み入れた瞬間、視界が明瞭になっていきます。最初に眼に映ったのは、身体の至る所に打撲痕の刻まれた横たわるお嬢様の姿でした。今は、意識が無いのか眼を瞑ったまま反応がありません。幸い、生きてはいるようです。


「ふん、遅かったではないか」


 声の方を振り向くと、お嬢様を攫った犯人であり、お嬢様を傷みつけたと思われる忌ま忌ましい男。キリカナンがそこに、立っていました。何故か、その片頬は朱く腫れています。


「――キリカナンッ!!!」

「ぐふふっ、そう吠えるでない。感動の再会を喜び合おうではないか」

「お断りだ。くそったれが。お前は一刻も早く、疾く死に晒せ」

 

 挑発には嫌悪を返します。そこで、私はつんと鼻を突く匂いに気付きました。その正体を私は知っています。確か、フェンリルさんに突き飛ばされた先で訪れた街で流行していた非人道的な錠薬。飲めば楽になると言われ、現実を捨てた者達がこぞって手を出す禁忌指定のモノ。


 所謂、”麻薬”の匂いが、キリカナンの身体から漂ってきました。


「……キリカナン、お前……まさか、麻薬に手を染めたのか?」

「……ぐっ、黙れ!! どいつもこいつも喧しいわ! 貴様に何か言われる筋合いはない!!」


 それは、ほぼ肯定と捉えられる返答でした。



「そこまで、堕ちたのですね。キリカナン」


 


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