次回:お父上死す!
王城に戻った。不法侵入で捕えられた。トレントとの戦闘で敗れた布一枚から、囚人服に着替えさせられる。とりま親父を呼んでこいと監視官に告げる。そして、王が様子を見に来た。 ←イマココ
「ふむ。お前か。余を親父などと呼ぶ礼の成ってない不躾な囚人というのは」
「いや、ですから私はアルシェ……」
「ほう。よく見れば美しい顔をしておる。後妻に加えてやらんでもないか」
「おぇええええっっ!! 実の娘《息子》を口説いてるんじゃ無いですよ!!」
「なぬっ? まだその減らず口を閉じぬか。貴様は余の何様のつもりじゃ!」
「ですから、私は貴方の娘《息子》、元第一王子のアルシェードです!!」
「はっ? お主何を言っておる。余の愚息アルシェードは男だぞ」
「そうです。貴方の愚息は男でした。しかし、私はtsしたのです!!」
「て、てぃーえす、とな? 何を言っておるのだ」
「そうです! ts です! つまり、性転換しました!」
「は、はぁっ!? お、お主やはり頭が狂っておるのではないか? 余を謀っておるのだな? ええい。無礼者め! 衛兵よ、今すぐこの者を尋問せよ!」
「ちょ、人の話を聞いてくださいよ! そ、そうだ。第一王子だった私しか知らない事をこの場で暴露しても良いんですよ?」
「ほう。証明のつもりか? よかろう、申してみよ」
「い、いいんですね? 外聞を気になさらないと?」
「くどい。余が良いと言っておるのだ。しかし、もしそれが虚言であったなら容赦なく無礼を働いた罰として死刑罪とする」
「で、では。遠慮なく。ご、ゴホン。ええー私の父上、ジークは実はかなりの愛妻家で、しかし甘えん坊だ。子育てに営む妻を見て、実子が羨ましく思い。妻を相手に所謂、赤ちゃんプレイに勤しんでいる」
「は、はっ? お、お主! どうしてそれを!?」
「また、色を好み。特に、巨乳の女性が好きなので、好みの容姿の下女に対して積極的にアプローチをしては後妻に加えようと画策しているが、どういう訳か必ず正妻に見つかり、その後は枯れる程に絞られる」
「ま、まて!! 分かったから! お前を愚息だと信じる! だから、それ以上の発言は止めろ!!」
「ふふん。信じて頂けましたか?」
全部親父の妻であり、私《俺》の母親でもある王妃から愚痴程度に聞いた話なのだが、まさかこんな所で役に立つとは。
「う、うむ。お主は本当にあのアルシェードなのだな。しかし、お主。先程の発言はもう少し踏み込めば私は愚か、王妃の侮辱に繋がるのだぞ? そこを理解しているのか?」
「は、はい……少し、言い過ぎました。申し訳ありません」
「良い。この件は不問とする。その代わり、今日お主に口説いた事は、王妃には秘密にしといてくれぬか?」
「あら。私なら此処に居ますわよ。家族水入らずの場に、私だけ仲間外れだなんて酷いではありませんか?」
「ぐぎゃあああっっ!! ミランダ!? こ、これは違うんだ!!」
三十代後半のおっさんのものとは想像し難い、甲高い悲鳴が木霊する。修羅場への突入を合図に、王の威厳が完全に吹き飛んだ瞬間であった。
「ああー。終わりましたね。お父上」