エピローグのような再会
「元気でね、アリス。近い内にまた会いましょう」
「ええ、お元気で。メドゥーサさん……いいえ、師匠!!」
「ふふっ……今ではアナタの方が確実に強いけど、嬉しいわね」
「ステンノーさんと、エウリュアレさんもお元気で」
「……おう、達者でな」
一間置いて、陽気な声でエウリュアレさんが言いました。その眦に雫が浮かんで見えるのは、私の気の所為でしょうか?
最後に、ステンノーさんが何やら指輪を差し出して来ました。
「……これは? あの時の、転移の指輪ですか?」
「ええ。だけど、用途は逆ね。いつ何処にいても、合図があればメドゥーサが転移で送られる魔法陣が刻まれた指輪よ。有効回数は3回。大事に使いなさい」
「……は、はい。それじゃ、私は行きますね」
お別れの挨拶を済まして、私は光り輝く魔法陣の上へと乗りました。
そして、魔法陣は起動し、私の周囲は眩い光に包まれ、次の瞬間——
何も無い上空から落下しました。
「——うわああああああああっっ!!!」
そして、壁を突き破り、その先で柔らかい何かに受け止められて、停止します。
むにゅっ。
この感触は……?
柔らかい何かです。それが気持ち良くて、思わず二度掴みしました。
「……んんっ」
力の抜けた様な女性の声が聞こえました。えっ、今の誰の声? 私?
しかし、顔を上げた私は、自らの軽率な行動を深く後悔します。
「えっ……?」
今度は間違いなく私の発した声でした。漏れ出た様な間抜けな声。
それもそのはず。顔を見上げた先には、ずっと会いたかった愛しのお嬢様の御尊顔が。
しかし、問題は私の手の位置でした。
——鷲掴みにしていました。両手で。その、綺麗な形をした双丘を。
途端、私は顔の熱が急激に上がっていく感覚と共に、激しい激しい懺悔に包まれます。
「ごごごごごごごごめんなさい!!」
思わず突き放してしまいました。恐る恐る顔を見上げると、お嬢様は顔を俯けて、何やら震えていました。
あっ、これはビンタされるやつだ。
なんとなく本能的にそう感じて、だけど、躱す訳には行かないので、腹を括った時でした。
「…………………………たわ」
「えっ?」
突然、お嬢様に抱き着かれたのです。怒られると思っていた私は、突然の抱擁に驚いて、また間抜けな声を漏らしてしまいます。
「ずっとずっと、待ってたわ! アリス……!!」
途端、一層強く抱きしめられました。それはもう、密着力が強すぎて、息苦しかったです。おまけに、足でがっちりと背中を固定されていました。所謂、だいしゅきホールドというやつです。
お嬢様の突然の奇行に唖然としていた私は、その場で固まってしまい、その結果、より一層とお嬢様の抱擁は強くなっていきました。
しかし、そこで漸く私は、抱きしめるお嬢様の手と脚、その全身が震えている事に気付いたのです。そして、私の胸元に顔を埋めるお嬢様の瞳から、涙が溢れている事に気が付きました。
その瞬間。全てを理解したのです。
――ああ、安心しました。私の居場所はまだあったのですね。
溶けてしまいそうな程の嬉しさと同時に、先程とは違う意味で、激しい懺悔に襲われました。
「……遅れてごめんなさい」
「ぐすん……うっ、ほんとよ。ばか!」
だいしゅきホールドでがっちりロックしたまま、お嬢様は声を荒げて泣き出しました。私は、失礼ながら。とその背中をあやします。
本当に辛かったのが伝わってきます。私だけじゃなかったんです。
それが、嬉しくて。本当に幸せで。
お嬢様を宥めている間に、私は一つ大きな事に気が付きました。同じぐらいだった背が、今では私の方が頭半分個分大きいのです。髪も、短髪だった私はロングになって、同じ長さになりました。そして、お嬢様の雰囲気はあの時から変わっていなくて……
ああ、お嬢様。私は、貴女のお姉ちゃんになってしまいました。
私の方が、一つ年上ですね。
意識したら、やっぱりまた、嬉しくなって。
愛おしさが、溢れました。
「ただいまです。私のお嬢様」
「ええ、おかえりなさい。私のアリス」
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