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なーんだ。雑魚じゃん

 

「なーんだ。雑魚じゃん」


 考えてみれば当然の事で、しかし。実際に行動に移すとなると、非常に馬鹿らしく思えた。先に言い訳をさせてもらうと、ゲーム感覚が抜け切っていなかったのだろう。此処が現実だと分かっていながらも、何処かゲームの常識に囚われたままだったのだ。


 そう。現実はゲームと違ってターン制では無い。魔物の攻撃を待つ必要もないし、一度戦闘が開始されれば必ずしも逃げられない訳じゃない。そもそも、正攻法で戦う必要なんて何処にも無かったのだ。それに気付いた俺は、直ぐにトレントのいる部屋を出て、奴の攻撃が届かぬ位置から攻撃魔法を放ってじりじりとHPを削っていった。


 トレントが実際に地を動けるかは知らないが、あの巨体ではどう足掻いてもあの部屋から出られないだろう。


「ギガサンダー! ウィンドカッター!」


 あー楽ちん楽ちん。適当に魔法を撃ってるだけで、討伐出来そうだ。どうだ? 実にアホらしいだろ? こんな簡単な攻略法が何故、直ぐに思い浮かばなかったのか。


 そのまま、何度か魔法を放ち続けたら、トレントの心臓部である魔核に当たったのか、グゥァア!と耳障りな悲鳴を挙げながら、どんどん萎んでいき、やがて一本の枝となってトレントは消滅した。傍には、目的のブツであるトランスポーションが、ドロップ品らしくぽかんと置かれてある。



 俺は妖しい色を放つその薬瓶を手に取った。


「にしても、ピンクは無いだろ。これじゃ媚薬みたいだ。ってか、絶対体に悪いだろ」


 まぁ、実際身体に影響を及ぼす物なので、体に悪いというのも、あながち間違いでは無いか?


「とりあえず、飲むか」


 説明を受けずの飲む薬ほど危険なものは無いが、好奇心に勝る薬無し。俺は瓶の栓を抜き、ピンク色のその液体をそのまま口に放り込んだ。


「あぐぅっ!」


 な、何だ? 身体が、熱……


 火に焚べられたかの様な激しい痛みを伴い、俺の意識は糸が途切れる様に暗闇へ落ちていった——



「ん? ここは……」


 知らない天井だ。


 なんて一瞬思ったが、見覚えのあるダンジョンの奥の部屋だった。ついさっきまで、ここで激闘を交わしていたのだから、当然忘れていない。


 どうやら、いつの間にか寝てしまっていたらしい。


「……本当についさっきまでか?」


 何だか、あれから結構な時間が経過している気がする。酷く、お腹が空いていた。


 そこで、ふと違和感に気づいた。


「あれ? あー、あーあー。あれ? あれれ? なんか、声高い?」


 女の子の透き通る様な高い声だった。


 強烈な違和感に襲われた俺は、自分の手を見つめる。あのクソ王子とは思えない華奢な手だった。色白で繊細だ。ぽっきり折れてしまいそうである。


「あっ。そうだ」


 今に至る記憶を思い起こしたと同時に、俺は確かめねばならない事を確認するべく、自分の下半分へと眼を向けた。


「——ない!? え、本当にない? ない、ない、ない!? 付いて無い!! ()本当にtsしちゃったんだ!」

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