メドゥーサ最終戦①
元々6話構成のお話で投降しておりましたが、流石に長すぎたので、3話にまでカットしました。
タイムリミットも遂に鮮明な終わりが見えて来た。現在の私のレベルは『87』。遂に並んだ。良い訳は出来ない。必要もない。対等の戦いの果てに、後腐れは不要だ。そして、期限は残り五時間を切った。今日が最終日だ。此処で眼前のこの怪物を打ち敗れ無ければ、私は永劫、前に進めない。
「いよいよ最終段階ね」
「はい。今日は全力で行きますよ。メドゥーサちゃん」
「無論ね。さぁ、アナタの全てを。このワタシに見せて?」
憂いは消えました。戦い理由も。その意味も。そして、誰が誰の為に戦うのかも言語化出来る。私の存在の定義をも掌握しました。
あとは。全力をぶつけて打ち負かせるのみです。
「…………」
「…………………………」
お互いに、それ以上の言葉は要りませんでした。だから、動き出しはとても緩やかで、穏やかで、猛々しいものでした。
「シッ―――――――」
肉薄し、手に持つナイフを投擲する。これが私の初手であり、常套。様子見を兼ねた牽制の初動。
だけど、当然彼女には通じない。同じ事の繰り返しだ。初手が同じなら、その返し手も同じ。
一薙ぎ。それで、私の初手は打ち払われる。順当の結果だ。
そして、迎える第二手。ここからが、戦いの始まりだ。先ずは唱える。もう下級や中級の魔法なんかじゃない。中途半端な小手は通じないとこの三カ月近くで痛いほど分からされている。というか、殆どの手を出し尽くしたのだ。初めての攻撃など無い。だから、後は力押しだ。
「上級魔法――『滅却』!!」
『火球』の数十倍大きく、威力の高いそれを、紫苑の大蛇に向って放つ。
ごろごろ、と空気を押しながら飛んでくるそれを、メドゥーサは眼光の一睨みで、見事巨大な石ころへと変えた。アレを食らえば、私もただの石像となるだろう。石化の魔眼恐るべし。
小手先の手段を幾ら試したところで通用しない事は、これまでの模擬戦で実証済みだ。もしやるなら、大胆かつ豪快たる一手が必要だ。未だ見せたことの無い戦術かつ、彼女の度肝を抜ける様な一手が。
その布石として、放った上級魔法の『滅却』は、紫苑の大蛇の魔眼によって、大きな石ころと化した。サイズ感でいうと、私の影魔法『黒鉄』で造り出す鉄球と同サイズである。普段なら、ただの石ころとなったこれは、ただそこにあるオブジェクトとなる。石化されただけで、そこに物体として残っているのだ。それを利用する。
「『破砕』……!!」
魔力を込めて、接触した者や物体の構造を内部から文字通り粉砕し、粉々に打ち砕く魔法だ。それを、拳に込めて、思いっきり石ころとなったそれに叩き込む。
すると、ドカン、ぱキキキキィっ、と爆発した様な破壊音と、何かが割れる様に軋む音が響き、巨大なそのオブジェクトは粉々に粉砕されて、無数の道端に落ちている小石の様な小型サイズの断片となった。それら全てを、影魔法の『遠隔操作』によって、空高く浮かせ、魔法を発動する際に掲げた腕を振り下ろすと、それらは、等しく眼前に佇む大蛇へ向かって飛び散っていく。
これには、メドゥーサも戦慄していた。一物体なら、どれ程大きかろうが、石化の魔眼で石にしてしまえば、それで終わりだ。だが、千の流星の様に降ってくるこの攻撃に対しては有効な対処は出来なかったらしい。
一度に振り払うのは不可能だと感じたメドゥーサは身体を迷路のように、螺旋状に丸めて、防御態勢にはいる。どぱっ、ぱぱっ、と流星の如き小石の数々が、容赦なく大蛇に襲いかかる。
それは、着実にメドゥーサにダメージを与えていた。だが、このくらいでは勝てない。私は、小石の流星に呼応して動き出す。防御態勢に入って動けない今が好機だ……!
小石の流星に当たらぬ様に避けながら、私はメドゥーサに向って疾駆する。一歩、二歩、三歩。そして、影魔法で二本の小剣を造り出して、両手に構える。
やがて、私がメドゥーサの身体に接近し、切り札である『影喰らい』の魔法を発動させようと、その影に向って小剣を振り下ろそうとしたその時、紫苑の大蛇は突然、身体をしならせる様にして、身体を丸めて出来ていた渦巻きを大きく逆回転させ、辺り一帯を吹き飛ばした。
当然、その至近距離にいた私は、直にその旋風を一身に食らい、強い衝撃と共に、遥か後方へと吹き飛ばされる。
(…………ッ! まさか、最初から罠だったの!? )
私の身体はそのまま、成す術なく吹き飛ばされ、木々を三本程貫通して薙ぎ倒していった先で、漸く止まった。
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