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強さの答え①

 更に三日が経過。メドゥーサちゃんとの模擬戦の修行を再開して六日。


 レベルは三日前から一つ上がって『84』。だけど、まだまだメドゥーサちゃんには届かなかった。


「勝負ありね。成長しているのは分かるけど、まだ集中力が足りていないわ。後、油断し過ぎね。今日は終わりにして、また明日の修行に励みなさい」

「……ありがとうございました」


 渋面で、私は頷く。時刻は夕方。いつもこの時間に修行を終えていたが、今日はまだ体力があった。まだやれる。だけど、今日の修行は終わりだと告げられた。だけど、修行をするにも生活リズムは大事だと分かっている私は、異論を唱えるつもりは無い。その結果、もどかしい気持ちが後に残る。


 

 翌日。

いつもどおり、朝起きては祠周りを疾走し、昼からはメドゥーサちゃんとの模擬戦に励む。


「今日はいつも以上に動きが鈍いわね」


 自覚は無かったのですが、私の動きが相当酷かったみたいで、メドゥーサちゃんに指摘される。確かに、今日はいつもに増して、メドゥーサちゃんの動きに付いて行けない気がします。


「……答えが出ないんです」

「そう。何を考えてるか分からないけど、一つ言えることは。アナタは物事を達観的に捉えすぎているという事よ。エウリュアレお姉さまが言っていたわ。まるで他人を物の様に捉えているのだろうってね。ゲーム感覚で考えてるだとか」

「……だけど、それは克服したんです! 黒狼と闘った時に……!!」

「本当にそうかしらね? ワタシから見たら、アナタは何も変わっていないわ。だって、物事を判断する基準に、自分自身が入っていないじゃない」


 メドゥーサちゃんの言葉に何も返せませんでした。というか、理解が出来ません。自分優先で物事を考えない人なんているのでしょうか?


 私はいつでも自分の事ばかりですよ?


 こうして修行をしているのも私が言いだした事ですし、そもそもお嬢様に近づく為に女体化したのも自分からでした。ただ、それがお嬢様の為にもなると……


 死ぬ運命にあるお嬢様の命運を、傍にいる私が変えてあげようと……


 だから、自分の命を削る思いでこうして此処に立っている、だというのに……


 


 ――あれ? それって、結局誰の為なんでしょう? 誰の『意思』なんでしょう?


 ……お嬢様の為? お嬢様の為……おじょうさまの……


(本当にそう?)


 それは、本当に私の『意思』で行動したの?


 そもそも私《俺》って誰?


 俺って誰だ?


  アルシェードとは誰だ?


「……………………」


 答えが出そうにない私を見て、メドゥーサちゃんが助言を告げる。


「答えが出ないかしら? なら、ヒントを一つあげるわ。アナタ、【白狼の視線】のボス部屋で戦った骸骨王の事を覚えてるかしら? ソレはただの魔物でありながら、急速な進化を遂げていたはずよ。そのきっかけとなる要因とは、いったい何だったのでしょうね?」


 ――何故あの戦いを詳しく知っているのか。そんな事は今更問い返しません。メドゥーサちゃんに、あの場の光景を視る手段があったのかも知れないし、もしかしたら、私が気付かなかっただけで、あの場に居たのかも知れない。


 あとは、ステンノーさんに聞いたとかでしょうか。だけど、今そんな無用な詮索をするつもりはないです。


「……感情でしたでしょうか?」


 私は、思いつく一つの推測を口にします。あの時、リッチの覚醒を促した導火線は、半身を失った事だった。その時に、リッチの身に何があったのか。あの時の様子から考えられるのは、怒りが燻ぶり、感情が昂った事による憤慨が、ソレの急速な成長を齎したという事だった。


「それも正解だわ。だけど、完璧な答えとは行かないわね。感情に連なる一つの因果である事は間違いないわ。では、その感情とは一体何なのかしらねえ? 憤怒、哀愁、憎悪。どれも違うわ。答えは、人が行動しようと思う原点でもあるとある感情。それは……●●よ」


 メドゥーサちゃんの言葉の肝心な部分は濁され、その時の私には聞き取ることが出来なかった。




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