修行再開②
――現在のステータス
アリス level 83 ↑(2)
「一カ月前と比べて、めちゃくちゃレベル上がりましたね……」
ステンノーさんの用意した、ステータスが刻まれた石板を見た私は驚愕を口にする。ステンノーさん達の所に戻ってきたのが三日前。その時の私のレベルが81。あれから三日で2レベルが上がりました。特に魔物を倒していたとかは無いのですが、メドゥーサちゃんにボコされている内に上がっていました。
今の私とメドゥーサちゃんの彼我のレベル差は、私が83の、メドゥーサちゃんが87で4つ差です。
「ええ、これは誰にも予想出来なかったわね。私はてっきり、三日程でダンジョン攻略中に音を挙げると思ってたけど、まさか一か月も籠った上、ダンジョンを踏破してくるとは……」
「えっ……!? 途中辞退しても良かったんですか?」
「いいえ。その場合は【導者】がアナタを処していたでしょう。私では、彼女に抵抗して助けてあげられないわ」
「確かに……あの人? レベル150のステンノーさんより強いみたいですからね……」
「そこは相性が関わる所だけど、純粋な戦闘力で言ったらそうね」
メドゥーサちゃんと雑談を交わしながらも、互いに攻撃を繰りだす。前までメドゥーサちゃんと会話するどころか往なす事も出来なかった。私がひたすらあの手この手を試して、返しの一撃でダウン。それが、定例だった。だけど、一か月のレベリングを終えた私は確かな成長を感じており、動体視力が遥かに向上した事で、メドゥーサちゃんの攻撃に眼が追いつき、それを躱す余裕すらある。更に、この三日ずっとメドゥーサちゃんにボコされていた事で、メドゥーサちゃんの動きを観察し、その癖やパターンを本能的に捉えつつあった。それ故に、会話できる程の余裕が生まれているのです。
「にしても、アナタ。やはりナイフの扱いが上手いわよ。よっぽど性に合っていた様ね」
「……ほんとですか? 昨日修行を観戦してたエウリュアレさんにも同じような事言われましたよ。暗殺者の戦いと似ている……みたいな?」
「そうね。私もお姉さまに同感だわ。アナタのは、騎士の様な護る者の戦い方では無く、あくまで個人で敵単体を撃破しようという意思を感じ取れるわ。その影響もあって、暗殺者の様な戦い方なのでしょうね」
「……自覚はありませんが、それは悪い事なのですか?」
「場合に依るわね。だけど、今のままじゃ肝心な時に、アナタのお嬢様を護れないかも知れないわよ」
「……それは困りま…………あっ」
呻き声を漏らした私の眼前には、メドゥーサちゃんの尻尾が、刃先を当てる様にして私の首元に添えられていた。
どうやら、また負けてしまったらしい。
三カ月以内にメドゥーサちゃんから一本を取る試練のタイムリミットは残り24日。
まだ底が見えないメドゥーサちゃんの全力を想像して、私は焦燥感が募っていく一方だった。
レベルの差は僅かにあれど、誤差の様なものだ。ステータスの差を言い訳にするつもりは無い。
メドゥーサちゃんやエウリュアレさんの助言を吞んで自己分析するに、私に足りないのは経験と技術、そして戦う理由と覚悟だ。
後者の二つばかりは、私としては心外で、中々認められなかった。
――だって、私にはお嬢様を護るという戦う理由も覚悟があるはずだ。
だけど、何かが曖昧で、重ならなくて。定義化する事の出来ないズレが生じていたのを感じていた。それが、私の刃先を鈍らせる。
あと1ピースで繋がる気がする。だけど、それが分からなかった。
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