【導者】との対面①
起きたら知らない天井でした。
「あら、お目覚めかしら」
聞き慣れた声。ひどく、懐かしい気もする。
「め、どぅ、さちゃん?」
「ええ、ワタシが認識出来るなら頭の方は問題なさそうね。一応確認取るけど、何処まで覚えてるかしら?」
「……えっと、確か。黒い狼と闘って……それで」
「なんだ、ちゃんと最後まで覚えてる様ね。勝ったのよ。アナタが。見事な幕引きだったわ」
そう言って、拍手をするメドゥーサちゃん。見事な幕引きだと言われても、随分泥臭い戦いだった様な気もしますが……
「っていうか、見てたんですか?」
「ああ。お前の雄姿。しかと、見させてもらった。格上相手に見事な立ち回りであったぞ」
メドゥーサちゃんに訊いた私でしたが、メドゥーサちゃんに代わって答えたのは、いつからそこにいたのか、銀色の髪を携え、狼の様な眩い毛並みのフードコートを着た、勇猛な印象の綺麗なお姉さんでした。
「えっと……あなたは?」
しかし、私がそう問い返すと、綺麗なお姉さんは黙り込んでしまいます。代わりに、今度はメドゥーサちゃんが答えました。
「このお方は、元老院の一体にして、【導者】の称号を持つ者、フェンリル。ワタシ達の探していたその人よ」
一瞬、メドゥーサちゃんの言っている意味が分からず、呆然と見つめ返す私。
「……って、えええっ!? こ、この方があのフェンリル様!? で、でも狼じゃないですよね? 人の姿をして……」
「ああ。それなら問題はない。ありのままの姿では、この古家には入り切らないのでな。人化の魔法を使って、一時的に人の体を受肉しているだけだ」
今度はちゃんと疑問に答えてくれた (正体はフェンリル)の銀のお姉さん。答えてくれる時とくれない時の判断基準が謎です。
「そ、そうなんですね……何だか急にファンタジーしてますね」
「あ、因みにお姉様達も人化出来るわよ? 私はまだ出来ないけど」
メドゥーサちゃんが爆弾発言をかます。
「ええっ!?……って、もう驚き飽きましたよ。確かに、あの人? 蛇? さん達なら出来てもおかしくない気がします」
「あら、つまらない反応ね。もう少し驚いてくれても良かったのに」
そう言って、少し残念そうに唸るメドゥーサちゃん。常に私を弄ろうとするのは、あの姉達に染められたからでしょうか? それとも弄られやすい私が悪いのでしょうか。
「それより、そちらのフェンリルさん? にお聞きしたい事があるんです」
私が視線を向けると、彼女? は凛然とした表情のまま睨み返しました。
その眼からは、とっとと要件を言え。という言外の圧を感じます。
「……えっと、あの時、森の中で私を誘導したのはあなたですよね? そして、黒狼に相対する様に仕向けたのもあなただ」
そう言って、私は睨みを利かす。私は、この人? に罠に嵌められた訳なので、どうしてもその真意を聞き取っておきたかった。
「ふん。口を慎めよ人間。本来、私はお前如きが対等に視線を交わせる相手ではないのだぞ?」
そう威圧的に言い放つフェンリルさんですが、その表情からはこちらを試しているかの様な視線が伺えました。
「では、私の勝手な解釈を失礼致します。あなたは、【導者】の称号を持つ者。言い換えれば、導き手。あの時あなたは、私を然るべき舞台に導いただけにすぎない。そうでしょう?」
「……ほう? 口だけでは無く、随分と頭も回るようではないか」
その時、フェンリルさんは僅かに笑った様に見えました。
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