新たな武器①
兆しが見えたのは、十一日目の模擬戦での事です。
「アリス。アナタ、武器を変えてみる気はないかしら? 多分だけど、アナタの戦い方は剣よりも暗器の方が向いているわよ?」
本日十五回目の組手が終わった直後、メドゥーサちゃんが言いました。
「 暗器ですか? 暗殺者とかが良く使うイメージのあの……」
「ええ。その暗器よ。って言っても色んな種類はあるけど、アナタに合いそうなのはそのまま暗殺者が使う様な、投擲に向いた短剣やナイフね。偶にいる戦闘メイドとかは常に暗器をスカート裏に隠してたりするでしょ?」
「……私が、暗殺者の武器を……でも、使い方なんて分からないですよ? ゲームでも暗器なんて使うキャラいなかったし……」
「しかし、忘れてないかしら? アナタ、身体は女性なのよ? 筋肉の付き方が違うのだから、いくらステータスで筋力が上がってるとはいえ、限界があるのよ。剣なんて重い武器をずっと抱えてるよりは、常に携帯できる軽い暗記の方が便利でしょ?」
「ああー」
メドゥーサちゃんの言葉に納得します。確かに、レベルの割には力が弱い様に感じました。普段使っている片手剣ですら、重くて振りが遅くなってしまうのです。
女性の身体という理由で、筋力のステータスは本来の0.8ぐらいになっている気がします。その代わり、魔力は1.2倍されている感覚でしょうか?
攻略対象達は省くとして、男の魔法使いが少ないのには、ちゃんと、理由があったようです。
「投げナイフなら、刃先に毒を塗れば掠った相手の動きを止める事が出来るわ。筋力がないけど、柔軟な女性に良く合う戦法だわ」
「……なるほど、確かにそうですよね。思慮不足でした。メドゥーサちゃんのアドバイス通り、一通り試してみます。先ずはナイフからですね」
――私は、ナイフから始まり、短剣、鉄扇、ナックルなど様々な暗器を順に試していきました。
中でも使い勝手が良かったのは、暗殺用のナイフと、忍者が使う様なクナイ。護身用としては、傘に見せかけた中に刃が仕組まれてる暗殺傘と、老執事とかが抱えてそうな、杖の中に刃が仕組まれてる暗器が、肌に合いました。短剣も良かったのですが、ナイフやクナイの方が使い勝手は良かったので、参考外です。
暗殺傘とか、刃が仕組まれた杖とか何だかかっこ良くないですか? 自由に武器を選べるならこの二つにしていた気がします。だけど、私は使い勝手の悪いその二つよりも、ナイフやクナイの方を選びました。戦闘力を鍛えるのが目的なので、そうした場合にナイフ等の方が強力だと感じた訳です。
奇襲性としては、暗殺傘や杖は相手の意表を突いて攻撃出来そうなので、良さそうですけどね。只のメイドの私が傘や杖を持っていても、逆に警戒させてしまうだけです。
そして、ナイフとクナイを順番に試し、結局私はメドゥーサちゃんが最初に提案した通り、暗殺用のナイフを携帯する事に決めたのです。
その日から、新たな武器を携えた私の訓練が始まりました。
―――現在のステータス―――
アリス level 46 ↑(4)
種族:人間
職業:tsメイド
武器:暗殺用ナイフ *New
特技 黒魔法
スキル 女誑し
パッシブ 持続回復
最終目標
未完の魔神より強くなる。『レベル121以上』
次の試練
三ヶ月以内に、メドゥーサから模擬戦で一本を取る。




