ゴルゴーン三姉妹との交渉②
「私から貴女達に差し出せる代償は、この身を以て出来る限りの協力です。その代わり、私からの条件は一つ。私を強くして欲しいのです」
お嬢様を助ける為に、一番必要なもの。それは、力だと思った。
ステンノーさんの言ってたもう一人の転生者がゲームの知識を持っていたのなら、彼女は効率の良いレベリングや、強くなる方法を知っているはず。
もしかしたら、今の私よりレベルが高いかも知れない。
先ずは、いつ襲撃されても対応出来るぐらいの実力を付けたかった。
丁度ここにいるのは、現実離れした強さを持つ災厄級の魔物達。
修行を付けて貰おうと考えが及ぶのは同然だろう。
「……へえ、強くなるねえ。それは何故かしら?」
エウリュアレさんが詰問する様に訊き返しました。
「……襲い掛かる危機から、お嬢様を護り抜く為です」
「アナタ、その格好を見るにメイドでしょう? 騎士でも無いのに出過ぎた真似ではないかしら? それに、理由に具体性が無いわね」
「ぐ、具体性っていわれても……」
「何で救いたいのかは聞かないわ。アタシが聞きたいのは、どうやって護るかよ。力を付けたとして、アナタのお嬢様の死が、運命に定められている事は変わらないわ」
「……はい。その通りです。だけど、力が無ければその運命から逃げられない……」
「あのねえ。目的と手段が逆になってるわよ。それじゃ、必ず失敗するわ。これまでアナタの力で、そのお嬢様を助けれた事があったかしら?」
私はその言葉に、口を噤みます。
反論のしようが無かったからです。
ゲーム内でも幾ら強くなっても、悪役令嬢を助ける事は出来なかった。
そもそもゲームでは敵キャラである悪役令嬢の味方なんて出来ない。
寧ろ、レベリングを過剰に行った場合には、その強くなったステータスを悪役令嬢に向けるイベントが発生する。
その手で悪役令嬢を殺してしまうルートもあるのだ。
ゲームの中でだけでも、力を付けたぐらいでお嬢様の死が覆らない事は明らかだった。
——では、諦めるか?
何を馬鹿な事を。
これぐらいで折れるぐらいなら、私はそもそも転生しなかっただろうし、今此処にはいない。
「何だか、話が拗れそうだから、ワタクシがエウリュアレの言葉を代弁するわね」
黙って聞いていたステンノーさんが口を挟んだ。
「エウリュアレはこう言いたいのよ。一人の力でダメなら、どうして私達を頼らないのか? とね。私達はアナタを強くする為だけの機械装置なの? ってね。そうでしょう? エウリュアレ?」
そう言って、ステンノーさんはエウリュアレさんに伺うような視線を向けます。
エウリュアレさんはというと、その顔を真っ赤に染めて、照れ臭そうに俯きながら言いました。
「そ、そんなわけないじゃ無い!! アナタが失敗すると思って、口出しをしてみただけだし!! べ、別にお姉が言うみたいに、アナタを心配してとかそういうのじゃ無いからね!!」
「…………えっ?」
あまりものギャップに、言葉が出ませんでした。
さっきまで私をキツく叱ってませんでしたか? この人!
「な、何よ! その凄いものを見ちゃったって顔!?!
反応を見るに、ステンノーさんが言ってた事は合ってると考えて良いのでしょうか?
キツめに問い質したのは、本当は私の事を案じてくれたからであって……その本心は慈愛満ちていた……
も、もしかして。ですよ?
私はふと思い至った、その属性の性格をエウリュアレさんに当て嵌めて分析しました。
——99%合致。
間違いない。
もしかしなくても、エウリュアレさんは俗にいうアレなのかも知れない。
「……も、もしかしてエウリュアレさんてツンデレなんですか……?」
「ち、違うわよ!!!」




