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メドゥーサ討伐(?)①

 メドゥーサと言えば、神話の怪物とされており、ゴルゴーン三姉妹の内、その三女にあたる存在だ。


 その眼に睨まれた者は石化する。というのは、よく聞く彼女の能力の一つだろう。乙女ゲーム『ときめき☆マジカルぱんち』でも、その存在は実装されており、魔物に当て嵌めてランク分けする所の、Sランクに相当する強さがある。


 伝承と違うのは、その能力が睨んだだけで石化させるでは無く、眼から光線を出してそれを浴びれば石化する――というグレードダウンがされている点ぐらいだろうか。


 後は伝承通りの怪物だ。今の私には到底手に負えない相手である。


 Sランクの魔物の討伐の推奨レベルは『60』~とされている。


 その中でも、ゲームでのメドゥーサのレベルは『87』。


 ――なんと、あの魔王より強いのである。今の私のレベルは精々が『40』を超えた程度。


 そこら辺に這う虫が何体募ろうが映画とかで出てくるゴジラを倒せないように。


 私とメドゥーサの間にはそれ程の力量差が広がっている。


 待つのは絶望という名の死のみだ。


 そんな怪物メドゥーサと対面した私の命運は如何なる末路を辿ったか――



「ねえ、回想はもういいじゃない?」


「ええ……ここからが面白い所だったのに」


「別にどうともなってないでしょ? 期待外れの展開に失望させるだけよ」


「ちぇっ。それもそうですよね」


 ――私は、なんともならなかった。


 現れた怪物【メドゥーサ】に殺意は無く、戦闘に発展する事すら無かったのだ。


 彼女は現れた途端、アリスを睨みつけ、石化させるかと思いきや次の瞬間、悠長に喋り出した。まるで兼ねてからの友人の様に。


『ねぇ、アナタ。アリスって名前で合ってるかしら? ワタシ達はアナタが現れるのを待っていたの。さぁ、乗って』


 そう言われて頭がポカンとなった私は、手招きする彼女に従うままその背に乗った。


 そして、今――彼女『メドゥーサ』の背に跨って空を飛び、何処かに向かって移動している訳なのだ。


「座り心地はどうかしら?」


「えっと……すべすべで気持ちいいです」


「それは良かったわ」


 ――そもそも、私は何時からこうして、メドゥーサと友達の様に会話出来るようになったのでしょうか。 


 この状況に何分、何十分経っても頭が追いつく気がしません。


 一体私は何処へ連れていかれるのでしょうか? そこで私はどうなってしまうのでしょうか?


 いいえ、それよりも重要なのは。


 ――私は本当にお嬢様の元へ戻れるのでしょうか?


 疑問だけが頭を過ぎ去っていきます。


「これから行く所がそんなに不安かしら?」


「ええ! 不安ですよ! 誰が好きでメドゥーサと、その姉方の三人が集う場所に行かなきゃならないんですか!!」


「大丈夫よ~。お姉ちゃん達、怒ったら怖いけど基本的には温厚で優しいから」


「そこ態々怒ったら怖いって言う必要ありました!? 私を怖がらせてますよね? 意図的ですよね!? そうですよね!?」


「お、落ち着きなさいな。本当にワタシ達はアナタと話がしたいだけなのよ」


「そ、それをどうやって信じろと!?」


「どう……って、ワタシがアナタを害する気なら最初からこんな周りくどい事しないってアナタが一番良く分かってるでしょ?」


「うっ……そ、それもそうですね。少々感情が高ぶってしまって、冷静じゃなかったです……すみませんでした」


「ええ、ほんとよ。ワタシの背で失禁してしまうんじゃないかって、ずっとヒヤヒヤしてたんだから」


「し、失禁なんてしませんよ!?」


「ふふ、冗談よ。少しは気が楽になったかしら?」


「え、ええ。お陰様で……」


 一先ず、彼女に私を害する気は無いという事は分かりました。


 ――しかし、ゴルゴーン三姉妹の残り二柱に会う事への不安が無くなった訳ではありません。


 一体私はこれからどうなってしまうのでしょうか……


 現在地は分からないままですし、もうずっとメドゥーサの身体に乗って空を飛んでます。


 ――ん? 空を飛んでる!? 蛇なのに!?


 あっ……行けません。下を見たら一気に酔いが……


「め、どぅ、さ……さん。すみません、もうむり……」


「ち、ちょっと!? アリス!! そこで吐いては。ダ、ダメよ!!」





 ――――――おええっっっ―――――



 「ギャアアアアアアアアアア!!!!!」



 (この映像はお見せ出来ません)




メドゥーサのイメージですが、(少し)巨大なナーガを想像して貰えると分かり易いですかね

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