最も恐ろしい事⑤ side. ルルカ
決闘が終わった後、私はアリスに、夕餉の後に私の部屋に来るように言いました。
――話をしたかったのです。
なんの? ……はて、何の話をしようとしたんでしょうか。
……驚きました。もしかして、私は何も考えずに彼女を部屋へお招きしたのでしょうか!? そう思うと、何だか途端に恥ずかしくなり、私は独りでに俯きました。
これは内緒ですよ? 寂しくて呼んだだけなんて知られたら恥ずかしくて恥ずかしくて……
……きっと、私は不安だったのです。ずっと、ずっとずっとです。ふとした瞬間に彼女が居なくなってしまうような気がして。だから、今夜は彼女といたかったのでしょう。
あ、あと。文句を言ってやりたかったんですわ! 勝手にキリカナンと決闘する事態にまで発展させて、私をハラハラさせて……
私にとって、今最も恐ろしい事は、貴女を失ってしまう事ですのよ?
大体、あんなに強いだなんて聞いてないですわ!
きっと最初から勝算があったからキリカナンの提案に乗り気だったと思うのですけど……
そうならそうと、最初からそう私に言って欲しかったですわ!!
――って、あれ? 言ってましたっけ?
…………と、とにかく!! これはお仕置きが必要ですわね。
……そして約束通りに彼女は部屋に来てくれました。しかしその瞬間。私は喜びの余り、怒りも何も全て忘れてしまい、怒りも何もどうでも良くなってしまったのです。
これも何か不思議なアリスパワーなのでしょうか??
しかし、自分でも分からないのですが、何故か私はネグリジェ姿に着替えており、
彼女に寝間着姿を見られた事が途端に恥ずかしくなってしまいました。
だというのに、当のアリスも何故か固まってしまって、私の恥ずかしさを紛らわせる言葉の一つも掛けてくれません。
これでは、私が同衾を誘っているようではないですか。
――違うのですか?
あれ、私。もしかして最初からそのつもりだったのでしょうか?
……ダメです。一度意識したら頭から離れなくて……
もう何が何だか分からなくなってしまった私は、思い切った事を口にしてしまったのです。
「そ、それでね? アリス。今日貴女を呼んだ理由なんだけど……き、今日は私と一緒に寝て欲しいの!!」
☆★
――そうして、今。彼女は私の横で安らかに寝息を立てて寝ています。
「ふふっ。可愛いらしい寝顔ですこと」
思わず彼女の顔を撫でてしまいました。すると、余程くすぐったかったのか、顔を捩らせ、私の手元から離れてしまいます。
しかし、その表情は二ヤついていて、何だか嬉しそうに見えたのです。
――と、それは私の幻覚でしょうか……。
期待し過ぎですね。
――何を?
最近自問自答が増えた気がします。主に、アリスについての事でですが。
私自身、自分のこの症状が良く分かりません。何処か苦しいようで、それでいてとても心地の良い感覚なのです。病気の一種……でしょうか。アリスの事が気になって仕方が無く、アリスの顔を見ると自然と顔が熱くなるんです。
「もう……酷いではありませんか? 自分だけ寝てしまうだなんて。私はこんなにもドキドキして寝れませんのよ?」
今も安らかに眠るアリスを見ていると、何だか嗜虐心が唆られてくるのです。
ぎゅぅっ、と締め付けて。離さないで、そのまま滅茶苦茶に乱してしまいたくて。
――って行けませんわ私ったら何を……今のは、まるで野獣の様でしたわ。
行けません行けません。落ち着くんです。アリスのしていた様に深呼吸をしましょう。
すぅ、はぁ。すぅ、はぁ。
――これ、案外落ち着きますね。流石はアリスの実践していたリラックス法ですわ。
……って、またアリス、アリスとばかり。
「はぁ、本当に私、どうしてしまったのでしょう」
貴女と一緒に寝れて、こんなにも近くでその顔を見る事も出来て。
私は、とても満たされているはずではありませんか。
私は今、誰よりも幸せを感じているではありませんか。
――それなのに。
どうして、こんなにも貴女が起きていない事が寂しいのでしょうか……
「早く起きてください、アリス。その眼で私を見て。その口で、私の名前を呼んで? ええ。心から思いますよ。私は貴女に会えて良かった。本当によかった。貴女と出会えるのなら、私は何度でもやり直すことが出来るでしょう。ですから――
――私から離れていかないで。私を離さないで? ずっと、
ずっ――――――――――――――――――と、一緒よ?」
そして、私は彼女のその艶やかな髪を少し上に掻きあげ、
露わになったその頬に。
――ちゅっ。
初めてを、降り注ぎました。
ご拝読頂きありがとうございます。誤字脱字の方ございましたらご指摘頂けますと幸いです。また、少しでも面白い!と感じて頂けましたら、いいねやブクマ。お星様を頂けますと大変励みになります♪




