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最も恐ろしい事④ side. ルルカ

 アリスの言葉に、キリカナンは顔を真っ赤に染めて怒り立ちました。それを、まるで赤ん坊の様にアリスはあしらっていきます。その後に彼女の口から放たれるキリカナンの恥辱な話は滑稽でした。ですが、私はもう止めてと願うばかりです。これ以上は彼も黙ってはいられないでしょう。今ならまだ私が穏便に済ませますから……


 そう思っても、私は二人の剣幕に割って入れず、ただ傍観するだけでした。そして、アリスが一通りキリカナンの浮気話を吐露し終えると、彼は力が抜けたように一瞬だけ項垂れ、しかし次の瞬間言い訳を始めました。


 その時に、彼はあろうことか私に擁護を求めて来たのです。悪事に対してまるで反省していない様子に、私は思わず嫌悪の視線で卑下しました。


 ですが、それは彼の癇癪に余計火を注いだ形となり、結果として引き返せない最悪の事態を招きました。


 彼が、キリカナンがアリスに向け、付けていた手袋を投げ付けました。


 ――決闘の申し込みです。


 アリスは躊躇いなくそれに手を伸ばします。


「だ、ダメよ! アリス。貴女では彼にはかなわな……」


 しかし、そんな私の忠告を彼女は華麗にいなしました。


 ――これは私の売った喧嘩だからと。安心してお任せください、と。


 だから、私とは無関係だとでも言うのでしょうか。


 きっと、貴女は私の事を思って行動してくれたのでしょう? ですが、貴女のその気遣いが、なんだか己を顧みない危うげなものに思えて、私は胸が苦しいのです。


 貴女が私の事を想ってくれる度に、とても胸が苦しいのです。


 ――なりません。貴女は私の意の外で勝手に動いては……ならないのです。


 私はなにかドス黒い感情が芽生えるのを感じました。


 しかし、彼の黙秘できない発言から、今度はそれがキリカナンの方へと向きます。


「――身を引くなら今の内だぞ。今ならその身体一つで許してやろう」


 その瞬間、私は湧き上がるドロドロとした怒りと共に、彼への恐怖心が薄れていくのを自覚します。彼に害される事への恐怖よりも、アリスを俗な眼で見る事が許せませんでした。アリスを害される恐怖心が勝ったのです。


 しかし、また私の意の外れた事に、アリスが勝手に彼の言葉に反抗する様に彼を煽り立てました。そして、怒り心頭に今度こそ彼は最悪の言葉を告げるのです。


「――もう許してはおけぬ! 貴様との決闘に勝利した際には、貴様のその首を頂こう。今更逃げるとは言うまいな?」


「ええ、当然ですよ。では私が勝った暁には貴方をもう二度と女性を抱けない身体にしてヤりますよ♡」


 それに対し、アリスは当然だ。という風に乗り気で投げられた賽に噛み付いたのです。




 そして、時と場所は移り私達は森の奥の不自然に広がる空地へとやって来ました。


 これから二人の決闘は始まるのです。結局私には二人を止める事は出来ず、私に出来たのは、せめてもの抵抗として、キリカナンが決闘の勝利条件でアリスの命を奪えぬよう、お父様に頼み込む事だけでした。


 そして、お互いへの罵倒を交わし合った後、二人の決闘は始まりました。


 ――ですが、その前に一つだけ気になった事が。


 それは、アリスがキリカナンへ向けて放った言葉の一節に含まれていた単語です。


『うるせーぞ、下半身チー牛。愛しの息子とは別れを済ましてきましたか?』


 彼女はそう言いました。


 私は何だかすごく爽快というか、非常に愉快な気持ちになってふと笑ってしまいましたが、あの時の彼女の『チー牛』という言葉の意味とは一体何だったのでしょう? ……後で彼女に聞いてみるとします。


 遮ってしまい申し訳ありません。話と場面を戻しましょう。


 目前では、二人の決闘が始まっていました。


 先に動いたのは、キリカナンの方です。放った魔法は『雷撃』という下級の雷魔法でした。しかし、人の命を刈り取るには十分な威力を誇った魔法です。


 私は祈る様にアリスの無事を祈りました。


 ――どうか避けて!! と。


 しかし、アリスは避けようとする処か、その場で魔法を唱え始めました。


 (不味い……!!)


 しかし、私の杞憂とは裏腹に、アリスが何かをしたのか、『雷撃』の魔法は彼女に着弾する事無く、アリスは悠々と身傷で立っていました。


 そして、それからの事はただ只管、圧巻の一言に尽きました。


 見た事無い魔法ばかり使うアリスに終始キリカナンは翻弄されたまま、最後はキリカナン自らが放った『雷撃』の魔法によって、彼は倒れアリスの勝利として決着が着いたのです。


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