メイド、ブチギレる③
「ききき、貴様! 何を言っている!? 何を根拠にその様な戯言を!」
「ああー。誤魔化すんですね。でしたら被害者の令嬢の名前を片っ端から上げていきましょうか? ええー。先ず男爵家から、リリス嬢に、ラミア嬢。子爵家からはレイリー嬢とミリム嬢と……」
全員彼の心当たりがある名前の様で、リリス嬢とラミア嬢の名前を挙げた時点から呆然とした顔をしており、 子爵令嬢の名前をあげていってからは蒼然とした顔になっていった。まるで、表情をコロコロとカエル赤ん坊の様である。しかし、お楽しみはこれからだ。
「あれ。お友達のキャルル嬢ともそういう関係でしたよね? さらには伯爵令嬢数名に……その中には御夫人も含まれているのだとか。そして終いには男までもを求め始めた。なんて醜悪なのでしょうか」
そこまで言うと、彼はヨロヨロとよろめきだした。その表情はまるで死神に魂を持っていかれた廃人の様である。開いた口は塞がらない様で、あわわわと泡を吐くかの様な効果音を出している。暫くして現実に戻ってきた彼は真っ先に弁解した。
「ち、違うんだ! 向こうから誘ってきて……って、そうでは無い! 俺は何もしていない。決して誰とも関係を持っていない!その女が言う事は全て嘘だ! き、貴様は俺を……私を信じますよね? ルルカリア公爵令嬢」
そこで共感を求めようとする当たり小物感が拭えない。しかもよりにもよってお嬢様に聞くだなんて。恥を知らないのでしょうか? 何処かのクソ王子にも言ってやりたいですが、この乙女ゲームの攻略対象達は皆、下半身で動いているのでは無いでしょうか? っていうか、そもそも良くこのヤリ〇ン男がゲームで登場が許されましたね。
話を振られたお嬢様はというと、女の敵を卑下する凍り付くかの様な視線をキリカナンに向けていました。どうやら、この場に彼の味方は居ないようです、といっても、私達三人しかいないのでこうなるのは当然ですが。
「ぐッ!……おのれ貴様! メイド風情が口を慎めよ! 先程痛い目を見せてやったというのにまだ懲りないのか! いいだろう。ではお望み通り死の苦痛を味わわせてやろう!」
そう言って、キリカナンは付けていた手袋を外し、こちらに投げ付けました。
――決闘の申し込みです。
私は躊躇なくそれを拾いました。
お嬢様が状況を理解すると、途端に焦った様にそわそわとし出します。
「だ、ダメよ! アリス。 貴女では彼にはかなわな……」
「いいえ、お嬢様。これは私が売った喧嘩です。そして私が買った喧嘩でもあります。いくらお嬢様といえど受理された決闘は覆せないでしょう。ここは安心して私にお任せください」
「ふっ。大口を叩くものだな。平民のお前が貴族の俺に勝てるはずが無いだろう? 身を引くなら今の内だぞ。今ならその身体一つで許してやろう」
「黙れよ節操無し男。お前の脳は下半身にでも付いてるんですか? いいから、早く決闘の受理を認めろよ。それとも何ですか? そちらから逃げると申すなら、今この場で私の靴でも舐めて下さいよ。まぁ、後はその御立派で大切な下半身を切り取らせてもらえば許してやりますよ」
すらすらと出る私の煽り文句に、彼は顔をトマトの様に真っ赤に染めて、まるでヤカンに淹れた水が沸騰した時かの様にピーピーと煩わしい効果音が鳴りそうでした。
「……キサマあッ! 言わせておけば! ぬけぬけとっ! もう許しておけぬ! 貴様との決闘に勝利した際には、その首を頂こう。今更逃げるとは言うまいな?」
「ええ、当然ですよ。では私が勝った暁には貴方をもう二度と女性を抱けない身体にさせてヤりますよ♡」
そう言って可愛いくウィンクして見せる私でした。
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