表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/127

メイド、ブチギレる①

 「貴様。本当に何も知らないのだな?」


 くどくも、キリカナンがお嬢様に聞き返す。アルシェード()の所在についてです。


 しかし、お嬢様はただ呆れる様に返しました。


「ええ。先からそう言っているでしょう」


「……アルシェード様を匿っていたりは?」


「それこそあり得ないでしょう? 私は婚約破棄されて……あ、違いました。()()()私がしたんでしたね」


 キリカナンの怒涛の尋問を全て否定で躱すお嬢様。違和感のある言葉の間違いと、少し変な間がありましたが、私は気にしない事にしました。


 お嬢様がアルシェードの行方等について知らないのは合ってるんでしょうけど、匿っていないというと嘘になるんですよね……


 だって、当人のアルシェード()はこうしてメイドをしている訳ですし。


 本人として目の前で自分の話題がされている事に激しい羞恥と真実を言えない申し訳無さを感じます。


 改めて思うと、お嬢様にまで正体を隠して、こうしてメイドになってまで接触しているのは何だか狡い気がします。お嬢様が私の正体を知れば大いに失望するのは目に見えてるのですが、だからこそ尚更。自分の正体を語るわけには行きません。完全に、嘘つきのクズの所業ですね。


 途端に罪悪感が溢れ出ますが、こうでもしないと禁断症状(オタク暴走)がどうしようも無かったので致し方無しです。


 これは人命救助の一環なのです! 私が死ねば即ちアルシェードの死なんですから。


  なのでしゃーなしです! そう思わせてください。


 先ほどのお嬢様の言葉に反応して、キリカナンが答えました。


「ふむ。それもそうだ。貴様の様な醜悪(ブス)な女の所にアルシェード様が来るはずが無い」


 ——は? 今なんて言いました? この男。お嬢様が醜悪? ブス?


「…………」


 しかし、罵言を言われたお嬢様は言い返す事なく俯くだけでした。


 ……な、なんでお嬢様は何も言い返さないのですか!?


 

 ……震えていらっしゃる? やはりキリカナンが怖いのですか? 本当にどうして?


 ですが、大丈夫。屋敷の前の一悶着では、私がキリカナンに胸倉を掴まれる事になりましたが、あの時は反撃しなかっただけで、本来私が彼に手を出せば一捻りなんです。ここは私にお任せ下さい!


『彼女の無礼は私の失態です』


 しかし、手を出そうとした私を止めたのはあの時私を助けに入ったお嬢様の言葉でした。


 ハッ!? だ、ダメです! 抑えるのです私。ここで怒って反論してもまたお嬢様の手を煩わせてしまうだけ……


 キリカナンの発言を頭の奥底に奉納しながら、私は震え上がる怒気を無理やり呑み込みました。


 すぅ、はぁー。すぅ、はぁー。


 やはり感情を落ち着かせるには深呼吸が一番です。本当は瞑目して瞑想もしたいですが。この場では出来ませんね。


 このままだと私の我慢も限界に達してボロを出してしまいそうなので、早く話題転換してくれないでしょうか。


 私はこの場では何も口に出せないので、只々そう祈るのみです。

 

 そこで、私の祈りが届いたのかキリカナンの方から話題を切り替えてくれる様でした。というか、余りに潔い気がするので初めからこちらが本題だったのでしょうね。


「アルシェード様がこちらにいらしゃらないのは分かった。そこで、本日はもう一つ要件があって来た。ミッドナイト家長女、ルルカリアよ。私は本日、貴様との婚約を打診しに来たのだ」


 ……はっ?


 ——ビキビキッ!


 メイドの血管が音を立てて浮かび上がっていった。


ご拝読頂きありがとうございます。誤字脱字の方ございましたらご指摘頂けますと幸いです。また、少しでも面白い!と感じて頂けましたら、評価、ブックマークを付けて頂けますと励みになります♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ