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魔物暴走③

 小勢の衛兵だけでは対処のしようがないと判断したランリーさんは迅速に領主へ救援要請を送りました。その判断は間違いなく正しいものでした。アナスタシア様もそうですが、エリュンゲルでは判断力の高い人材が揃っているようで感心します。


 しかし、ランリーさんはまだこの件の真の恐ろしさを理解してはいないのでしょう。単なるスタンピードでは無かった事は彼にも分かったのでしょうが、状況はもっと根深く深刻です。


 私は夜営の兵士さんの目を掻いくぐり、森へと入っていきました。広大な森は魔物によって木々を倒され、大地には相変わらず魔物達の足跡が深く刻まれています。薙ぎ倒された木々によって迷路と化した森を抜けると、高さ五メートルほどの巨大な洞穴がありました。


「ここが、タージン炭鉱」


 所在地を示す看板等はありませんでしたが、まるで底無しの泥沼に一万人の人間を集めたかのような魔物の足跡は、ここが魔物暴走の発端地である事を如実に表しているかのようでした。


 私は、徐に大穴へ踏み入れます。二十メートルほど進んだところで、ぱららっと蝙蝠の群れが羽音を鳴らして飛び散っていきました。


「伝令を許してしまいましたか」


 一手遅れをとってしまった事を自覚します。


「まぁ、別にいいですけど。――探知拡大」


 ふむふむ、地下二階までは安全、三階に下級の魔物達、中級以上は四階ですか。


 そして、さらにその下は……


「今回ばかりは私でも手に負えない可能性がありますね……」


 しかし、先に喧嘩を売ってしまった以上、今更敵が私を逃がしてくれるとは思いませんが。とはいえ、逃げる気はさらさらありませんよ。アナスタシア様のご期待には添えないと、それに。


 ――これを放っておけばエリュンゲルが滅びるでしょうから。


 私は注意深く警戒しながら、奥へ奥へと潜っていきました。


 探知で分かっていた事ですが、地下二階までは炭鉱としての役割を持っており、蝙蝠以外の魔物的存在はいませんでした。


「いよいよ地下三階……」


 ここからはモンスターエリアです。何百、いいえ、何千はいますねこれは……


 私の探知できる範囲は精々が半径10キロといった所ですが……それでさえも覆い切れない巨大な魔物の住処。


 まさか、エリュンゲル(この都市)の地下全体が魔物の国だとでも言うのですか……!



 ――アナスタシア様はこの事を?


  

「――シャアアアッッ!!」


「グルるるるぅうああ!!」

 

 おっと、いつの間にか囲まれてしまっていたみたいです。


 ここは敵拠地の真っ只中。呑気に思考をしている時間はありませんでしたねッ!


 蝙蝠の群れ、蛇の群れ、そして、ゴブリンたち。


 襲い掛かる下級の魔物たちを蹴散らしながら、わたしは更に奥深くへと進んでいきました。


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