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誰が為の正義①

 アインスタッド邸のとある一室、お泊り用に貸付けられた部屋にて私は今日見聞きした事について振り返っていました。


 と、その前に現実逃避でふわふわのベッドについてお話させて頂いても構いませんか……なんて、ダメですよね。はいすみません話を戻します。


 アインスタッド公爵が長女、現在は代理でエリュンゲルを統べる領主にして第二王子派閥のトップとも言える婚約者の立場を持つ才女。そして多彩で奇怪なご趣味をお持ちになられる……いいえ、これは関係ありませんね(苦笑い)


『アリス。その広き視点と辣腕を以て、我らが叛逆を手伝っては頂けませんか?』


 そんな彼女が告げた言葉に私は大きな衝撃を受けました。


(というか、あれが驚かずにはいられますか? 一介のメイドに聞かせて良い内容ではないような……いやそもそも、メイドの私に対して厚遇が過ぎませんか? これもお嬢様の専属の文字の恩恵でしょうか? それだけでは無い気もしますが)


 結局アナスタシア嬢は私に選択を迫る事は無く、猶予を与えた上で数日間の観察を以て判断して欲しいと交換条件を提示しました。その為、明日から私はアインスタッド邸で働きながら街、並びに民達の声を聞きながら慎重に決断するつもりです。


 もちろん、メイドのアリスではなく第一王子アルシェードとしての判断をですが。


 とはいっても私一人で決められる事でも無いので第一王子派閥の皆方とよく相談の上で動くべきでしょう。


 問題は彼女の狙いが分からない事で、叛逆に関しても詳しい詳細等は与えられませんでした。


 まぁ、ただのメイド如きに全てを語るとは思えないので、それはそうだという思いですが。


 何にせよ、私が今すべき事は、アナスタシア嬢の真意を探る事です。


 一体叛逆とは何に対しての行いなのか。


 彼女はそもそもどちら、あるいは誰の派閥で味方なのか。


 そして、彼女の正義は誰が為にあるのか。


 その覇道の行く先が独裁者と成り果てるのなら私は止めなくてはなりません。


 それが一度は投げ出したとはいえ、王族としての私の責務ですから。


 しかし、それとは別に私情が許されるのなら、私は彼女とは戦いたくないと思っています。お嬢様の良き友人でもあるようですし、なにより、アナスタシア嬢が悪い方だとは思えません。きっと、あの発言には何かしらの意図があるはずです。私を試している――とかなら平和で良いのですが。


 きっと、冷やかしや冗談の類でも無いのですよね。何せ彼女も三大公爵令嬢としての自覚をお持ちの様ですから。彼女の言動の一つ一つがエリュンゲルの未来を左右するわけで。その重責と意味を彼女は重く理解しているはずです。


 王太子でありながら愚かにも逃げ出した何処かの誰かさんとは違うのですから。逃げずに責任へ立ち向かうその姿はとても立派で美しく、私は自己嫌悪に焼かれてしまいそうになります。


「はぁ」


 そっと溜息を一つ。元々蓄積していた旅の疲れが重なり、その上慎重な思考をし過ぎていた所為で身体共に限界を迎えていました。


 私の体温はふわふわで温かいベッドに包まれ、そのまま眠るように意識を落としました。


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