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第一王子の味方②

 後日、レイヴン伯爵との交渉を終えた私の元に、一通の文が届きました。戦慄しながら中身を開封すると、思ったよりも柔らかい文体に驚きます。


 伯爵とはお嬢様の元にいた時から何度か手紙のやり取りをしていたのですが、堅苦しくよく分からない貴族語の羅列に解読が難航しました。お嬢様に読んで貰えば解読も楽だったのでしょうが、私を第一王子として扱う伯爵の手紙をどうしてもお嬢様に読ませる訳には行かなかったのです。その為、万が一入れ違いでお嬢様の手元に渡ってしまった場合の保険として、伯爵に文体を偽装して貰う様提案していたのですが、結果は上の通り。


 毎回いきなり、『春の風が心地いいこの頃~』とか貴族語の社交辞令で入られても困惑する他ありませんでした。年末に書く年賀状かよ! と突っ込みたくなる気持ちというか、私のあちら側の本性が出そうになるのを抑えるのに必死だった覚えがあります。


 それはさておき、お嬢様に見られる心配のないここでは文体を偽装する必要も無いので、その手紙も幾分か読みやすい物になっていました。


『太陽の如き貴方様の御眼をお汚しする不名誉をどうか御許しくださいませ、第一王子様。先日の件について捜査を終えましたので、ここに報告させて頂きます。先ず唐突な学園への編入についてですが、懸念されていた第二王子様派の介入はありませんでした。学園への編入はひとえに王妃様の貴方様へのご厚意と切望に他なりません。次に、第二王子並びに第三王子様方の動きについてですが――第三王子様は静観。そして、精巧な隠蔽工作が行われているのか、第二王子様の勢力にも目立った動きは見られませんでした。ただし――西が気がかりです。私の眼から見た主観ですが、反逆分子になり得る可能性を孕んでいます。この事に宰相閣下が気付かないはずもありません。どうか、早めの御決断をなされますよう、進言させて頂きます」


 ふむ。前半部分は重要ではないので詳細を省きますが、後半部分を要約すると、西に反乱分子がいるから早めに始末するか、宰相殿に先回りして西の因子を取り込んでしまえ、というところでしょうか。


 西といえば確か、三大公爵家の一つであるアインスタッド家が統治するエリュンゲルと呼ばれる丘陵地帯にある辺境の巨大都市でしたか。叛乱を起こすには些か王国から離れすぎていると思いますが……まぁ、レイヴン伯の情報が間違っているとは思いませんし、きっと何かあるのでしょう。


 そして、レイヴン伯はこれを第一王子が解決すべき問題であるとも示しました。目下第二王子へ対抗するためにも、私が自分側の派閥の強化を図っている事も、伯爵はご存じです。つまり――


 ん? あれ? 第二王子に西のエリュンゲルといえば……


「ああーっ!!」


 思い出しました!! 西のエリュンゲルを統治するアインスタッド公爵。


 その娘さんの、アナスタシア・アインスタッド嬢。


 彼女は正式の場で結ばれた第二王子の婚約者なのです。


ご拝読頂きありがとうございます。誤字脱字の方ございましたらご指摘頂けますと幸いです。また、少しでも面白い!と感じて頂けましたら、いいねやブクマ。お星様を頂けますと大変励みになります♪

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