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④憲法9条の問題点

筆者:次に「憲法9条」について見ていこうと思います。まずは9条1項からです。



質問者:あれ? 世間で言われているのは2項の方では無いんですか?



筆者:まぁ、2項については自衛隊の存在そのものが違憲かどうかと言うことで有名ですからね。

 しかし、1項についても問題点や論点があります。そこからまず見ていきたいと思います。


日本国憲法9条1項:

『日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、

国権の発動たる戦争と、

武力による威嚇又は武力の行使は、

国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。』


 このうち最後の“放棄”の内容が論点になります。

まず、これを質問者さんはこの文言を読んでどういう風に捉えますか?

難しく考えずに、文字通りの解釈で良いです。



質問者;うーん、戦争だけでなく紛争のためにも武力を行使できない――つまり放棄すると言った感じでしょうか?



筆者:そう言う考えを、憲法解釈では「全面放棄説」と言います。

全ての戦闘をすることが出来ないと言った感じの考えですね。


実はそれは「通説」なので質問者さんの正解です。



質問者:やった! 「通説」と言うことは他の説もあるのですか?



筆者:もう一つの解釈としては「限定放棄説」と言うのがあります。

これについては自衛戦争は行うが侵略戦争は行わないと言った解釈です。


 更に「限定放棄説」でも自衛戦争と侵略戦争の区別がしにくいと言った問題があります。


 ちなみに、「自衛」と言うとどういうことまで含まれると思いますか?

 


質問者:やっぱり領土に攻め込まれた時に反撃する感じでしょうか?



筆者:文字から意味するところはそうですよね。


 ですが、現実的には自民党は「敵基地攻撃」も含むと解釈していることが有力です。

更に一部では拡大して「指揮統制機能等」というところまで含めようとしていますね。



質問者:基地は大体わかりますけど、「指揮統制機能」ってどういうところまで行っちゃうんですか?



筆者:そこが問題なんですよね。「敵基地」にしろ「指揮統制機能」は日本国内に存在しないですよね。

 他国領土にあるものを攻撃することが果たして“戦力を放棄”に当たるとはとても思えません。



質問者:そう言う状況になったらもう終わりのような気もします……。



筆者:そうなると、全面戦争に巻き込まれる危険性があります。

 ですから、そう言う曖昧な状況の「限定放棄説」よりも分かりやすい「全面放棄説」と言うのが法学会では優位に立っているわけです。



質問者:なるほどそう言うことになっていってるんですね。



筆者:そうなると、9条1項の時点から「自衛隊は戦うことが違憲状態」と言うことなんですね。


 9条1項のうち「国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」というところを「日本の国土を防衛する以外では永久にこれを放棄する」と言う感じが良い落としどころかなと思います。

 限定放棄のうち敵基地に少し足をかけつつ相手国を侵略することは出来ないでしょう。



質問者:なるほど、これなら少し現実に見合っていますね。



筆者:話題の中核に当たる9条2項も見ていきます。

 9条2項:

『前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。

国の交戦権は、これを認めない。』


 質問者さんはこれをお読みになって自衛隊についてどういう風に解釈されますか?



質問者:ちょっと「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」

という内容だと自衛隊の存在はかなり厳しいように思えます……。



筆者:そうですよねぇ。

実際に自衛隊について、合憲と言う憲法学者は少なく、国政政党の中には自衛隊を違憲と主張する党もありますからね。


 ちなみに、第二次安倍政権時代の自衛隊の解釈については、

 「戦力は、「自衛のために必要な最小限度の実力を超えるものを指す」というもの」

 「日本を防衛するための必要最小限度の実力組織であり憲法に違反するものではない」

 ということらしいです。


 どの道、読んでいてかなり苦しい解釈であることには間違いないです。



質問者:ちなみに、裁判所は自衛隊についてどういう判断をしているのですか?



筆者:1973年に自衛隊基地の建設をめぐるいわゆる「長沼ナイキ基地訴訟」では、

札幌地方裁判所が自衛隊は憲法に違反するという判断を示しました。

ですが、2審の札幌高等裁判所は、「司法審査の範囲外」として、憲法判断を示さないまま原告の訴えを退けました。

 

 最高裁においては自衛隊の存在については「統治行為論」を理由に明確な判断を下してはいないんです。

簡単に言うと、「司法の管轄外」だと言っているわけなんです。

だから政府や国会での議論が重要視されているんですね。


 まぁ、逆に言うと司法のトップである最高裁に「違憲」だと言われたこともないという

「何とも微妙な立場」で自衛隊は存在しているわけです。


 自衛隊の方々にとっては憲法裁判所が設置されていないことは“良かった”という見方も出来なくは無いですがね。



質問者:なるほど、つまり政府の「苦しい言い訳」みたいな感じなのが自衛隊の存続している根拠になっているわけですね?



筆者:そうなんです。

だから、自衛隊の方々のモチベーションアップのためなどにも9条2項を改正しよう! と言う流れに繋がっているわけなんですね。



質問者:ですが、裁判所で違憲ではない以上、あまり大したことが無い問題のように思えるのですが……。



筆者:確かに司法的にはそうかもしれません。

ただ、問題なのは、支持を受けた学説を採用せず、政府が独自に解釈していることです。


憲法とは、①でも書きましたが、“行政権を縛る鎖”ですから、時の政府が独自に憲法を解釈することは許されないという考えもあります。

法学的な根本問題に抵触しているという状況なんですね。



質問者:なるほど、憲法の根本原則に違反するんですね……。



筆者:更に、国際的な問題、特に米軍に関する問題があります。


 実質的に日本は自衛隊の力と言うよりも“米軍がいることによる抑止力”と言う点が戦争が起きていない最大の要因だと思うんですよね。

 


 ※米軍についてはちなみに最高裁判所は1959年に出した判決。

いわゆる「砂川事件」について、「外国の軍隊は、たとえ日本に駐留するとしても憲法9条が定める『戦力』には当たらない」という判断を示しています。



質問者:そうなると、アメリカとの関係で何かあるのですか?



筆者:トランプ前大統領は日本に対して駐留費用をもっと請求してきたりしています。

その額は現在の5倍とも10倍とも言われています。

 

 まぁ、日本としては“米軍を守る義務”というのが“専守防衛”の状態だと発生しませんので、「もっと金を出せ!」というアメリカの言い分も分からなくは無いです。


 また、この様に一方的に“アメリカに軍事力を預けている”と言う状況は『マスコミは全てがプロパガンダ! ニュースを見てはいけない3つの理由』https://ncode.syosetu.com/n8344hq/の④で書いたのですが、アメリカに対して非常に不利な外交を強いられることになります。


 また、国防の分野以外にも問題はあります。


 年次改革要望書です。1993年の宮沢・クリントンの日米首脳会談で、日米が互いの要望を伝える文書を交換するようになりました。

 アメリカからの要望に従い、日本は郵政民営化や裁判員裁判、労働者派遣法改正などを実現してきました。

 それに対して日本のアメリカへの要望は実行されません。


 この様に憲法9条改正は真の“戦後からの脱却”や“本当の独立“を図るためにも必要なことだと思います。




質問者:そう言ったことが9条改正することの重要性なわけですね。

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