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③日本の緊急事態条項は「安全装置」について議論がされていない

 誤解しないで頂きたいのは。僕自身は緊急事態条項そのものを置くことについては反対しません。

 

 しかし、この「緊急事態条項」は国民の権利に関する非常に繊細な問題であり、大した議論の時間も無く追加されてしまうことにかなり危機感を覚えているのです。


質問者:具体的にどのようなことが緊急事態条項に関して問題があるのですか?



筆者:憲法制定時の金森徳次郎大臣(1946年)は『緊急勅令は国民意思を無視できる制度ともいえる。ないことが望ましい。』と発言しています。

 

つまり人権無視がなされる可能性もあるのです。

実際に2012年案の99条1項にも

『当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。』とありますからね。



質問者:なるほど、それでこの問題は簡単では無いのですね。



筆者:さらに自民党原案ではこの“緊急事態”であることは具体的に何なのか示していません。

つまり、総合的に見たら大したことが無い事でも“緊急事態”として“認定“してしまえばいともたやすく発動できてしまう訳です。



質問者:それは問題だと思いますけど、実際にそんなことがあり得るのですか?



筆者:カナダの感染症対策に抗議をしたトラックを排除するということで2022年2月に「緊急事態法適用」がなされました。

 しかし、このデモは橋1つを封鎖したことは問題であっても、実際にカナダに入国できなかったわけでも都市封鎖をしたわけでもありません。


 The Liberty Web2022年3月11日の『カナダの緊急事態法発動は違憲だった!? 自由への戦いは続く 日本も「ワクチン全体主義」に終止符を打つべき』より。


 『カナダ安全情報局(CSIS)は、この(緊急事態法発動の)「脅威」を明確に定義している。「スパイ行為」「国益を損なうような、内密または欺瞞的である、外国の影響を受けた活動」「イデオロギー的目的を達成するための、深刻な暴力行為」「カナダ憲法に基づく政治体制を破壊しようとする違法行為」などがそれに当たるとされ、一方で「合法的な擁護や抗議は含まれない」と明記されている。』

 

 と言うことで問題が浮上しています。


※この記事はちなみに一般大衆新聞には探してもありませんでした。筆者はどの宗教団体にも属していません



質問者:カナダでは緊急事態の内容が明確にされているにも関わらず問題が起きてしまったんですね……。



筆者:ええ、「緊急事態」としての内容定めなければ自由自在に発動が可能です。

 カナダは今後、「緊急事態条項適用」に相応しいかどうか国会などで追及されていくことになるでしょう。

 しかし、日本の今の原案ですと、国に対する反抗意思が高い団体に対して適用することはカナダよりも容易になります。

 何せ“緊急事態”だと認めてしまえば国の思うがままですからね。

 


質問者:ですが、緊急事態法が無ければ感染症や大地震などが来た際に対応が出来なくなってしまうのではないでしょうか?



筆者:それについては個別法で具体的に定めればいいと思います。

 ただ、その場合は行政権の拡張は緊急事態条項設置よりは制限されてしまいますがね。


 また自動的に国会議員の任期延長に関しても参議院が6年で3年おきに半分改選ですから参議院を活かすときだと思います。


 いずれにしても、一極的な権力集中は戦前の日本やヒトラー下のドイツなどと言った状況と共通する状況を作り出してしまいます。


 そのために緊急事態条項は「安全装置」が無ければ暴発してしまう恐れがあるので慎重な議論が必要と僕は考えます。



質問者:緊急事態条項がある他の国では一体どのような「安全装置」としての措置が取られているんですか?



筆者:カナダのように具体的な事項が定められていたり、

憲法に関する事案のみを取り扱う「憲法裁判所」が存在している国もあります。


 韓国ではちなみに憲法裁判所が作られるまでの間1949年から80年まで緊急事態条項が乱発されたという経緯があります。


憲法裁判所や具体的な個別法でなくても代替えの“安全装置“として何か作らないと危険と言えます。



質問者:なるほど、だからよりそこら辺までの議論が必要なのですね……・

 ちなみに憲法裁判所は何故設置する必要があるのでしょうか? 

普通の裁判所ではダメなのですか?



筆者:憲法に関することでも“立法権や行政権を侵害することが出来ない”とした判決があります。

 昭和35年6月8日最高裁判決のいわゆる「苫米地事件」では「衆議院の解散」については行政権に裁量があるために「法律の争訟」に当たらないとして訴えを退けています。


これはかなり古い判例なので今現在の憲法解釈としては何とも言えませんが、この延長線上で「緊急事態条項」につきましても「法律上の争訟に当たらない」と裁判所に言われてしまい裁判すらされない可能性があるんですね。


 しかし、憲法裁判所だと憲法に規定されていることでしたら審判することが可能です。

そのために安全装置として機能する可能性が普通の裁判所よりは遥かにあるのです。



質問者:なるほど、こういったことまで理解されている方は少なさそうですね……。



筆者:そうなんですね。また、中国で最近感染症対策のためにロックダウンが行使されましたが、そのやり方が適切だったのかは疑問です。


 5月17日 テレ朝NEWSより

『上海当局「ゼロコロナ達成」 その代償は“新車販売ゼロ”など深刻』

『50日以上ロックダウンが続く中国・上海が「ゼロコロナ」を達成です。

上海市当局は17日、「社会面ゼロコロナを達成した」と発表しました。

 社会面ゼロコロナとは、当局が重点的に閉鎖管理している地区以外での新規感染者が3日連続でゼロになることを指します。

 一方、厳しいロックダウンで経済に深刻な影響が出ています。

 「上海市自動車販売業協会」によりますと、4月の新車販売台数は「ゼロ」だったということです。

 協会は「販売店の資金繰りが破綻する可能性がある」と指摘しています。

 中国政府は自動車の販売促進政策を行うと表明しました。』


 このように経済的ダメージはロックダウンとゼロコロナ政策でより深刻になりました。


 中国は(数値上は少なくとも)経済成長をしている国ですからまだ良いですが、

日本は未だにゼロ成長が続いていますからね。

 

「緊急事態条項」を悪意が無いまでも乱発して日本経済に回復が不能なほどのダメージを受けてしまう可能性はあります。


 今の日本のやり方も中国に続くぐらい世界的に見たら“遅れた対応”のような気がしますから、あり得ない話では無いのです。

早いところで終息宣言が出ている国もありますからね。



質問者:つまりは、発動できる行政の権能の上限を上げることが必ずしもいいとは限らない。と言うことですね?



筆者:そう言うことになります。

日本の感染症対策は利権優先主義若しくは高齢者優先主義のように思えます。

※詳しくは「なぜ政治家は国民のために働かないのか?」https://ncode.syosetu.com/n4530ho/をご覧ください。


ですから、それらの人たちのために、「人々の命を守る」などと言った

「見栄えだけは良い大義名分」を掲げ、

いとも容易く一般国民を犠牲にする「緊急事態条項適用」ということは容易に想像ができるのです。



質問者:なるほど……確かに、これは想像以上に大きな問題のようですね……。

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