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②緊急事態条項はなぜ必要性が叫ばれているのか?

質問者:緊急事態条項と言うのはここ最近出てきた論点のようなのですが、

一体なぜ導入されようとしているのでしょうか?



筆者:まず、「なぜ必要性が議論されているのか」ということと「一体発動された場合どうなるのか」について触れていこうと思います。

 次に、緊急事態宣言の問題点についても触れていきます。


 まず最初に、緊急事態条項の必要性が議論されるようになったのは感染症の問題とロシアとウクライナの問題です。

また、日本は地震が頻発することからも、“緊急事態”と言える状況が起きる可能性が増えていっているためと言えます。

 


質問者:なるほど、昨今の問題の多くがそこに繋がっているわけですね。

 

ですが、感染症に対しては今現在の法案でも「緊急事態宣言」がなされていたじゃないですか? 

一体全体何がどう違うんですか?



筆者:今現在においては「外出自粛要請」を出したとしても罰則が無く、法的拘束力が薄いんですね。


 それに対して、緊急事態条項に基づく緊急事態宣言は「指示」や「命令」と言った「要請」よりも強い措置を行うことが可能になります。

 これはいわゆる「ロックダウン」と言った「外出禁止命令」もそれに含まれます。



質問者:しかし、「外出自粛要請」では何が問題になったんでしょうか? 

あれでも感染者は減っていたように思えるのですが……。



筆者:現行の特措法に基づく「緊急事態宣言」については罰則が無いことを良いことに“自粛をする会社”と“自粛をしない会社”とで分かれてしまったんですね。


 特に大きなところは知名度もあって自粛をしたのですが、

マイナーなところであればあるほど“自粛をする補償金より売り上げ重視”ということで営業を行いました。


 その結果、営業をしているところにお客さんが殺到してしまい、かえって感染拡大を広げてしまったのではないか? と言う話もありました。

 しかし、それを罰則が無いために“会社名の公表”程度の措置にとどまりました。

 それにより、営業を自粛し始めた店舗もあったのですが、「ここは営業をしているのか」と国民が殺到するといった悪循環もありました。


 もっとも、この「緊急事態宣言」効果があったかどうかについては僕は専門家では無いのでこれ以上言及するつもりはありませんがね。



質問者:なるほど、「抜け駆けして営業する」ことがあるのはいけませんね。



筆者:また、新型インフルエンザ等対策特別措置法5条では

『国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該新型インフルエンザ等対策を実施するため必要最小限度のものでなければならない』

 とあります。


 現行の憲法解釈と特措法の解釈に則りますと、まず最も人権制約が小さい規制をとり、規制に効果がなければさらに強い効果の規制をとるというやり方になります。


 このように対策を小出しにしていくので、「緊急事態」に対する対策としての効果が出てこない若しくは手遅れになることが懸念されているわけなんですね。



質問者:それで緊急事態条項の必要性が言われているわけなのですね。

緊急事態条項が制定されて、発動すると具体的にどうなるのですか?



筆者:やはり、“緊急事態”と認められれば迅速に対応しなければいけません。

一般的な緊急事態条項では「内閣は法律と同一の効力を有する政令(緊急政令)を制定する」ことができます。


 これにより、国会審議を抜きに、内閣が人権制約をはじめ「立法権」を行使できます。

政令の管轄事項に制限はなく「何でもできる」ことになります。

三権分立や国会中心主義などの原則が停止し、首相と内閣に権限が集中します。


 自民党は緊急事態対応について、現行憲法に規定がないとして新たに98条、99条を創設しようとしています。その内容の「2012年案」ではありますが一部重要なところを掲載しておきます。



 第98条(緊急事態の宣言)

 1 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。

 2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。

 3 (一部略)また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。



 第99条(緊急事態の宣言の効果)

 1 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。


 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。

 4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。


 

 まだ確定案では無いために何とも言えないのですが、

通常考えられる“内閣の権限強化”、“国民へは公共の福祉による内閣の命令に従う義務”、“国会議員の任期延長“などの要素は全て含まれていると言えます。



 ※98条、99条の新条文を創設するタイプだけで無く、現行ある64条や73条に追加する案もあります。今回はより過激な条文創設の方を採用させていただきました。



質問者:なるほど、普段の憲法の三権分立が脅かされる可能性があるから“特別に規定”する必要性があるのですね。



筆者:そういうことです。そのために、今よりも地震や感染症対策に対して強硬な手段を迅速に行うことが出来るのです。



質問者:うーん、そうなると。緊急事態条項が創設されることにメリットしか感じないのですが……。



筆者:まぁ、良い面だけ見ればそうかもしれません。


 ですが、事はそう簡単ではありません。あまり議論されていない“懸念点”が存在しています。

次の項目では“緊急事態条項”のあまり議論されていない懸念点について触れていこうと思います。


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