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故郷を追われた元王女は宇宙艦隊の夢を見るか?  作者: 伊藤 詩雪
episode 1 銀河の汚点がまた一ページ
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首謀者はどこ?

 政府の中枢組織を制圧してから約1時間。

 サブリナ艦長は上陸部隊に状況を確認した。


「ご苦労様。首謀者はわかった?」

「それが各責任者は全部押さえたんですが、奴ら自分がやったんじゃねぇ、の一言で。帳簿類もみつかりやせん。確かに小惑星の話は知ってるようでやしたが、ありゃあ叩いても何にも出てきそうにありやせんぜ」


 あっ! 今度は口調がそのまんまだ。


「それだとあまり時間をかけていると都市機能にも問題が出てくるわね」

「へい」

「そう。ちょっと待って」

「へい」


 とてもまともな連中の言い草とは思えない口調に動じる事なく答えるサブリナ艦長素敵!

 ふむふむ、とちょっと考えたのち。


「それでジルは何て言ってる」

ジル艦長(あねご)は『逃げられた』った大騒ぎしてやすが、どうも最初から悪党の親玉は、制圧した場所にゃあ居なかったんじゃねーですかねぇ。言い訳するわけじゃあありやせんが、一応作戦は予定通りこなしやしたよ。ですが、あっしが見たところふん(じば)った連中はどうも悪事を企むようなタマにゃあ見えなかったですぜ」


 それを聞くとサブリナ艦長は、首を傾げて。


「どうも影で糸を弾いてる別の誰かがいるって言うのね?」

「へい。まあ、見つけられなかったのはアッシらのせいかも知れやせんし、もう少し深く探ってみるのもやぶさかじゃねーですが、どうします?」

「ああ、別にあなた達の力を疑ってはいないわ。そうね……いいわ。お疲れ様。あとは三番艦のケリーの部隊にやらせるわ。引き継ぎまでは、そこに止まってもらえる」

「もちろんでさあ! 後詰めはケリー艦長(お嬢)に? それなら問題ありやせんわ! 安心して任せられます。ほいじゃ、引き継ぎ次第引き上げさせてもらいますわ!」


 上陸部隊からの通信は終了する。

 すると三番艦ペチコートのハッチが開き、上陸艇が発進し始めた。

 まだ、サブリナ艦長がケリー艦長に指示をする前にだ。


「ケリー、早いわね。通信は聞いていた?」

「はい。三番艦ペチコートは上陸艦7隻を降下開始しました」

「7隻? 随分多いわね」

「引き継ぎには4隻を使う予定です。あとはちょっと調べてみたいところがあって……サブリナ艦長。いかがでしょうか?」

「あら、もう何か掴んだの? 流石ね。私も探りを入れて貰おうと思っていたところだからよろしく。交信終了」


 艦長、何を頼むつもりだったんだろう?

 そう思っていたら、しばらくして三番艦ペチコートから連絡が入る。


「サブリナ艦長。ケリーです」

「ああ、ケリー。その後、何かわかった?」

「はい。発進した上陸艇で政府の主要組織を全部制圧した時に変だな、って思ったことがあって」

「何かしら」

「政府組織のビルの近くには必ず、古ぼけたようなビルが隣接してるんです。普通はそういう政府の中枢を担う建物の近くには、比較的作りの言いビルが揃ってるものなんですけど」

「でも、歴史あるビルってこともあるわよね……まあ、いいわ。それで?」

「はい。それも考えたんですけど、そういうビルが全ての中枢の近くに()()()()って言うのが謎だったので、引き継ぎをしていない部隊に内偵してもらったんです」

「何か出てきた?」

「はい。小惑星帯を強襲したのは首謀者の配下の者ですね。不正に得た鉱物資源に関する裏帳簿がごっそりと」

「お手柄ね。もうそこまで辿り着いたの。それで首謀者の名前は」

「おそらく総務省の補佐官コーズ・ルイかと」

「首相でも大統領でもないってことは裏でずっと権力を握ってきたのね」

「はい。それで、分かったことがあるんですけど。別働の艦隊がいます。どこにいるかわからないので、強襲に備えて艦隊戦の準備をして下さい。軌道上で広範囲に探知網を展開していますから近くにはいません。過去の艦隊駐留記録から予測して見ると、まだ第四惑星付近にいると思うのでそれほど急がなくても大丈夫だと思います。そこにルイがいるかどうかは不明ですが、アシュリーズを狙ってくるのは確実です」

「わかったわ。地上部隊を撤収させて、3番艦(ペチコート)も迎撃体制を整えてちょうだい。調査しても、もう何も出ないと思うから」

「了解です」


 さっすが、ケリーちゃん。

 引き継いだだけでなく、たった数時間で政府の黒幕がにいることを突き止めてしまった。


 仕事が早くて完璧だ!


 アシュリーズ艦隊は第二惑星の軌道上を離れ、現在は周辺警戒しながら航行中。

 現在、我が艦隊は戦艦3隻、巡洋艦3隻、駆逐艦9隻の合計15隻を展開している。


 戦艦3隻だけじゃなかったのか、って?


 それがこのアシュリーズ宇宙艦隊の特徴で、普段は戦艦だけだけどいざ艦隊戦となれば、他の艦艇を出すことができるのです。

 そんなものどこに隠し持っていたかというと、戦艦の中であるらしい。

 戦艦の6割ほどの大きさがある巡洋艦をどこにどうやってしまっているのかは、まだ私も知らない。

 船底のハッチの大きさじゃあ、開いたとしても駆逐艦も出て来れないと思う。


 ちなみに戦艦以外の船は全てAI制御の無人艦。

 そのどれもが超高性能でこの第二惑星の戦闘機みたいに、乗っ取られるのが怖くて出せないなんてことは絶対ない!

 作戦もどこに行けとか何を使えとかは指示しないから、自分の艦隊の一隻一隻がどこにいく予定かはさっぱりわからない。

 それなのに、適切に作戦を遂行できると言うのだから、訳がわからない。


「敵艦隊補足しました! 識別信号確認! 旗艦空母ダブルウィッシュボーン、戦艦ストラット、戦艦マクファーソン、その他護衛艦リーフスプリング以下約20隻が、星系天頂方向に展開しています!」

「事前に取得した情報よりだいぶ大きいわね」

「はい。識別信号に登録されている船籍概要とはまるで合いません」

「実際の戦力は?」

「火力はそこそこですが、装甲とスピードは全く問題になりません」

「OK。それなら、防衛戦にしたいところだけど時間を稼がれると面倒か……」


 サブリナ艦長はオーリング通信士長の報告を聞いて、2番艦、3番艦に回線を繋ぐ。


「ジル、ケリー。敵の戦力は火力はそこそこだけどそのほかは問題にならない。下手に撃ち合いにして被害を出すのは嫌だから防衛戦にするのが定跡だけど、時間をかけてるうちに小惑星帯の坑夫たちを人質に取られるのは避けたいの。何か案はある?」

「高速機動で陣形を乱してから撃ち合えば問題ないでしょ? どうせ船速がないんだから、先に沈めちゃえば大丈夫よ」

「ジル。そんなこと言って前回の仕事、被弾した二番艦(キャミソール)の修理で赤字になったの忘れてない?」

「あれは!…………もう、あんなドジ踏まないわよ」

「サブリナ艦長。私も速攻で落とすのは賛成です。でも、高速機動中に別動隊を小惑星に向かわせておきたいと思うのですが」

「そうね。それは悪くない。ただし、それで万全とは言えない。敵はすでに小惑星帯にいると考えると単に別動体を急行させても、気付かれて人質に取られることが考えられるわ」


 すると、その回線に割り込みが入った。

 キャサリン・マックスウェル教授だ。


「サブリナ。もし、別働隊を動かすなら、ちょっと面白い装備があるんだけど」

「キャシー、まだ懲りてないの? 昨日、謹慎させたはずなんだけど」

「ジルだって謹慎中のはずなのに指揮取ってるじゃない?」

「それは……まあ、いいわ。その面白い装備、って言うのは何?」

「おとといの降下作戦で海賊船バージョンをお披露目したじゃない? 実は病院船バージョンもあるのよー。しかもこの前は上陸部隊の服と装備しかいじれなかったけど、こっちは船丸ごと改装済みなの〜 ()えるわよ〜」


 今度は病院船のコスプレで戦うらしい。

 でも、そんなことしても相手はアシュリーズから来たと知ったら攻撃してくるだろうし、どうするつもりなんだろう?

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