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第八話

『さて、これからどうする?』

「あぁ、どうするかなぁ。とりあえず隣の国にでも行ってみるか……」

『隣……、ロザンヴィークか? ガイアスか?』

「えー……どっちが評判良いんだ?」

『我も人間の世界はよくは知らん。ガイアスは比較的平和な国だと聞いたことはある。ロザンヴィークはほとんど噂を聞いたことがないな。閉鎖的な国のようだ』

「うーん、じゃあとりあえずはガイアスかな」

『無難だろうな。それにドルネドが他国へ進軍すると言っていたのは、恐らくガイアスのことだろう』

「えっ!!」

『ロザンヴィークは謎が多い分、攻め込むには不利だろうからな。過去に何度か戦争を起こそうとしていたようだが、全てドルネドからガイアスに対して仕掛けていた気がする』

「そ、そんな好戦的な国だったんだな……」

『だから西へ行けと言ったのだ』


 ショーゴを見たが、罰が悪そうに目を逸らした。

 もう今さら言っても無駄だ。



 ガイアスへ向かう途中、何度か魔物と遭遇した。

 最近明らかに魔物の数が増えている。しかも魔物自体の強さも上がっている。

 ついこの間までは数も少なく、弱い魔物ばかりだったのに。

 何かが起こっている?


 戦う回数が増え、ショーゴの魔力も上がっていった。従属契約をしたおかげでショーゴとの連携も取りやすくなり、格段に戦いやすくなった。


 ガイアスに入り、一番近くの街ラナカに着いた。

 ラナカはレガルドよりも大きく活気のある街だった。


「しばらくこの街で様子を見てみるか~」

『ドルネドか?』

「あぁ、戦争なんてして欲しくないしなぁ。何とか止められないかな、と。まあ、俺なんかに何が出来るんだ、って話だけど」


 そう言いながらショーゴは笑って頭を掻いた。


 そんなもの放っておけば良いものを。あんな目に遭っておきながら……。


『お人好しだな……』

「んー? だって戦争って関係ない人がいっぱい死ぬだろ。命を懸けて戦うのは何も知らない下っ端だし……それにガイアスからしたらいい迷惑だろうしな」


 ショーゴはニッと笑った。

 こうなるかとは思ったが……。ショーゴの考えることが読めるようになってきたな……良いのやら悪いのやら……溜め息を吐いた。



 しばらくガイアスに滞在していたが、今日までドルネドが攻めて来たという話は聞かない。

 それどころかドルネドが攻めて来そうだ、という話すら聞かない。どうなっている?

 全く噂話すら聞かないとはな。


 ある日飯屋で初めてドルネドという言葉が聞こえてきた。


「おい!」

『あぁ』


 数週間経ってようやく聞こえた話だ。ショーゴは直接その話をしているテーブルに向かった。

 そのテーブルで食事をしていた男らは驚いたが、話を聞きたいと伝えると共にテーブルに着くことを許した。


 男らはドルネドから来たという行商から聞いただけだが……、と前置きし話し始めた。


「数日前にドルネドの街、レガルド近くに大量の魔物が発生したらしくてな。街は壊滅、国は魔物討伐に魔導士やら兵士を派遣したらしいが全滅。その後魔物らは手当たり次第街を襲い壊滅させ、王宮近くまでやってきたらしい。王宮は籠城状態らしいが時間の問題だろう、ってよ」

「な、なんだよそれ……本当に!?」

「いや、だから、俺たちも聞いただけだから」


 実際目にした訳じゃないから分からない、と男たちは言った。


「しかし恐ろしい話だよな。もしこのままその魔物たちがガイアスにも攻め込んで来たらどうなるんだ?」


 一人の男が呟いた。


「そうだよな……ないとは言い切れないからな……どうなるんだ…」


 しん、と静まり返った。

 ショーゴは……


「話聞かせてくれて、ありがとう」

「お、おう」


 ショーゴは男たちに礼をし店を出た。


『行くつもりか?』

「…………」


 先を歩くショーゴはピタッと足を止めた。


「やっぱりロウにはバレるな」


 振り返り笑った。

 予想通りで深い溜め息が出る。


『お前が行ってもそんな数の魔物では助けられるとは思えんが』

「うん。でも黙って何もしないってのも、俺には出来ない」

『だろうな……。我が無理だと判断したら引き摺ってでも退却するぞ』

「分かった。よろしくな」


 ショーゴはニッと笑った。しまった。これでは限界まで戦っても良いと言ったようなものだな。

 こんなはずでは……ショーゴのペースに巻き込まれているな……。

 はぁぁ、溜め息ばかりだ……。


 次の日、ドルネドに戻った。

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