第六話
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心配……、我はこんな奴の心配なんかしているのか? そんな訳はない。我は仲間などいない。心配という感情すら抱いたことはない。
『心配などしていない。我がそれを手伝わされるのかと思っただけだ』
「ハハ、まあロウには手伝ってもらうつもりだな」
ショーゴは声を上げて笑った。
何だか面倒な奴と関わってしまったな……。
それから毎日魔物討伐やら魔獣狩りに付き合わされた。
その度に入る収入は全て老婆に。
ショーゴの手元には僅かな金しかなかった。
いくらなんでも魔獣である我にも分かる程の搾取ぶりだ。
老婆が求める魔獣も段々と強い奴ばかりになっていき、魔物も徐々に数も増え強い魔物となっていった。
魔物討伐は王宮からも依頼として入るようになり、他国にまで遠征に赴くはめになり、王宮からも利用されているようだった。
そのため我の協力だけでは追い付かないことも多くなり、ショーゴは怪我をすることが増えた。
目に見えて明らかにショーゴは疲弊していった。瞳には生気がなくなり、笑うことがなくなっていた。
それでもショーゴは老婆から頼まれる依頼を断ることはなかった。
そんなある日老婆から言われた。王宮から他国へ進軍のため魔導士として参加して欲しいと依頼が来た、と。
「え……、他国へ進軍?」
「そうだよ。これに加われば、相当な金額が給料として支払われるらしいよ」
老婆は満面の笑みで言った。
ショーゴは青ざめている。
「い、嫌だ……進軍って、戦争ってことだろ?人間を殺すってことだろ?魔物や魔獣だって、殺すのは辛い……でも人間なんかなおさら殺せない……」
初めて老婆の依頼を拒否した。
ショーゴは俯きながら震える声で小さく言った。
「何を馬鹿なことを言ってるんだ! お前は誰のおかげで今こうして生きていられると思ってるんだい!?」
老婆が今までにない、低い声で激しく怒鳴った。
その顔は悪鬼のような形相だ。
ショーゴは小さく震えた。
「お前は行くんだよ! 分かったか! 逆らうことは許さない!」
老婆はそう吐き捨てると扉を叩き付けるように閉め出て行った。
『ショーゴ』
「あ、あぁ、ロウ」
顔を上げたショーゴは泣きそうな寂しそうな、複雑な表情だった。
「お前はもう行け」
『?』
「もう恩返しなら十分受け取ったよ。お前まで人間の戦争に付き合う必要はない。もう自由になって良いぞ」
そう言うと、ショーゴは部屋の窓を開けた。
「ばあちゃんに見付からないよう、窓から行けよ。さよならだ。今まで楽しかったよ、ありがとな」
ショーゴは少しだけ笑った。
『そなたはどうするのだ?』
「俺は行くよ」
『戦争にか? あんなに嫌がっていたのにか?』
初めて老婆に拒絶を突き付けていた。それ程嫌だったのだろう。なのに行くのか。
「仕方ないだろ! ばあちゃんには世話になったし……」
この異様な執着。何か違和感がある。なんだ。
部屋を見渡してみるが魔力の気配は感じない。
さらに集中してみる。
深く深く集中すると……微かな違和感を感じた。ベッドの辺りに何かを感じる。
ベッド周辺を探ると、ベッドの下、普段はベッドで隠れて目につかない床に何かが貼ってある。
あれは……
『ショーゴ、ベッドの下に何か微量の魔力を感じる』
「え? ベッドの下?」
ショーゴはベッドを持ち上げ起こすと、床にあるものを見た。
魔法陣が書かれた小さな紙だ。
「こ、これは……」
『なんだこれは?』
「他人の心を操る魔法……ばあちゃんの本で一度だけ見たことがある」
『他人の心を操る……ショーゴも操られていたということか……』
これだけ老婆に逆らえないのは何かあると思ったが、やはり魔法で逆らえないようにされていたのか……。
「そんな……じゃあばあちゃんを信じていた心も偽物……?」
『世話になったから、という心はショーゴのものだろう? 全てが偽りではないはずだ』
「ハハ、やっぱりお前は優しい奴だな」
そう言ったショーゴは笑いながら涙を落とした。