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銀狼ルナの心情~異世界で勇者になりましたが引きこもります番外編  作者: きゆり
二章 現代編

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第四十三話

 翼の生えた人型の魔物。ガルーダのような魔物は今までの魔物と違うようだ。どうも魔物同士が意識疎通をしている。


 今までの魔物は群れでいても、個々が自由な動きをしていた。だがこの魔物はお互い連携を取っている。

 宮廷魔導士たちが攻撃をしても、一匹がそれを防ぎ、他の魔物が攻撃をしてくる。


 サクヤもだいぶ強力な魔法で攻撃しているが、やはり数を相手にするには強すぎる。防ぐことに手一杯で中々攻撃に転じれていない。


 空から炎の攻撃と、翼から槍のような鋭い羽根が降り、魔導士たちが魔物の攻撃を防ぎ切れず負傷していく。


「ディルアス! みんなが!」


 ユウは叫び、ディルアスも悲痛な顔をしている。

 ユウは走り出した。


「ユウ!」


 ディルアスは叫んだがユウには聞こえていない。

 フッ、やはりユウはそうなのだな。見ているだけなどユウには出来ない。


 ユウは魔導士たち、兵士たちに結界魔法を張り、炎の攻撃に水魔法で応じる。風魔法に水を纏わせ、水竜巻で炎を絡め取って行く。


 突然現れた人間に魔物は驚き、一斉に襲って来た。


「ユウ!」


 ディルアスが何重にも障壁結界を張り、雷撃で威嚇した。

 一瞬魔物は怯んだが、散ったかと思えばすぐに四方八方から迫ってきた。


 やはり魔物同士連携をしている。


「ディルアス、結界をお願い!」


 ディルアスがさらに強力な結界を張り、ユウは結界を消し風魔法で竜巻を起こし、魔物を一塊にした。

 その瞬間に結界で魔物を封じ込め、炎の魔法を内部に送り込む。

 魔物は苦しんでいるが、致命傷にはならないようだ。

 ユウは目一杯の炎を結界内部に。炎が少し弱まった……そして結界を解いた瞬間、大爆発が起きた。


 数十匹の魔物が一気に黒い靄へと変わった。


「ユウ、今のは……」

「うん、グレイブさんのノートに書いてあったやつ」


 ディルアスが驚いた顔をしている。どうやら以前言っていた新たな魔法のようだな。

 結界の内部が炎で燃え、しばらくすると少し弱まる、その時に結界を解くと大爆発が起こる。

 グレイブという人間のノートに書かれていた応用魔法らしい。


 サクヤが残りの三匹に応戦していたが、こちらの大爆発に驚き、魔物もサクヤもこちらを見た。

 サクヤは驚き、そして……鋭い眼で睨んで来た。


 何だあの眼は。何か雰囲気がおかしい。


「ディ、ディルアス……」


 ユウは小声でディルアスに声をかけた。


「とにかく魔物が先だ」


 ディルアスもサクヤの視線に気付いていたようだが、魔物を倒すほうを優先した。

 二人がサクヤのほうへ向かおうとすると……


「あんたらは来るな!」


 サクヤはそう叫ぶと、怒りを爆発させるかのように、激しい雷撃を三匹の魔物に浴びせた。

 それどころか制御しきれなくなったのか、手当たり次第に雷撃が降り注ぐ。


 魔物は果てしなく降り注ぐ雷撃に逃げ場がなくなり消滅した。


 しかし魔物が消滅しても雷撃は収まらない。味方の魔導士や兵士たちにも雷撃が降り注ぐ。

 ユウとディルアスは急いで結界を張った。


「どうなってるの!? 魔物は消えたのに何であの人はまだ攻撃をやめないの!?」


「攻撃をやめろ! もう終わった!」


 ディルアスが叫んだが、サクヤの耳には届いていないようだ。


「くそっ、ユウ、結界を頼む!」

「ディルアス!?」


 ディルアスは結界から出るとサクヤのすぐ近くに転移した。サクヤはディルアスに気付いていないようだ。空を見ている。


 ディルアスはサクヤの腹に手を当て小さな雷撃を放った。

 サクヤは気を失い、雷撃は止まった。


 辺り一面雷撃の落ちた穴が無数にあった。ディルアスはサクヤを抱えこちらに戻ってきた。


「ディルアス大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だ」


 ディルアスはサクヤを側に寝かせ、怪我人の治癒に向かった。


 ユウとディルアス、動ける魔導士たちで、手分けして治癒魔法を行い、全ての怪我人を治癒していく。

 サクヤだけは今起きられると困るとの判断で、治癒は王宮に戻ってから魔導士に頼んでいるようだった。


 ユウとディルアスは全ての治癒が終わったことを確認し、王宮へと転移した。

 部屋に戻るとアレンがいた。怒ったような顔付きだな。


「お前らなぁ!」


 アレンの怒声が飛んだ。


「ユウ! 待機しろって言っただろ! ディルアスも止めろよ!」

「ご、ごめん」


 ユウは反論することもなく謝った。まあ仕方ないのだろうな。しかしユウが出るのは分かっていそうなものだが。


 アレンは深い溜め息を吐いた。


「まあユウは気になるだろうな、とは思ったが……今回はとんでもない魔物だったらしいしな。うちの魔導士たちとサクヤだけでは甚大な被害が出ていたかもしれん。助かった。ありがとう、ユウ、ディルアス」

「軽率でごめん……」


 フッとアレンは笑いユウの頭を撫でた。


「まあ良いさ、ユウだもんな」


 そう言って笑った。


「それ、どういう意味!?」

「アハハ」

「陛下、ユウ様たちに着替えくらいさせてあげてください」


 リシュレルが口を挟む。ユウは自分の身体を眺めて改めて酷いなりをしているのに気付いたようだ。


「あぁ、すまん、湯浴みと着替えを終えたら、すまんが俺の執務室まで来てくれ」


 ディルアスは自分の部屋に戻り、着替えを終えたらアレンのところへ行くことにして別れた。


『ユウ、大丈夫か?』

「あー、うん、大丈夫。ルナとオブも大丈夫? ゆっくりしてて」

『我らは今回何もしていないからな、大丈夫だ』


 ユウは風呂とやらに入って落ち着いたようだな。

 しかしサクヤの態度……、明らかに今までと違う上に気配も少し違った。それが何を意味しているのか……。


 ユウが風呂を終えると、アレンの執務室に向かう。すでにディルアスがいた。

 ここで話すときのいつもの定位置にアレンとディルアスが座っている。同じようにいつものディルアスの横にユウは座る。


 遅れてリシュレルが入ってきた。


「サクヤの様子はどうだ?」


 アレンが聞いた。リシュレルは魔導士や兵士たちとサクヤの様子を見に行っていたようだ。


「魔導士たちや兵士たちはお二人が治癒してくださいましたので、全員無事です。サクヤ様は……」


 サクヤも大した怪我ではなかったが……言い淀むということは何かあったのか……。


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