第四十二話
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嬉しくて涙出ます!
ユウたちが宮廷魔導士団に行っている間、またしても我とオブシディアンは留守番だった。
つまらん。
ユウが与えられた部屋は広いが、しかしオブシディアンと共に元の姿に戻れるほどには余裕がある訳ではない。だから小型化したまま待つのだが……、つまらんのだ。
こんな部屋にいたところで何も出来ない。寝るしかないではないか。
勝手に出歩いてやりたい。オブシディアンは小型化のまま丸くなり眠っている。
呑気なものだな。
戻って来たユウは新たな魔法を知れたと喜んでいた。
ユウたちはしばらく何日か演習場での見学へ行っていた。
アレンとリシュレルの魔力に慣れてからは、とにかく多くの人間の魔力を感じる練習をしているようだ。
そんなある日アレンに呼ばれた。
「勇者があらわれた」
「!?」
「最近魔物が増えている。それをほとんど一人で討伐しているらしくてな。褒賞されることになった」
「そ、そっか」
「どうする? 隠れて見とくか?」
「う、うん、そうだね」
ユウは陰に隠れて勇者を見てみることにした。
謁見の間で勇者が現れるのを待つ。扉が開かれて入ってきたのは、やはりサクヤだった……。
サクヤはアレンの前まで来ると跪いた。
「この度幾度となく魔物討伐に功績を残されているそなたに褒賞を与えようかと思う。そなた名は?」
「サクヤと申します」
顔を上げたサクヤは真面目な顔をしていたが、それ以上に何か雰囲気が少し違った。
何だろうな、あの雰囲気は。
アレンとのやり取りを一通り見てから、ユウはディルアスと確認し合っていた。
「何だか雰囲気違う感じしなかった?」
「あぁ、何というか暗いというか……」
明らかに以前会ったときとは違うな……、何か嫌な予感がする。
「ルナはどう思う?」
『魔力の気配が変わっているような気がしたな。ただそういう気がするというだけで、はっきりと何かを感じる訳ではないが』
「うん、そうなんだよね、はっきりと何かを感じる訳ではないんだよねぇ」
何故だ、しかし気になるのだ。
「どうだった?」
謁見の間から戻ったアレンが聞いた。
「うーん、以前会ったときの印象と違う感じがした。アレンはどう思った?」
「俺か? 俺は初めて会ったからなぁ、特に何か変化を感じられる訳ではないけど、様々な人間と会う機会が多い俺からすると、何か野心に溢れているやつと同じような匂いを感じるな」
「野心……」
「あぁ、純粋に正義を求めるもの、強さを求めるもの、まあ様々だか純粋にそれらを求めるものは瞳に迷いがないし、真っ直ぐな瞳を向ける。だが野心溢れるものは求めるものへの純粋さは同じだが、そこに妬みや嫉みが加わる」
「妬み嫉み……」
「妬みや嫉みから自分にとって邪魔なものを排除しようとする。そういうやつの瞳は目の前にいる者を見ていない。サクヤとか言う勇者らしき人物、彼の瞳は俺を見ていなかった。彼が何を見ているのかは分からないが、何かを追い求めているのかもな」
その時扉が叩かれた。
「失礼いたします! 只今魔物が出現したとの報告が!」
リシュレルが息を切らしながら報告に来た。
「!!」
アレンは立ち上がり、戦闘準備を指示した。
「ユウ、お前は来るな!」
「!? 何で!?」
「まだ勇者がいる。恐らく彼も戦いに出る」
「あ……」
サクヤがまだ城にいるならば、きっとサクヤが出るだろう。
「分かった……待機しとく……」
「あぁ、大人しくしとけ、俺たちで大丈夫だから」
アレンはそう言うとユウの頭を軽く撫でて去って行った。
ユウは不安そうな顔をしている。恐らくこの場にいるのに戦えない歯痒さを感じているのだろうな。
そんなユウを見兼ねたのかディルアスも頭を撫でた。
「とりあえず部屋に戻ろう。部屋に戻ったら索敵をしてみよう。少しくらいは状況が分かるかもしれない」
ユウは頷き部屋へと戻る。
ユウとディルアスは部屋に戻り広範囲の索敵を発動させたようだ。
どうやら王宮より西側の辺りに魔物の反応があるらしい。しかもかなりの数が。
特定索敵をしてみると恐らくサクヤであろう気配、そして兵士と宮廷魔導士団の人間だろう気配も感じたようだ。
やはりサクヤが出ているのだな。
「大丈夫かな……」
ユウが呟いた。それをディルアスが聞いていたらしく、ユウの頭を撫でた。
ユウはディルアスの顔をジッと見詰め、ディルアスがたじろいだ。
「な、何だ?」
「え、いや、何でもない」
ユウは笑って我とオブシディアンを抱きかかえ椅子に座った。
「様子を見に近くまで行ったら……ダメだよねぇ」
ユウは我を撫でながらディルアスを見ていた。行きたいのだな……。
「気になるんだな?」
「う、うん」
「はぁ……、ユウらしいけどな」
溜め息を吐きながら半ば呆れた様子でディルアスは苦笑していた。
「陰から見るだけだぞ」
「うん!」
ディルアスが許可を出すとはな。まあユウのことだ、いつまでも気になるだろうしな。
「アレンには内緒にして行くぞ」
「そうだね」
アレンに言えば絶対反対するだろう。
こっそりと建物の陰から空間転移で王宮の外に出る。そこから魔物を感じた場所までユウとディルアスは飛翔で移動した。我とオブシディアンはユウに抱きかかえられたまま。少し屈辱的だが目立つことを避けるのならば仕方ない。
激しい音が聞こえ、少し離れた場所に降りた。
ユウからの指示は小型化のままだと万が一魔物が近くに来ると危険なので元の姿に戻り物陰に隠れているようにとのことだった。
ユウとディルアスは気配を殺しながら魔物の気配のほうへそっと近付く。
ユウは岩の陰に身を隠し伺い見ていた。翼が生えた人型の魔物。異形な魔物だった。
それが数十匹。魔力も今まで感じたことがないくらいの強い魔物だ。
「ディルアス……あれって……」
「見たことがないな。しかも凄い魔力だ」
「大丈夫かな……」
「しばらく様子を見よう」




