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銀狼ルナの心情~異世界で勇者になりましたが引きこもります番外編  作者: きゆり
二章 現代編

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第四十一話

 後日ユウたちは街で普通の人間の魔力を感知してみることになった。


 あまり街には行きたくないようだったが、ディルアスとの魔力感知だけでは進展しないため、仕方なく見知らぬ人を感知してみることになったのだ。


 ユウとディルアスは街の片隅に座り人混みの流れを見詰める。目を瞑り意識を集中させ、一人一人の魔力を探っているようだ。


 不特定多数を感知するのは、併用と同じくとても消耗するらしく、ディルアスと通常索敵の交代をしながらの訓練になった。


 我にも少し人間の魔力は感じるが、普通に街中を歩いている人間たちも魔力は様々だ。

 強く感じる人間もいれば微量過ぎて感じられない人間もいる。


 その時知っている魔力を感じた。ユウも感じたようだが、もうすでに遅かった。


「あ! この前会った人! お久しぶりっす! また会いたかったから、会えて嬉しいな!」


 サクヤは勢いよくこちらに駆け寄りユウの手を掴む。ディルアスがサクヤの手首を掴み、ユウの手から引き離した。


「あ、すんません」


 申し訳ない、と頭を掻きながら笑った。


「魔法教えてくださいよ!」

「いや、だから無理です」

「何で!?」

「な、何でって……」


「俺たちは魔法を人に教えるほど凄い訳じゃない」


 サクヤは呆然としていたが、ディルアスはそう言うとユウの腰に手を回し歩くよう促し、じゃあ、とだけ告げてそのまま建物の陰に入った。


「ディルアス……」

「あぁ」


 サクヤが跡をつけてきていた。


「物陰に入ったら転移するぞ」


 ディルアスは小声で言った。

 転移魔法がバレないように、ある程度距離を取ると物陰に入った瞬間転移してロッジに戻った。


「あ~、あの人結構しつこいね」


 ユウはテーブルに項垂れた。


「今やろうとしている索敵が上手くいけば、あの男の動きに反応しながら避けることは可能になるんだがな」

「街でももう練習しにくいしねぇ」


 とりあえず街でまたサクヤと遭遇してしまったことをアレンとイグリードに報告した。

 それに合わせて、今魔力感知の訓練をしていることも。


「ならば、しばらくアレンの王宮にいたらどうだ? 王宮ならそのサクヤとかいう勇者らしき者も簡単には入れない。王宮内の人間の魔力感知してみたらどうだ?」


 イグリードが提案してきた。


「なるほどな、確かに王宮のほうがユウにとっても安全だしな。俺はそれでも良いぞ。どうする、ユウ?」


 ユウはディルアスと顔を見合わせる。


「ユウ、そうしよう」


 ディルアスが先に言った。


「うん、じゃあアレン、お願いしても良い?」

「あぁ、分かった! 話は通しておくから明日から来ると良い」

「ありがとう」


 そして次の日から王宮で生活することになった。



 アレンの私室でリシュレルも一緒に今後の話をした。


「とりあえずユウたちは王宮内の人間の魔力感知をするんだよな?」

「うん、そうさせてもらいたい」

「大体どこも自由にしてくれて構わないが、どこに行くかは誰かに伝えてから行動してくれ」

「分かった。ちなみにアレンとリシュレルの魔力感知もさせてもらっても良い?」

「ん? 俺たちか? あぁ、別に良いぞ」

「私も大丈夫ですよ。面白そうですし」


 リシュレルは笑った。


「ありがとう。じゃあちょっと今二人の魔力覚えるね」


 ユウは目を瞑り二人の魔力に集中する。

 アレンとリシュレルはどうしたら良いか分からず困惑しているようだ。


「ありがとう、もう大丈夫だから普段通り過ごしててね。魔力を追ってみるから」

「お、おぅ」


 アレンは何だか分からないといった顔をしているな。


 それから毎日ユウとディルアスはアレンとリシュレルの魔力を探っているようだった。

 最初はかなりの集中力を持ってやらないと、全く居場所は分からなかったようだ。しかも短時間集中しているだけで、その日はグッタリとした様子だった。


「あぁ、疲れるー!!」


 ディルアスもグッタリしている。


『大丈夫か?』


 ユウの膝に乗った。


「あ~、ありがとう、ルナ。もふもふ!」


 ユウは膝に乗った我をここぞとばかりに撫で始めた。


『そういう訳ではないのだが……、まあ仕方ないな……』


 いつもならあまりに撫でられるのもどうかと思っているが、今回はやたらと疲れる作業らしいしな。少しくらいは協力してやりたい。


 しかしいつまでやっているのだ。長いな。

 ディルアスが何やら鋭い視線を向けているぞ。


「ディルアスももふもふする?」


 突然ユウがディルアスに言った。


「はっ!?」

『はっ!?』


 ディルアスと声が重なった。何故そんな考えになるのだ! ディルアスなどに触られたくはない!


「ルナを見てるから、てっきりディルアスももふもふしたいのかと……違った?」

「いや! ルナを見てた訳じゃ! ……ない……」

「え?」


 ディルアスがこちらを見ていた理由がユウには分からんのだな。

 ユウは人間のくせにディルアスの考えることは分からんのか……。鈍感というやつか。

 溜め息を吐いた。


『分からないならそれで良いんじゃないか?』

「何!? 教えてよ!」

『自分で考えることだな』

「えー……」


 ユウは訳が分からないといった顔だが、わざわざ教えてやる義理もない。

 ディルアスの気持ちなど知ったことか。


 その日は微妙な空気のままディルアスと別れた。



 その後ユウは何日もしばらく訓練を続け、毎日ディルアスと共に疲弊しながら、徐々に感知するのも素早くなっていった。


 アレンとリシュレルの居場所が分かるようになってきたようだ。個人を特定して分かるように。ただ持続性がない。長くは続けられない。通常索敵と併用するとなおさら。


 そこユウとでディルアスは交代しながら通常索敵と特定索敵をすることにしたのだった。

 それならば二時間置きくらいに交代すれば、一日続けることが可能になったようだ。


 もう少し強化出来れば、ということで、まだ鍛練は続けていたが、少し余裕が出来たらしく、ユウたちは宮廷魔導士団に行った。



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