第四話
「何でまたこんな異世界に来ちゃったんだか。まあ考えても仕方ないしな!」
少し考える素振りを見せたかと思うと、すぐに考えることを止めた。
能天気な奴だな。まあ我には関係のないことだが……。
「とりあえずレガルドに戻るか! そんでどうやって街に入るんだ?」
やはり何も考えていないんだな……。
我の一つの能力、人間化を発動する。
背はショーゴより少し高く、銀髪に金瞳の人間の男になった。
「うおっ! 何だそれ! お前、人間になんかなれるのか! しかも何だその美形具合は! それに……」
ショーゴは俯いた。
「何で裸なんだよー!!」
叫んだ言葉がこだました。
『?』
「と、とりあえず元に戻れ!」
何なのだ。せっかく人間の姿に変えたというのに。
仕方なく元の姿に戻った。
「お、お前な! 何で裸なんだよ! 服は!? 何で服着てないんだよ!」
『服? あぁ、人間は服とやらを着ているのだな。服などない』
「ないのかよ!」
ショーゴは溜め息を吐いた。
「裸じゃ、街には入れない。しかもそんな美形な奴連れて歩けない!」
『なぜだ?』
「言っても分からんだろうからいい。他に方法はないのか?」
何なのだ一体。ムッとしたが仕方ないから、もう一つの能力、小型化を発動させる。
身体を小さく、小さく……、仔犬程の大きさまで小さくなるとそこで止まった。
「おぉ! それ良いじゃないか! 仔犬みたいで可愛いぞ!」
『…………』
可愛い……屈辱的だ……魔獣としてそれなりに恐れられている我に向かって……
「じゃあ転移で行くぞ」
転移魔法まで使えるようになっていたのか……。
足元に魔法陣が現れ、一瞬にしてレガルドまで着いた。
街に入るとショーゴは店に見向きもせず、ある家に入って行った。
「ただいま、ばあちゃん」
「ショーゴか、おかえり、どこ行ってたんだい?」
家の中にはかなり年老いた老婆がいた。
黒いローブのような服を着た、いかにも胡散臭げな……。
「こいつだよ」
『!?』
いきなり抱き上げられた。
脇に手を入れ持ち上げられ、下半身はぶら下がり無防備な状態……。
『お、下ろせ!』
「え、何で?」
老婆の目の前にぶら下げられ、警戒の反動で元の姿に戻りそうになる。
「こいつが銀狼かい? 仔犬じゃないか」
「今は小型化してるだけだよ、本来はもっとデカイから街に連れて来れないし」
「へぇ、見てみたいもんだね」
老婆はニヤリと笑った。ぞわりと悪寒が走る。
暴れてショーゴの手から離れた。
警戒しながら後退る。
「ロウ? どうした?」
「なんだい、可愛げのない狼だね。まあ良い、ショーゴ、明日はこれを頼むよ」
老婆は何やら紙切れをショーゴに渡した。