第三十九話
ブックマークや評価ありがとうございます!
ディルアスとの暮らしは思っていた順調のようだった。ユウもディルアスも特に話すでもなく、静かな時間を過ごしていた。
たまに我が人間化をしユウをからかうとディルアスが敵意を向けてくるが。
「そういえばルナとオブは色々訓練してるんだよね? オブの攻撃とかはどうなった?」
『十分戦えるようになったぞ』
「そうなんだ! 見たい! オブ見せてよ」
『良いよー! ここでやると危ないから広いところに移動しようよ』
オブシディアンは自信満々でそう促す。
「そうだね、ついでに私も自分の魔力確認しときたいし。ディルアスも一緒に行く?」
側で畑に水やりをしていたディルアスに言った。
「あぁ」
「そういえばオブも大きくなったし、ゼルみたいに乗れるのかな?」
「乗れるだろうがお互いに慣れるまでは練習が必要だろうな」
「ふーん、そうなんだ。とりあえず乗ってみよう! オブ乗せて!」
『良いよ~』
そう言うとオブシディアンはしゃがみ込んで背に促した。ユウは飛翔魔法を使ってオブシディアンの背に乗る。
「保護魔法と落ちないように飛翔魔法を流用してバランスを取るんだ」
ディルアスが言った。
「飛翔魔法を流用……うーん、ま、何とかなるか」
「お、おい!」
ディルアスが何か言いかけたが、その前にオブシディアンが羽ばたいて空に舞い上がった。
「うわっ、確かにバランスが!」
上空でバランスを崩し落ちそうになっているところへディルアスが飛翔魔法で飛び乗った。
「ひっ、ディルアス!?」
「俺がバランスを取るのを感じろ」
ディルアスはユウの腰を掴み支え、ユウは必死にバランスを取ろうとする。徐々にディルアスの動きとユウの動きが重なり合ってくると、ディルアスは飛び退いた。
「えっ!」
「後は一人でオブの動きを感じるんだ!」
一瞬バランスが崩れかけたが持ち直し、ユウは段々と慣れてきたようだった。
ユウが安定してくるとオブシディアンも分かりやすくなったようで、一気にお互いが繋がったようだ。
「やった! オブ、乗れてるよ!」
『ほんとだ~! やったね、ユウ!』
自由に乗りこなせるようになると周辺を一回りし、そして戻って来た。
「今日はオブの炎を見るんだろ?」
「そうそう! そうだったね。いや、オブと飛ぶのが楽しくてつい……、ごめん、行こう!」
そんなやり取りを見ていると、ぞわっと魔物の気配を感じ叫んだ。
『ユウ!』
ユウとディルアスの索敵にも気配を感じたようだ。
ディルアスが叫ぶ。
「森から出るぞ!」
ディルアスが森の外を指差しゼルの背に飛び乗った。
「オブはゼルに付いて行って!」
ユウはオブシディアンにそう指示すると我の背に飛び乗った。
我は魔物の気配を感じながら森の外へと進む。
森を抜け平地に出ると魔物の姿が露になった。
「ディルアス……」
鼠……普通の鼠よりは大きい。小型化した我やオブシディアン程の大きさだ。
それほど強くはなさそうな魔物だ。しかし、数が半端ない。百匹以上いそうだ。
「この多さは厄介だな」
「な、何でこんな数……」
「魔物が増えているらしい話は聞いたが、これは多すぎだな」
森の中からぞろぞろと出てくる。
「これ、どうすれば良いの?」
「一匹ずつ倒してる余裕はない。一気にやるぞ。どうにかして一ヶ所に集めるんだ!」
一斉に襲いかかってきた。物凄い勢いで突進してくるもの、高くジャンプして上からくるもの、入り乱れて襲いかかってくる。
「ルナは後ろからオブは上空後ろから炎をお願い!」
ユウが我らに指示を出す。
『分かった』
我とオブシディアンの炎が鼠を背後から追いやる。
ユウは背後から追いやられた鼠の行く先々で氷魔法の壁を作り行く手を阻む。しかし何匹かはすり抜けてしまう。残った鼠にだけ結界を張り閉じ込める。
「やっぱり無理か」
全部一斉には無理だ。
「いや、今ので行こう! 俺たちは残りを追い詰める。その間にユウは今結界にいるやつを先に!」
「分かった!」
ユウは結界を張ったまま、その中に炎を。結界の内部が分からなくなるくらいの業火で焼き付くした。結界内部の様子がまだ分からないため、結界は維持させたまま、ディルアスたちの方を見た。
我が吐き出す炎の合間を突いて、鼠が噛み付いてくる。吼え牙を剥くが数が多すぎる。一気に囲まれた。
「ルナ!!」
ユウが風魔法で我の周りの鼠を蹴散らす。その隙に高くジャンプした。
「ルナ! こっちに!」
ユウに呼ばれたほうへ駆け寄った。
ユウが空に向けて雷撃を撃った。空高く登った雷は上空で四方八方に弾け、無数の槍のように鼠たちに突き刺さる。
ディルアスも数十匹を結界に封じ込め炎魔法をかけているところだった。
ユウは先程まで張っていた結界を小さく小さくしていき、そしてグッと握り締め消滅させた。
残り数匹、取り逃がした。残った数匹は森に逃げて行く。
そう思った瞬間、鼠が炎で焼かれた。
「えっ!?」
ディルアスのほうを見ても、まだ結界と炎魔法で数十匹の相手をしている最中だった。
誰だ!?
鼠がいた方に向き直すと森から何かが出て来た。
ユウが警戒し、我も身構える。
最後までお読みいただきありがとうございます!
明日の祝日はお休みします!
いつも読んでくださる方々には申し訳ありません。
金曜日にまた更新予定です!
よろしくお願いします!




