第三話
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皮肉にもショーゴの治癒魔法のおかげで、思っていたよりも早く回復した。
「お~! 元気になったな! 良かった!」
『それで見返りは何を望むのだ?』
頼んだ訳ではない。ショーゴとやらが勝手にやっただけだ。しかしこのまま借りを作りたくはない。
奴が望むことを叶えたらさっさとこの場を離れよう。関わるのはごめんだ。
「うーん、見返りかぁ、お前、本当に律儀な狼だな」
『我はそなたともう関わりたくないからだ』
「関わりたくないからかぁ、なら、身体が動くようになってきたときに、姿消したら良かっただろ? でもそうしなかったじゃないか」
『借りを作るのはごめんだからだ』
「借りか~。うーん、借りか……そうかぁ……」
何なのだ、一体。
「じゃあさ、俺と仲間になってくれよ」
ニカッと満面の笑みでショーゴは言った。
『は? 仲間!?』
「うん、仲間」
『我は魔獣だぞ?』
「分かってる」
『何のつもりだ、魔獣を従えさせて箔を付けたいのか』
自分よりも弱い人間などに魔獣は従わない。それどころか弱い人間が不相応にも従わせようものなら、その魔獣に殺されるだろう。
「え? あー、うん、そうだな、魔獣って強そうだし格好いいじゃん!」
何か気の抜ける奴だな。
『ならば少しの間だけだ』
「えー、ずっとじゃないのか……まあ仕方ないな、それで我慢するよ」
ショーゴはブツブツ文句を言っていた。
可笑しな奴だ。
「そういえばお前の名前は?」
『名前? 名前などない』
「え! ないの!? 呼びにくいな……なら、俺が付けても良い?」
ワクワクしたような顔でこちらを見てくる。
『うっ……、好きにしろ』
「やった! じゃあ何が良いかなぁ」
こんな筈では……こんなに関わるはずではなかったのに……ショーゴのペースにはまってしまっている。我としたことが……。
「じゃあ、銀狼だから、ロウ!」
物凄い自信満々に言ったな……。
『散々考えてそれか……』
「え、ダメか? 格好いいだろ? ロウ!」
『まあ良い』
名前など何でも良い。所詮一時のことだ。
「じゃあこれからよろしくな、ロウ!」
『あぁ』
こんな奴と行動を共にすることになるとはな。深い溜め息を吐いた。
「とりあえずレガルドに戻ろうと思うんだけど、ロウはどうする? 街に一緒に行く? ここで待ってるか?」
『ここで待つ、と言ったら付いて行かずとも良いのか?』
「良いぞ。明日また来るし!」
『…………』
「何?」
『その間に我がいなくなるとかは思わないのか?』
「あ~、そういえばそうだなぁ」
バカなのか?
「でもロウはそんなことしないだろ?」
『なぜそう我を信じられる』
「だってお前、大概お人好しだろ。人じゃないけど」
自分で言いながら爆笑している……。
「街の場所を教えたり、恩返し考えたり、勝手にいなくなっても良いのに、わざわざ言っちゃうし」
『…………』
「ロウは良い奴だよ。お前は約束を破ったりしない。だからいなくなったりもしない。信じられるよ」
ショーゴは真っ直ぐ目を合わせ微笑んだ。
『ふん、なら待つと言っても無駄だな。一緒に行こう』
何だかむず痒くなり目を逸らした。人間に信頼されるとはな……。
「よし、じゃあレガルドに行こう! それはそうとロウは街に一緒に入れるのか?」
やはりバカだな……。
『分からず言っていたのか……』
溜め息を吐いた。
ショーゴは頭を掻きながら笑った。
「まだこの世界の常識が分からないし」
『そういえばそなたはどこから現れたのだ?』
ショーゴは突然ここに現れた。
「うーん、レガルドで色々聞いてる感じじゃ、どうもここは俺にとっては異世界なんだよな」
『異世界……』
「うん」
話によると、突然ここに移動していたらしい。
ショーゴのいた世界では魔獣もいない、魔法もない、そんな世界だ、と。
元の世界で少し嫌なことがあったため、我に食べられても良いか、と思ったらしい。
なぜここに来たのか分からないまま、我に出会い街に行き、魔法を覚え、今日まで過ごして来た、ということだった。