第二十八話
再開しました!
よろしくお願いします。
ユウとディルアスはとりあえずアレンに報告した。
「ほとんど分からずか……勇者の使える聖魔法とやらをユウは使えるのか?」
「どんな魔法か分からないから何とも……」
「ディルアスと二人で発動させていた結界魔法は違うんだよな?」
「違うと思うけどな……二人で発動とか書いてなかったし」
「うーん、本当に何も分からんな」
アレンは天井を見上げた。
「他国の情報も調べさせてもらったらどうでしょう?」
リシュレルが言った。
「他国?」
「えぇ」
「あ、ガイアスか!」
「ガイアス?」
「このエルザイアの隣国だ。ガイアスとは友好国で、昔から長い付き合いだ。あそこの息子とは幼なじみみたいなもんだしな」
「第一王子のイグリード・サフィロ・ガイアス殿下です」
「あぁ、リードなら事情を話せば禁書庫を見せてもらえるかもな。行ってみるか?」
「う……ん、そうだね。他に情報がありそうなら……」
「よし、じゃあリードに連絡を取ってみよう。少し待て」
アレンは魔導具を取り出し握り締め声を掛けた。
「リード、リード、聞こえるか?」
通信をし始めた。相手の声は聞こえない。
久しぶりだな、と他愛ない話をしながら本題に入った。
「近々そっちに行っても良いか? 頼みたいことがある。あぁ。その時に話す。分かった。ではな」
通信が終わったのかアレンはこちらを見た。
「面会の約束はしたぞ。いつ出発する?」
「まさかあなたも行かれるおつもりですか?」
リシュレルが真顔で聞いた。
「行くぞ。当たり前だろ。勇者の事は俺も知るべきだろうし、そもそも他国の者にいきなり禁書庫を見せろと言われても向こうも見せられないだろうしな。俺が行くことで通る事柄もあるだろう」
確かに、アレンは一応王子らしいしな。
「はぁ、仕方ないですね」
「後の事は任せた」
ニッとアレンは笑った。リシュレルの深い溜め息が聞こえる。
「諸々処理したいこともあるから出発は明後日で良いか?」
「あ、それなら一度キシュクに戻って来て良い? あれから一度も連絡してないし」
「ん? あぁ、そう言えばそうだな。キシュクの者と通信はしてないんだな」
「うん。やろうとしてて忘れてた」
「ハハ、意外と抜けてるな」
そう言われユウは微妙な顔になる。
「そう言えば俺たちも繋げとくか」
「?」
「通信だよ」
「あぁ。私、やったことないんだけどどうするの?」
「自分の魔導具に相手の魔力を入れてもらうんだ。やってみよう」
アレンが魔導具を出した。
「これにユウの魔力を注いでくれ」
ユウは言われた通りに手を翳して魔力を注いだ。
そして同じようにユウが身に付けている魔導具にもアレンの魔力を。
「俺も」
ディルアスが言った。
「あ? あぁ、そうだな、ディルアスも繋げとくか。それなら全員同時にも話せるしな」
「へー、全員同時にも話せるんだ」
ディルアスの言動がいちいち気になるな。どういうつもりの発言なのだか。
ユウはアレンとディルアスと通信を繋げ、試しにと、部屋に戻って話してみる。
まず話したい相手を念じてから声をかけていくらしい。魔導具とは面白いものだな。
「アレン、ディルアス、聞こえる?」
「あぁ」
「聞こえるぞー!」
「おぉ、凄いね。便利!」
「ハハ、他にもっと凄い魔法使えるくせに」
「だって今まで知らなかったんだもん」
「まあこれで今後別行動でも連絡は取れるから、何かあったら連絡しろよ」
「分かった! じゃあとりあえず明日はキシュクに行って来るね」
「俺は少し街に出る」
ほとんど発言のなかったディルアスが突然喋った。
「あれ、そう言えばディルアスはガイアスに一緒に行くのか?」
そう言えばディルアスがどうするのか聞いていないな。
「俺も行く」
「ま、そりゃ行くか、ここまで関わったら最後まで知りたいよな!」
「あぁ」
「じゃあとにかく明後日にな!」
そう言って通信を終えた。ディルアスも一緒に行くのか……。
次の日キシュクに戻った。
ユウは人間たちに色々報告をしていた。最後にまだ王都にいると伝えていた。
そして再び王都エルザードに戻った。
街の中を通り過ぎる途中でディルアスを見かけた。何やらどこかの店から出て来たようだ。ディルアスがこちらに気付いた。気付かなくて良いのだがな。
「ユウ」
「ディルアス、薬を買ってたの?」
「薬というか魔力回復薬だな」
「魔力回復薬……私も買ってみようかな」
ユウがブツブツ言っていると、ディルアスが腰に手を回し歩くよう促した。
「必要なら俺のを分けたら良い」
「ん? え、あぁ、ありがとう?」
何をしている!? 近い! 何やら視線を感じるのは確かだが……。
ユウは周りの気配を探ったかと思うとディルアスを見詰めた。
ディルアスがユウの方に振り向き目が合った。
ディルアスは目が合った瞬間に目を見開き真っ赤になった。
「す、すまない」
ディルアスは慌てて肩を掴んでいた手を離し、顔を赤くしたまま横を向いた。
何やら気に入らん。ディルアスは一体何がしたいのだ。
しかしそう思っているのは我だけで、ユウは笑い出した。
「フフ……アハハ、ディルアスって可愛いね」
「か、可愛い!?」
赤い顔を手で隠しながらディルアスはユウを見た。
「あ、ごめん、フフ、可愛いって失礼だよね、ごめん」
「……いや」
どうやらユウは笑いが止まらないようだな。
「笑うな」
ディルアスは顔を片手で隠しながら、さらに耳まで赤くなった。
「フフ、ほんとごめん……」
ユウはやっとの思いで笑いを抑えるとディルアスも顔から手を離していた。
「それで、、何だったの? 何か視線を感じたけど」
「あ、あぁ、恐らくオブを見ていたのだと思う。だからあの場から早く離れたほうが良いと」
「オブを……ドラゴンを狙う人だったのかな……」
「恐らくな……」
オブシディアンを狙う者か。周りの気配を再び探り警戒した。
「王宮に帰ろう」
「うん」
ディルアスが促した。
門の前では顔を覚えている兵士が門を開ける。
王宮の部屋へ戻るまでの間、ユウはキシュクの人間の様子を話していた。
部屋に戻ると侍女から殿下がお待ちです、と言われ、ディルアスと共に案内される。
「あぁ、ユウ、ディルアス、待ってたぞ! 一緒に食べよう!」
アレンがすでにテーブルに着いていた。リシュレルの姿はない。
「リシュレルさんは?」
ユウはテーブルに着きながら聞いた。
「あぁ、リシュは仕事だ」
そう言いながら笑っていた。押し付けたな。
「俺の仕事は大体終わった。明朝出発するぞ!」
「分かった」
ディルアスが返事をし、ユウも頷いた。
「馬車で行こうかと思うがどうだ?」
「馬車……時間がかかりすぎるから、アレンはゼルに乗れば良い。ユウはルナがいるから大丈夫か?」
「おぉ! ゼルに乗せてくれるのか!? それは乗ってみたい!」
アレンは興奮気味だ。ユウは我をチラッと見た。
『我は構わんぞ。オブシディアンは抱きながら乗ると良い』
「ありがとう!」
ユウは嬉しそうだな。我に乗ることを楽しみにしているようだ。
そのことに何故だか少し嬉しい気分になった。




