第二十七話
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「と、とりあえず勇者と魔王について調べてみるか! ユウ、禁書庫の閲覧許可を取ってやるから自分で調べてみるか?」
「うん、お願いします」
アレンがそう提案するとユウは同意した。
「俺も付き合う」
「え!? ディルアスが? 調べるの付き合ってくれるの?」
「あぁ」
ディルアスがユウと共に調べるのか……、よく分からん奴だな。
「ありがとう、じゃあよろしくね」
ユウは嬉しそうだな……。
「しばらくは王宮に泊まると良い。父上には結界の件の報告はするが、お前たちのことは結界を張った当人であることは内密にしておく。表向きには俺の客だ。禁書庫は後で閲覧許可証を渡すから、自由に閲覧すると良い。その代わり何か分かったら、すぐ俺に報告してくれ」
「分かった」
「では今日はもう休め」
部屋に戻ると食事が用意されていた。ユウは食事をしてから風呂とやらに行った。我とオブシディアンも連れて行こうとしたが、水で洗われることなど経験がない。そもそも洗う必要もないしな。基本的に怪我をして血が付く以外は汚れることはない。我の毛は特殊だからな。
ユウが風呂から出て来ると、思わぬ姿に唖然とした。
何だかヒラヒラとした薄いものを着ている。街で見かける女が着ているものよりもさらに薄くヒラヒラだな。
『何だその格好は』
『ユウ、かわいいねぇ!』
「いや、言いたいことは分かるけど、突っ込まないで! これしかなかったし! 恥ずかしいし!」
ユウは思い切り顔を背け手を突き出し、見るなという仕草をした。いや、見えるだろう。
部屋の扉がノックされた。
「ユウ、俺だ。さっき閲覧許可証が届いた。明日から早速禁書庫へ行くか?」
ディルアスの声だった。閲覧許可証……早いな。
ユウが扉を開けた。
その時ユウとディルアスはお互いにハッとした表情になり、ディルアスは慌てて横を向き、すまん、と小さい声で言った。
「あ、いや、こんな格好でごめんなさい! 明日行く! 禁書庫行く!」
ユウは扉の陰に隠れながら言う。まただ。また何かモヤモヤとする。一体何なのだ。
「分かった。では明日朝食後に迎えに行く。じゃあ明日」
ディルアスは顔をそらしながら、そう言うとそのまま自分の部屋に帰った。
ユウは扉を閉ざして深い溜め息を吐き、ベッドに入り込んだ。
その横にオブシディアンと共に乗り上げ、広いベッドの上で丸くなった。
ユウはそんな我らを撫であっという間に眠りに落ちていた。
翌朝、侍女とやらが部屋をノックする音で目が覚める。
「ユウ様、おはようございます。お目覚めですか? お支度お手伝いいたします」
「おはようございます」
ユウは侍女と共に別の部屋へと行った。
何やら部屋からは話し声が聞こえてくるが、何をしているのやらさっぱり分からん。
程なくしてユウが部屋から出て来ると、昨日のヒラヒラとはまた違うヒラヒラになっていた。
何だその服は? 昨日から何故そんなヒラヒラばかり着ているのだ?
よく分からんな。
ユウが出て来ると食事の用意がされた。
食べ終わり、侍女がお茶を入れていると扉を叩く音がした。
侍女がお茶を置くと扉を開けに行く。
「ユウ様、ディルアス様がいらっしゃってます」
「入ってもらってください!」
ユウは慌ててお茶を飲み干そうとすると、部屋に入ってきたディルアスが止めた。
「ゆっくりで良い」
「あ、ありがとう」
侍女はディルアスにもお茶を勧めた。ディルアスは促されるままに向かいに座る。
「今日は綺麗だな」
「えっ!?」
ぼそぼそと小さい声でディルアスが言った。
「いや、その、服がいつもと違うから……」
言いながら顔を背けている。
「あ、侍女さんが選んでくれた服だから! 綺麗だし可愛い服だよね!」
何なのだ、二人して照れあっているではないか。またモヤモヤする。いや、イライラか?
「とりあえず禁書庫行こうか!」
ユウは急に話題を変えた。
ユウとディルアスはお茶を飲み干すと、侍女さんに連れられ王宮の書庫まで行った。
我とオブシディアンはまたしても部屋に留守番か。つまらん。
オブシディアンはベッドの上をゴロゴロと気持ち良さそうにしている。
何故ディルアスとユウが一緒にいるとモヤモヤするのか。
ユウが主だからか。主、ショーゴのときもユウもそうだが、主というよりも相棒に近い。
ユウは我を仲間として見ているしな。
だからか。相棒であるユウを心配しているだけだな。
そうこう考えている間に昼になったらしく、ユウが外で食べようと迎えに来た。
『何か見付かったのか?』
外へ向かう道中で進捗を聞いた。
「ううん、全く……」
ユウは深い溜め息を吐いた。そう簡単には見付からんか。
外に出ると広い庭園の真ん中にあるガゼボとやらで昼食になった。
「ユウ、ディルアス! 調べものはどうだ!? 捗っているか?」
昼食の準備最中にアレンとリシュレルが現れる。
「お? ユウ、中々似合ってるな!」
ニヤッとアレンは笑った。
「本当ですね、お似合いですよ」
アレンもリシュレルもユウの服装のこと言っているのだな。ユウのヒラヒラが風にそよいでいるな。
「ど、どうも」
ユウは苦笑していた。
「今日から早速行ってるんだろ? どうだ?」
リシュレルがこちらで殿下も昼食を、と呆れ顔で侍女たちに指示している。侍女たちは慌てて昼食の用意を増やしているな。
「まだ全く何も……」
「全くかぁ」
今回はリシュレルも一緒にテーブルに着き、我らの前にも食事が用意された。人間と同じものだ。
「仕方ないですよ、元々勇者に関する記載はとても少ないと聞いていますし。記載を見付けるのはかなり労力がいるかもしれませんね」
「そうだなぁ。俺もどの本に載っていたとかも覚えてないし、俺が読んだ以上にさらにまだあるのかも分からんしな……」
ユウはアレンとリシュレルの話を聞きながら溜め息を吐いた。
「地道に頑張るしかないな」
「そうだね」
ディルアスは無表情だが、ユウは溜め息顔だ。
「まあ気長に頑張れ」
アレンは苦笑しながら言った。
昼食を食べ終わると、我とオブシディアンを部屋に戻し、ユウは再び禁書庫へ。
しばらくユウの禁書庫通いが続いた。
何日も通い続けるとようやく何冊か勇者が記載された本が見付かったようだった。
ユウから聞いた話によると、
一冊はアレンも言っていた、勇者は異世界人でケシュナの森、石碑の側に召還される、という話。
これは今まで現れた勇者の証言を基に書き残したもののようだ。
ケシュナの森は四国に挟まれた丁度中心に当たる場所にある。勇者が現れる国は決まっていないため、ケシュナの森は四国で不可侵条約が結ばれた。どの国に勇者が現れたとしても、魔物の殲滅にはそれを遮ることは出来ないとも協定が結ばれたようだ。
この国の勇者に関する記載の一番古いものは千年程前くらいのものだった。
それ以前から勇者は存在したのかもしれないが、書物として残すようになったのが千年程前のようだった。
始まりは異世界から来たと思われる人物が魔物を殲滅させた、ということ。
そういった人物が現れる度に記載されていく、その歴史から百年に一度くらいの周期で、魔物を殲滅することの出来る人物が現れるということが分かった。
そして徐々に魔物の中でも異常な強さを持つ魔物が現れることが分かっていく。
その後それは魔王と呼ばれるようになり、勇者が使う特殊な魔法でしか倒せないらしいということが分かってきた。
しかしどう言った理由で魔物や魔王が現れるのかは分からなかった。同じように勇者も異世界から現れる、ということしか、はっきりした内容は分からなかった。
大体は我やアレンが知っている内容と同じことだったな。
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