第二十五話
長らくお待たせ致しました。再開します!
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更新は一応毎日夜にするつもりですが、たまにお休みするかもしれません、その時はすいません。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです!
「今はユウが勇者であるかは後で良いんじゃないか?」
ディルアスがアレンに言った。
「あ、あぁ……、そうだな……。それよりも今は王宮の魔物を何とかするほうが先だ」
止まりかけていた思考が動き出したアレンはそう断言した。
「勇者の話はその後だ!」
アレンは漆黒のドラゴンに向き直し聞いた。
「この二人なら魔を打ち払うことが出来ると言ったな。そんな力がこの二人にはあるということなんだな?」
『あぁ、その二人の力ならば簡単だろう』
「そうか……なら、二人とも力を貸してくれ!」
ユウとディルアスは顔を見合わせた。
「ユウが良いのならば、俺は構わないが」
「分かった。私もディルアスが良いなら」
「ありがとう、二人とも。ならばすぐに王宮へ! 古のドラゴン、感謝する!」
アレンはすぐさま谷から出ようと歩き出した。
『我が血族の者よ、思うがままに生きよ』
「……あぁ」
ディルアスはそう一言だけ呟いた。
漆黒のドラゴンは昔一族を去った仲間を思い出したのだろうか、想いを馳せているようだった。
『黒の同胞よ、そなたはここに戻るか?』
黒の同胞……オブシディアンのことか。
ユウは抱えたままのオブシディアンを見た。ずっと黙っていたオブシディアンは突然話を振られビクッとする。
「オブ、ここにいたい? 仲間と一緒に」
「え? ここに? いやだ! ぼくはユウといたいよ」
ユウはオブシディアンに問うたがオブシディアンは小さく身体を縮めてユウの身体に顔を埋めた。
「分かった、一緒に行こう。漆黒のドラゴン、ありがとう。でもオブは私たちと一緒に行くよ」
『そうか、ならば強く生きよ』
『さらばだ、小さき者たち』
竜の谷から出ると急いで戻るために、ディルアスが空間転移魔法を使った。あっという間にエルザードへ。
「街に入る前に確認したいんだけど、魔を打ち払うって、そもそもどうするの?」
ユウが聞いた。
確かにそうだな。ユウが魔物と戦ったのはあの一度きりだ。姿が見えない魔物をどうやって打ち払うのか。
「え! それはユウたちが分かってるんじゃなかったのか!?」
「え!? いやいや、そんなの私知らない」
ユウとアレンは二人して混乱している。
「巨大な結界を張れば良い」
ディルアスが口を挟んだ。
「巨大な結界?」
「あぁ、城の一番高い所を中心にして、城全部を覆う結界を張る」
「城全部!? そ、そんなの出来るの!?」
「一人では無理だ。だから二人なんだ」
二人同時で魔力を合わせて広範囲に結界を張るのだな。なるほど。
人間は色々と出来るものだな。
「ということは、城の一番高い所を目指せば良いんだな! 行くぞ!」
アレンが意気込んだ。
アレンは街を足早に過ぎて行く。ユウは我とオブシディアンを小型化し慌てて付いて行く。ディルアスのゼルはどうやらまた街の外で待機のようだ。
歩きながらアレンは何やらブツブツ言っている。
「誰かと連絡を取っているようだ」
アレンのことを見ながらディルアスは言った。
城の門近くまで来るとアレンは素早く変装を解く。髪は茶色から白金色に変わった。後ろからは見えないが、恐らく瞳も菫色に変わったのだろう。
「私だ! 門を開けろ!」
「で、殿下!? え、いや、少々お待ちを!」
「待てるか! 急を要する!」
「いえ、しかし、確認を……」
門兵はあたふたしているな。
「私が責任を取るから、良いから開けろ!」
「そ、そう言われましても……」
「大丈夫ですよ、その方は本物のアレン殿下ですので、私が保証します」
門の内部から声がした。
声の主を見ると、青みがかった灰色の長い髪を一つに束ね、藍色の瞳に眼鏡を掛けた男が現れた。
「リシュ! お前、早く来い!」
「急に、つい先程、いきなり、帰って来たから門を開けておけと言われましてもね」
少し怒りが垣間見える。さっきブツブツ言っていたのはこの男と連絡を取っていた訳だ。
「し、失礼いたしました! お通りください!」
門兵が慌てて門を開いた。
「お帰りなさいませ、殿下」
怒りながらも丁寧に頭を下げアレンを迎え入れた。
「こいつはリシュレル・オブゼダール、俺の側近だ」
「リシュレル・オブゼダールと申します。殿下が大変ご迷惑をおかけしました」
こちらに向き丁寧にお辞儀をした。
「迷惑って何だ!」
「今みたいな行為のことですよ。後先考えず行動して、あちこちに迷惑をかけているでしょう、あなたは」
お前たちの喧嘩などどうでも良いが、それよりもやることがあるだろう。
いつまでそこで話しているつもりなんだ。
「そんなことよりも、結界だよ!」
「あぁ、こちらのお二人が結界を張ってくださるというお話でしたね」
アレンはまた足早に歩き出した。
「今の状況は?」
「芳しくないですね。陛下は何とか抑えようとしてらっしゃいますが、過激派の規模が膨れ上がり過ぎて手に負えなくなってきています」
足早に歩きながら報告を聞いている。
「ならやはり、すぐにでも結界を頼めるか? ユウ、ディルアス」
こちらを振り返りアレンは言った。
「あぁ」
ディルアスが返事をし、ユウも頷く。
「王宮の一番高い場所でしたね? こちらへ」
リシュレルが案内しようとするが、ディルアスが止めた。
「一番高い場所はあそこか?」
ディルアスが城の一番高そうな中心の棟を指差した。
「え、あ、はい、そうです」
「面倒だ、ユウ、飛ぶぞ」
「え!? あぁ、うん!」
呆然としているリシュレルを横目にアレンは頼むぞ、と大きな声で言った。
ディルアスが飛翔魔法で飛び上がり、ユウはそれに続く。
「凄い……」
リシュレルが呟いた。
棟の上まで来るとあまり広くないことが分かった。見張り台的なものだろうか、ディルアスとユウが立つと、周りに何人か立てるか、というくらいのスペースだった。
ユウは我とオブシディアンを足元に下ろした。
「手を」
ディルアスがユウの方を向いて両手を差し出した。
ユウもその手を取る。何だろうか、少しモヤモヤとする。
「お互い魔力を流し合うんだ」
二人は魔力を流し合っているようだ。
「それをお互いに自分の身体全てに巡らせるんだ。お互いの魔力が混ざり合って一つになるように」
ユウは何だかそわそわしている、
「集中しろ」
「はい、すいません」
「魔力を俺たち中心に球のようにとにかく広げる。その場にいる魔物を全て弾き飛ばすイメージで」
「う、うん」
「とにかく目一杯広げるんだ」
「分かった!」
「いくぞ」
二人が目を閉じ集中すると二人の間、両手を繋いだ真ん中に白く光る小さな球が出来た。
それがどんどんと大きくなっていく。ユウ、ディルアス、さらには我やオブシディアンも白い球の中に入った。さらに球はどんどん凄いスピードで大きくなっていく。
どうやら魔物の気配を感じたようだ。ユウがぴくりと反応する。
「気にするな、弾き飛ばせ」
結界はどんどん大きくなり城全体を包んだ。いくつかの魔物に当たったのか、黒い靄が立ち上っていく。
王宮敷地全てを包み込むと白い球は消えた。
「消えた!? 消えちゃったの!?」
「大丈夫だ、見えなくなっただけで結界はある」
「そうなんだ、良かった」
そう言うとユウは気が抜けたからか、ディルアスの胸に倒れ込んだ。
「ごめん! すぐ離れるから!」
「大丈夫か? 魔力の消費が激しい。少し休もう」
ディルアスはユウを支えたまま座り込んだ。
「しばらく凭れていろ」
ディルアスは棟の壁に凭れている。ユウは何やらぎこちなく、それが分かったからかディルアスは両手でくいっとユウの身体を後ろに倒しディルアスの胸にユウを凭れ掛けさせた。
何故だ。何やら不快な気分になる。ユウは魔力切れで動けないのだ。何がそんなに不快になることがある。気のせいだ。
ユウが回復するまで我らもユウの膝で待つとしよう。




