第十九話
すいません、更新遅れました!
次の日からユウは図書館通いだ。
我とオブシディアンは部屋で留守番をするはめに。
つまらん。昨日のあれは何だったのだ。思い出したくもない。
オブシディアンは人間の前に出るよりは、こちらのほうが良いのか、ベッドの上でくつろいでいる。
昼前にはユウが帰り、昼からは街を散策する、という日が続いた。
昼まではつまらんが、昼からはそれなりに楽しめた。結局小型化のままユウに抱き上げられての散策だが……。
何日か過ごす内に図書館での調べものも終わったらしく、ユウが王都を出ると言ってきた。
「魔法を試したいから一度キシュクに戻りがてら、途中の森で魔法実験しようかと思う」
『了解だ』
『はーい。ぼく、はやくまちでたい』
次の日、王都を出た。
王都から出てしばらくするとユウは我らを下ろしたが、小型化のまま歩く。
『ユウ』
「うん、分かってる」
やはりユウも分かっていたか。
王都からずっと何者かが後を付けて来る。
「空間転移でキシュクまで行ってしまおうか」
ユウが痺れを切らす。
『あまり魔法は見せないほうが良い。どこか岩陰に隠れて転移したほうが良いだろう』
何者かが分からんから、出来るだけ手の内を見せないほうが良い。
「うん。そうだね」
森を抜け大きな岩陰に入り、ユウが空間転移魔法を発動させた。
キシュクの入り口まで転移すると、さすがに気配はなくなっていた。
「結局、新しい魔法の実験出来なかったなぁ」
我らを抱き抱えながらユウは溜め息を吐いた。
『また様子を見て明日にでもしたら良い』
「うん」
キシュクで住んでいたマリー亭とやらに帰り、ユウは店の者たちと話す。
ひとしきり話した後に部屋へと戻りベッドへと腰を下ろした。
しばらくすると店の者に呼ばれ、ユウは一階へと降りて行った。
一階には以前ユウが紹介した人間たちがいた。
昼の食事をしながらユウはその者たちに王都であったことを話している。楽しそうだな。ユウの機嫌も直ったようだ。
翌日、魔法実験のために再びキシュクの外へ。
久々に元の姿に戻れた。やはりこの姿が一番落ち着く。
森の奥、人目に付かず広さがある場所まで来るとユウは王都で覚えた魔法を試す。
さすがに高位魔法だな。威力が凄い。
ユウが索敵を試しているとき叫んだ。
「ルナ! オブ! 小型化!」
「!?」
瞬時に小型化を発動させたが、どうやら間に合わなかったらしい。
背後から声がした。
「凄いな! 銀狼と黒ドラゴンか!」
聞き覚えのある声だった。
振り向くと、そこには王都で会った奴がいた。確かレンとか言ったか。
「何であなたが……王都のときから私たちの後をずっとつけて来てたよね?」
「あ、やっぱりバレてた?」
へらへらと笑うレンにユウは苛立っていそうだ。
「一瞬で小型化するんだなぁ。なあ元の姿をもっと見せてくれない? ちょっとしか見えなかったし」
我とオブシディアンに近付いて来る。警戒の唸り声を上げたが、そんなものはお構い無しだ。
「近付かないで」
ユウが慌てて走り寄り抱き上げ後退る。
「そんな警戒しないでよ。じゃあ良いよ、その代わりあんたの魔法見せてよ! 凄いじゃん! あんな強力な魔法見たことないよ!」
一部始終見られていたのか。何故だ。我も気配に気付かなかった。ユウも表情を見るに恐らく索敵はしていたのだろう。なのに、索敵に引っ掛からなかった。
ユウは我とオブシディアンを力強く抱き締めた。
ユウが不安になっている。
『ユウ、もう姿を見られているのなら元の姿に戻ろう。今の姿ではお前を守れない』
ユウに小声で言った。主を守れないなら意味がない。
「うん、でももうちょっと待って。様子を見る」
『分かった』
どうするつもりだ。
「あー、もしかして索敵に引っ掛からなかったことを警戒してる?」
さらに唸り声を上げる。
「俺、簡単な索敵には引っ掛からない魔法使ったから。昨日、後をつけてたときあんた消えただろ! あれ、めちゃくちゃ驚いたんだからな! だから今度見付けたときはその魔法使って近付いてやる! って決めてたから」
索敵に掛からない魔法か……。
「お? 気になる? その魔法のこと気になってきただろ? 教えてやる代わりにさっきの魔法見せてよ」
レンはニヤッと笑った。
ユウ、どうするつもりだ。
「帰ろう、ルナ、オブ」
フッと笑った。さすがユウだな。
「え! ちょっと! 気になるんじゃないのか!?」
「こそこそ後をつける奴のことは信用出来ない」
ユウはそう言うと我らを抱いたまま、足早に歩き出した。
レンは慌てて追いかけて来る。
「なぁ! 後をつけたのは謝るよ! ほんとにごめん! なぁ、許してよ!」
ユウは溜め息を吐いて、しかし歩くスピードを緩めた。
「何で私たちをつけたの? 王都にいる間もずっと様子を伺ってたでしょ」
「あ、全部バレてる」
レンは苦笑した。




